きゃりーぱみゅぱみゅ、世間の「第三者が一方的に盛り上がってる感じ」に物申す

『きみのみかた』に込めた思いとは?「世の中には、第三者が一歩下がって、当の本人たちが話し合って解決するべきことってたくさんあると思う」
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KAORI NISHIDA / HuffPost Japan

ポップでカラフルでカワイイ、「原宿カルチャー」を体現したような女の子。

2017年までのきゃりーぱみゅぱみゅを説明するとしたら、そんな言葉が浮かぶかもしれない。ポップアイコンとして現代の音楽シーンを彩ってきた彼女は、2018年、そのイメージを一新する。

1年ぶりの新曲『きみのみかた』(4月11日発売)のジャケット写真のきゃりーは、ぐっと「大人」になった。好きなファッションが変わり、黒髪もいいと思うようになった。内面も25歳になって、まわりの人たちへの興味がもっと湧いてきたと話す。

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『きみのみかた』ビジュアル
(C)WARNER MUSIC JAPAN

「きゃりーぱみゅぱみゅらしさ」は失いたくない。世間に「物申したい」気持ちは変わらない。でも、「世の中には『いろんな人がいるんだな』って受け入れて、人のいいところを見つけられる人になりたい」。そう話すきゃりーに、いまの思いを聞いた。

中田ヤスタカがきゃりーぱみゅぱみゅに送った新曲、『きみのみかた』。

きゃりーは、「わりとおフェロっぽいミュージック・ビデオや振り付けになっていて、単なるポップアイコンじゃない感じ」と表現する。

ポップさを残しつつも、初めてのラップを取り入れ、クールな印象も与える楽曲だ。ビジュアルの雰囲気も一新した。

「きゃりーに対して『カラフルな夢の中にいる女の子』みたいなイメージを持っている人は、もしかしたら寂しいと感じるかもしれないです。でも、ずっと応援してくれるファンの人は、私と一緒に年を取ってるんですよね」

「ひさしぶりのシングルなので、私のファンや待ってくれる人に対して、新しい提案をしたい。だから、新曲を聴いてもらって、『こういう感じもいいな』って受け入れてもらえたらいいなと思っています」

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2018年、きゃりーはデビュー7周年を迎える。18歳だった彼女は、25歳になった。

その年月を思い返すように、ひとつひとつの言葉を選びながら、きゃりーは話す。

「これまでは、全然人に興味がなかったんです。なんでもいい、みたいな。25歳になって、本当に喜怒哀楽が出てきました。感動泣きするようにもなったし、友達に『そういうことよくないよ』って怒ったりもする。なんか、人間味が出てきました」

歌詞には、「人間味が出てきた」と話すきゃりーの"今"を代弁したようなフレーズが並んでいる。

「トップのトピックご覧に 同調コメントばかり」という一節。

「Yahoo!ニュース」やSNSなどのネット空間では、ある出来事にコメントが殺到する「炎上」がしばしば起きる。このフレーズは、その現実に疑問を投げかけているようにみえる。

「私はよく炎上するんですけど、炎上って1人の書き込みをきっかけにブワッと広がることがありますよね」

「第三者が盛り上がっていることが多すぎるんじゃないかなって、去年すごく考えていました。たとえば、テレビのワイドショーでずっと相撲を取り上げていたけど、何が本当かわからないのに『新事実』って伝えたりしますよね。『誰々が悪い、いやこっちが悪い』って、当事者じゃない人たちですごく盛り上がってる。不倫報道とかもそうだなって。

世の中には、第三者が一歩下がって、当の本人たちが話し合って解決するべきことってたくさんあると思うんです。それなのに第三者が一方的に盛り上がってる感じって、なんなんだろうって。中田(ヤスタカ)さんがそう思っていたかはわからないですけど(笑)。私は『きみのみかた』を聴いた時にそう思いました」

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ポップアイコン・きゃりーの「人間味」が垣間見えた出来事は、過去にもあった。

2014年。週刊誌の熱愛報道をきっかけにマスコミに追われ、「芸能界って全然楽しくないじゃん」と思うこともあったという。

その違和感を抱えたまま迎えた、2014年11月のアリーナツアー最終日。これまで最大規模のツアーで、集まったファンを前に、ステージ上のきゃりーは感情をむき出しにした。

嫌なことが続いていました。芸能界ってこんなに大変なんだってすごく思って、辞めたいなと思ったりもした。

それでも、きゃりーはファンの声援に応え、「小さいお子さんから大人の方まで、本当にたくさんの方が笑顔になってくれて。これからも夢あるファンタジーを作り続けていきます」と宣言した

