再稼働したばかりの関西電力高浜原子力発電所4号機が先月29日、トラブルに見舞われた。送電操作を行った瞬間に「発電機」が自動停止し、原子炉も自動停止した。高浜4号機は、九州電力川内1号機、同2号機、高浜3号機に続いて、新規制基準に基づく運用で4基目の再稼働だった。
報道によれば、林経済産業相は「担当大臣として誠に遺憾だ」と述べ、原子力規制委員会も「再発防止策を了承するまで(関電が)再稼働させるのは難しい」としている。関西電力も「安全面を考えて(冷温停止)を決めた」として、高浜4号機の原子炉は再稼働前の状態に戻る。
では、今回のトラブルの原因は何だったのだろうか?
関西電力HPでは、3月1日現在の「調査状況」や「今後の予定」が掲載されており、「今後、M87Bが動作した原因について、さらに詳細な検討を進めて」いくとしている。
これでは専門的用語ばかりで、一般にわかりづらい。報道がわかりやすいので、それで見ると、「発電機と送電線をつないで送電を開始する操作中は通常、フル稼働時に流れる1825.8アンペアの5%程度の電流が流れるが、今回は検出器が異常を検知する30%以上の電流が流れた。関電は再稼働前に別の検出器を交換した。そのため、今回、大きな電流を検知した検出器の配線を変更していた」とある。
「フル稼働時に流れる電流の5%程度」で検知するところを、「30%以上の電流」で動作したわけだ。これでは、発電機が壊れるような大電流に至ったとは思われない。
要するに、今回のトラブルは、原子炉本体ではなく、発電機と送電線の間で起きたもので、火力発電所などと同じ「電気工作物」=「一般産業の設備」がトラブルに見舞われたのと同じもの。
今回のトラブル箇所は、確かに原子力発電所の一部なので、原子力規制委員会(その事務局である原子力規制庁)がトラブル原因や再発防止策を評価することになっている。原子力発電所を規制・監督する観点からは仕方ないことなのかもしれないが、このような規制執行体制が本当に合理的なのだろうか?
原子力規制委・規制庁が、一般産業と同じ設備のトラブルにまで規制当局として国民や国会に説明し、判断を下さなければならない立場だとすると、ただでさえ人で不足とされる原子力規制委・規制庁はますます人手不足となってしまう。これは、原子力事業の安全性の向上にとって望ましいことではない。
原子力規制委・規制庁にしてみれば、"原子炉と関係ない部分でもトラブルを起こすな!"と言いたいところではないだろうか。今回のトラブルは、国民にも、規制当局にも、別の意味で大迷惑な話。
高浜4号機は2011年7月に定期検査で停止して以来、4年半ぶりの再稼働。プラントのメンテナンスや運転操作を行う人々の技術力を維持するために発電所の起動・停止は欠かすことはできず、机上検討やシミュレーター訓練では得られない貴重な経験ができる。
だから、"原子力発電所は、止まっていれば安全が確保される"などということは決してない。
今回のトラブルをいわゆる原子力事故と同じように扱い、マスコミ受けするような過剰な要求を課すことは避けなければならない。『原子力正常化』がまた遅れ、国民負担が再び増加するようなことのないよう、原子力規制委・規制庁には、バランス感覚のある合理的な対処を期待したい。
こうしたトラブルは決して好ましいものではなく、実に遺憾なこと。他方で、今次一連の自動停止プロセスは、過去の原子炉自動停止と同様に、安全管理システムの正常作動の結果であることも認識しておくべきだ。即ち、それ自体は安心すべきことである。
ただ今回は、国中が注目し、テレビ中継も行われている最中でのトラブル。"国民の不信"に繋がってしまったことは否めない。当事者である関西電力には、再発防止への努力が厳に求められる。
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