ブラック企業の共犯者!? サービス残業大好きのブラック社員にどう対抗すればいい?
最近はテレビのニュースでも普通に耳にするようになった「ブラック企業」という言葉。社員に過酷な長時間労働を強いたり、精神的に追い詰めたり、賃金を不当に抑えたりする会社を意味する言葉として、すっかり定着した感がある。
このようなブラック企業が存在しているのは、経営者の姿勢によるところが大きいだろう。しかし、ブラック企業を存続させているのは経営者だけではない。ブラックな企業風土に疑問をもたない「ブラック社員」がいて、経営者と共犯関係になって会社を支えているとも言えるのではないか。
サービス残業や休日出勤は当たり前で、経営幹部の理不尽な要求にも従順に応じ続ける……。こういう社員は会社にとってはありがたいだろう。しかし、それに引きずられて、他の人まで同じように働かなければならないという空気が生まれているとしたら、職場の労働環境はいつまでも改善しないだろう。
そこで、このような社員がサービス残業を自重するなど、「ブラック企業的な働き方」をしないように、会社や本人に求めることはできないだろうか。労働問題にくわしい岩井羊一弁護士に聞いた。
●「ブラック社員」に個人で対抗するのは難しい
「そのような『ブラック社員』に対抗する手段としては、次の5つが考えられます。
(1)直接、『ブラック社員』に改善を求める
(2)労働組合に入って団体交渉を行い、ブラック社員の言動を指摘する
(3)労働基準監督署に申告し、行政指導をしてもらう
(4)弁護士に依頼して会社と交渉をする
(5)会社を辞めてしまう」
――どれも敷居が高そうだ。
「そうですね。実行するのは、いずれも難しいと思われるのではないでしょうか。ブラック企業やブラック社員に個人で対抗することは、実際には困難です」
――法的な救済制度はない?
「法律では『労働組合を作って使用者と対等に交渉する権利』が、労働者に与えられています。したがって本来は、労働組合の力でブラック社員や企業に対抗していくのが理想です」
――会社に労働組合があるとは限らない。
「そうですね。むしろ、いわゆる『ブラック企業』には労働組合がないことがほとんどです。そのような場合、一人でも入ることができる外部の労働組合に入るという手もあります」
――いずれにしても大変そうだ。ちょっとぐらい我慢するべき?
「対抗することが難しいからといって我慢して働けば、長時間労働やパワハラなどにより、心身に障害をうけ、ひどい場合には過労死、過労自殺にいたります。我慢せずに、まずは周囲に相談してください」
――誰に相談したらいい?
「相談先としては、労働基準監督署、外部の労働組合、弁護士などがあります。相談する際には、時間外労働の記録、ブラック社員から言われた違法な言葉などを記録に残しておくことが重要だと思います」
ブラック企業を支える「ブラック社員」に対抗するのは、現実的にはなかなか難しいようだ。しかし岩井弁護士が指摘するように、ただ我慢して働くのはしんどすぎる。「会社を辞める」という選択肢を取るのでないかぎり、まずは、専門機関に相談してみるのがよさそうだ。
【関連記事】
【取材協力弁護士】
過労死弁護団全国連絡会議幹事、愛知県弁護士会
事務所名: 弁護士法人名古屋南部法律事務所