きゃりーは当時のことを、「本当のこともあるし、盛られている部分もあるし、嘘もあるし、芸能界ってそういう世界なんだなって思いました」と振り返る。

「人間って、もちろん良い人もたくさんいるし、いいところもたくさんあるんですけど...なんだろう。『粗探し』をしてしまうところもあるんだなと思って。芸能人がその標的になることも多いんだなと実感しました。

『完璧じゃない一面』の粗探しがすごいなって。世間がそういうのを好きっていうのもあるかもしれないし、『生きにくい世界だな』と思いました」

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アリーナツアーから約5カ月後の2015年3月に発表したのが、強いメッセージが込められた楽曲『もんだいガール』だった。

ピンク色のウィッグをかぶり、「ただ恋をしてるだけなの 機械みたいに生きてるわけじゃない あたし もんだいガール」ときゃりーらしく、ポップに歌い上げた。

それから3年が経った今、きゃりーは『きみのみかた』で、一歩引いたところから世間のおかしさに物申している。「Why?とCan'tさえご法度」「少数派は見えない」と、息苦しい世の中へのメッセージが込められた歌詞。そこへの共感をこう語る。

「私はいま、『いろんな人がいるんだな』って受け入れて、人のいいところを見つけられる人になっていきたいなと思っています」

「まわりの人に対して、『この人こういうところあるな』って悲しく思ったりすることもあるんですけど、今はなるべく逆にとらえるようにしてます。たとえば、『図々しいな』じゃなくて『積極的だな』と思うようにする。そうしたら、嫌いな人とかあんまりいなくなります」

「『きみのみかた』はそんな思いとか、まわりに流されずに自分の道を信じよう、っていうメッセージが詰まってる曲です」

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きゃりーぱみゅぱみゅは、「夢の中にいる女の子」から「現実世界を生きる大人」になったのかもしれない。

時代やトレンドも変わっていく。2017年には、きゃりーが何度も表紙を飾った青文字系のファッション雑誌「KERA」と「Zipper」が休刊した。

個性派ファッション、原宿カルチャーを牽引してきた2誌の休刊について、きゃりーは「雑誌がなくなってるってことは、そういうファッションがなくなってきてるんだと思います」と話す。

「私が高校生の時は、原宿のLAWSONに行くと奇抜な格好をした人がたくさんいたし、代々木公園の歩道橋の近くにはロリータファッションの人が集まったりしていて、ストリートスナップを撮られたりしていました。でも、今はもう全然いない。ロリータとかパンクとか、そういうファッションをしていた人も大人になったし」

「やっぱり、いわゆるモテ系ではないですからね、原宿カルチャーって。悲しいけど、現実はそれが大きいのかもしれないなと思ってしまいます。やっぱり、石原さとみさんがドラマの『失恋ショコラティエ』でしてたようなファッションが、結局1番モテるんです(笑)。かわいいし、ああいう感じになりたいなって女の子たちが思う気持ちもすごくわかります」

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最近のきゃりーがSNSでアップするファッションは、数年前と比べるとシンプルになった。実際に、「大人っぽくなった」とまわりから言われる機会は増えたという。

一方で、きゃりーは「今はこういうファッションが好きだから、変わっていってるだけ。やり尽くして一周回って、またそのうち金髪にするかもしれないですよ」と微笑む。

好みのファッションが変化しているとしても、芯となるのは「きゃりーぱみゅぱみゅらしさ」だ。

「衣装にしてもヘアメイクにしても、『きゃりーらしさ』をちゃんと提案して、残していこうって話し合ってます。私はやっぱり『きゃりーぱみゅぱみゅ』じゃないと成立しないことをやっていきたいなと思うし、やらないといけないと思います」

 ◇

これまでのイメージをアップデートしながら、「きゃりーらしさ」をどうやって保ち続けるのか?と聞くと、少し予想外の答えが返ってきた。

「『今回こういうイメージでやりたいけど、〇〇さんみたいな感じは避けたいです』って、具体的な芸能人の方の名前を挙げて考えていくんです。その人と同じことをやったら何も新しくないし、フォロワーになっちゃう。それは良くないし、やりたくないんです」

「その人みたいになったら『自分らしさ』が全部消えちゃうかもと思ったら、その路線は避ける。そうしたら、どんどん自分の道みたいなものが開かれていくんです」

デビューから唯一無二の世界観を打ち出すきゃりーぱみゅぱみゅの「らしさ」の秘密は、こんなところにもあったのだ。

「なりたくない像から考えた方が、自分がやりたいイメージに意外に近づけるんです」

あっけらかんと笑うきゃりー。その裏にあるしたたかさには、「自分らしさ」を見失わずに、この時代を生きていくヒントが詰まっている。

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【きゃりーぱみゅぱみゅ新曲「きみのみかた」】

中田ヤスタカが、きゃりーの誕生日プレゼントとして書き下ろした楽曲。2018年4月11日にダウンロード&ストリーミング配信を開始する