五大湖のひとつ、ヒューロン湖のカナダ側沿岸近くに、放射性廃棄物処理場の建設が予定されているが、対岸のアメリカ・ミシガン州に住む人々からの批判が高まっている。放射性廃棄物の埋設は危険であり、米連邦政府は介入すべきだと訴える議員もいる。
カナダのオンタリオ州に電力を供給するオンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社は、かねてから、オンタリオ州キンカーディン郊外にあるブルース原子力発電所の敷地内に、放射性廃棄物の深地層処分場(DGR:Deep Geologic Repository)を建設・運営する計画を立てていた。その敷地は、ヒューロン湖から約1.2キロメートル離れた地点だが、ヒューロン湖は、アメリカ・カナダ両国の何百万人もの人々に飲み水を供給する五大湖水系のひとつだ。
今回問題になっている深地層処分場は、地下800メートルほどの深さに建設され、5300万ガロン(およそ2億リットル)近くの「低レベルおよび中レベル」の放射性廃棄物が保管されることになっている。
AP通信の報道によれば、同施設は北米初の深地層処分場となる予定で、核廃棄物の地下保管施設建設への道を開くのではないかと言われている。
OPG社は、保管されるのは「放射性レベルがごくわずかの、原子力発電所内で使われたモップや雑巾類、床掃除用具、また、日常業務ならびに定期保守点検の際に着用された防護服など」という低レベル放射性廃棄物と、「使用済み樹脂およびフィルター、原子炉構成要素」などの中レベル放射性廃棄物だと説明している。使用済み核燃料は、この深地層処分場では保管されない。
OPG社側は、深地層処分場の建設計画案は専門家によって検討されており、安全性は確認されていると主張している。処分場は、4億5000万年前から存在する岩盤でしっかりと覆われており、ヒューロン湖を汚染する危険性はないという。
さらに、AP通信の記事によると、同社の計画は、キンカーディンおよびその周辺地区住民から支持を集めている。近郊地区ソーギーン・ショアーズの商工会議所事務長ジョアン・ロビンス氏はこう述べている。「私たち住民は、ほかの人のように、“原子炉”と耳にしただけで飛び上がったりしません。子どもの時からずっとそこにあるのですから」
しかし、同社の計画を懸念する人々も多い。5月19日(現地時間)、ミシガン州東部にある通称「親指地区」(ミトンの形と言われる同州の、親指にあたる部分)選出の議員ら数名が、核廃棄物の持ち込みを禁止する包括法律案を公表した。そこには、米両院合同決議(上院と下院で可決後、米大統領から承認を受ける法的決議)も盛り込まれており、バラク・オバマ大統領、ジョン・ケリー国務長官および連邦議会に対し、五大湖の代理人として決定を下すことを求めている。
さらに、かつてOPG社に科学者として勤務していたフランク・R・グリーニング博士は、保管される予定の廃棄物が持つ放射能レベルは「著しく過小評価されている」と主張している。同博士は2014年1月、施設用地の審査を行なうカナダの連邦委員会に宛てた書簡(英文PDF)の中で、この施設で保管される廃棄物には、当初言われていたレベルの100倍どころか、600倍にも達する放射能を持つものもあると指摘した。
この書簡を受け、カナダの連邦委員会はOPG社に評価の再提出を求めた。
OPG社の広報担当者は「トロント・スター」紙に対し、グリーニング博士が挙げた数値がたとえ妥当だとしても、施設の安全性に関する結論は変わらないとコメントした。グリーニング博士は、ミシガンラジオ局とのインタビューで、OPG社が主張するように、この数値でも安全だという可能性はあるという点は認めたものの、計画全般に対して疑問を投げかけた。「単純なエラーだと見なすことはできない。同社が提出したほかの数値にも疑問が生じ、同社の行動に信頼が持てなくなった」
[Kate Abbey-Lambertz(English) 日本語版:遠藤康子、合原弘子/ガリレオ]
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