睡眠不足の経済損失、東京で4757億円 イケア調査

仕事や雑事に追われて、ついついおろそかになってしまいがちなのが睡眠時間。能率アップには、きちんと睡眠が取れていることが不可欠だが、実は日本の睡眠時間は世界的に見ても短い「睡眠後進国」だ。特に東京では睡眠時間が足りないために、1年間で4757億円もの莫大な経済損失が生じているという。
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仕事や雑事に追われて、ついついおろそかになってしまいがちなのが睡眠時間。能率アップには、きちんと睡眠が取れていることが不可欠だが、実は日本の睡眠時間は世界的に見ても短い「睡眠後進国」だ。特に東京では睡眠時間が足りないために、1年間で4757億円もの莫大な経済損失が生じているという。世界最大の家具販売店「イケア」の調査結果を朝日新聞デジタルが伝えた。

イケアは東京、ニューヨーク、ロンドンなど世界5都市で1040人を対象に、インターネットで「睡眠と生活に関する意識調査」を実施した。東京の回答者の平均睡眠時間は7.3時間で最も短く、パリと比較して1.6時間も少ないという、日本の「睡眠後進国」ぶりが浮き彫りになった。

(朝日新聞デジタル「イケアが試算「睡眠不足による東京の経済損失額は4757億円」」より 2013/10/11)

また、睡眠時間のほかに「睡眠不足による経済損失額」を試算したところ、仕事の効率や、事故などに多額の損失があるという。イケアは、東京近郊の損失額を以下のように試算している。

データをもとに、睡眠不足によって起こる欠勤や遅刻、事故、効率低下などによる経済損失額を試算。2012年の東京圏(744万人)での損失額は、4757億円に及ぶという。

(同上)

全米睡眠財団(NSF)が行った6カ国で行った調査でも、日本人は平日夜の睡眠時間が最も短く、平均してわずか6時間22分。なかでも、朝なかなか起きられない、「寝起き」がよくないと感じている人が、他の国と比べて2倍多かったという。

日本では、「平日に起きなければならないときでもなかなか起きられない(あるいは、まったく起きられない)ときがある」と答えた人の数が多い。その率は31%で、これはほかの国のほとんど2倍だった。

(ハフィントンポスト「睡眠不足で寝坊も多い日本:6カ国の調査」より 2013/9/12 14:23)

仕事や子育てなどに追われ、忙しい毎日を過ごす私たちは、ともすると平日の睡眠時間を削ってしまいがちだが、睡眠不足は朝の寝覚めや、仕事の効率などに影響を及ぼしていることがわかった。これを機に、もう少し質の高い睡眠について考えてみたい。

睡眠に対する関心の高さは、睡眠に関連商品のヒットにも表れている。スマートフォン向けの睡眠アプリや、快眠効果のある枕、睡眠をテーマにした書籍も売れているようだ。

たとえば、スマートフォンの睡眠アプリ『ドリミン』は、累計50万ダウンロードを記録している。『ドリミン』は、左右の耳から異なる周波数音を聴く効果によって仕組みを利用して、深い睡眠やリラックスした状態へと導くアプリだ。周波数に応じて、「深い睡眠」「瞑想」「リラックス」といった脳波の状態に導くことができるという。

また、大手布団チェーン西川が医師と共同開発した快眠枕も、260万個を超えるヒット商品だ。肩こりや首痛に効果があるという快眠枕のヒットから、日々の疲労を睡眠で和らげようとする人々のニーズが伝わってくる。ほかにも、全国展開している枕の専門店「ロフテー枕工房」は、眠りの専門知識を持ったプロが一人ひとりの首のカーブを測定し体に合った枕選びをするサポートが反響を呼び、テレビや雑誌、ラジオなどの反響が相次いでいるようだ。

睡眠をテーマにした書籍『朝昼夕3つのことを心がければOK! あなたの人生を変える睡眠の法則』(自由国民社)は昨年9月に発売され、11万部を超えるベストセラーに。著者は、作業療法士、睡眠改善インストラクターなどの資格を持つ菅原洋平さん。国立病院機構にて、脳のリハビリテーションに従事した経験により、脳の回復には睡眠が重要であることに着目し、独自のメソッドを開発したという。

菅原さんの新刊『「いつも眠い〜」がなくなる 快眠の3法則』(メディアファクトリー)では、「ちゃんと寝たはずなのに、日中眠くなる」という現代人の悩みに応えた内容で、「生体リズム」を整えて質の高い睡眠へと導く生活習慣を紹介している。

本によれば、MRIで睡眠不足の人の脳を検査すると「事実の情報が入ってくる『頭頂葉』という部位が働かないまま、情報を判断する『前頭葉』が働いている様子が映っている」という。これは、睡眠が不足した状態の場合、脳は正確な事実を把握しないまま、いいかげんな判断をしていることを意味する。この事実をふまえると、冒頭のイケアによる調査で触れた、睡眠不足による効率低下もうなづける。

菅原さんは、1日のなかで3つの習慣「起床4時間以内に光を見る」「6時間後に目を閉じる」「11時間後に姿勢を正す」を心がけることで、脳を眠らせる「メラトニン」の生成が、人間本来のリズムで行われるようになるという。日中に眠いと感じることが多い人は、試してみるといいだろう。

睡眠不足の日本。睡眠時間が少なくなることで、起きているときの活動効率も低下していることが分かった。生活習慣を整えたり、枕や睡眠アプリを生活に取り入れたりするなど、ちょっとした工夫で睡眠の質が改善する可能性がある。

秋の3連休、忙しい日々を送っている人や寝不足気味だと感じている人は、この機会に自身の睡眠について振り返ってみてはどうだろうか。

※日本人は平日夜の睡眠時間が短いようです。何か睡眠で心がけていることはありますか? 質の高い睡眠にするには、どんな工夫が考えられますか? あなたの意見をお聞かせください。

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