熊本市の緒方夕佳議員が、質疑中に「のど飴」をなめていたことを理由に、市議会から退席を命じられた問題。海外メディアでも報じられるなど、国内外で物議を醸している。
のど飴をなめていた緒方市議に怒号をあびせ、陳謝を求めた市議会の対応に対して、Twitterなどネット上には批判的な声が上がっている。
そんな中、2017年10月、イギリスで起きたある出来事にも注目が集まっている。
マンチェスターで開かれた与党・保守党の党大会で、テレサ・メイ首相が演説中に咳が止まらなくなり、財務相がのど飴を渡してフォローする一幕があったのだ。
この党大会でメイ首相は、相次ぐハプニングに見舞われた。コメディアンが突然乱入する事態も起きた。
メイ首相はコメディアンの乱入をジョークで切り返したが、その後咳が止まらなくなり、何度も水を飲んで演説を中断。すると、フィリップ・ハモンド財務相が演壇に近づき、メイ首相にのど飴を手渡したのだ。
のど飴を受け取ったメイ首相は、「皆さんお気づきだと思いますが、財務大臣がタダでくれました」とジョークを飛ばして笑いを誘い、のど飴を口に含んだ。
熊本市議会で起きた問題をきっかけに、この場面は国内の報道番組などでも紹介されている。
Twitterには、「普通はこうでしょう?」「子供には、メイ首相に飴が渡されてる写真を見て育って欲しい」などのコメントが寄せられた。
緒方議員は9月28日、体調不良で咳が止まらなかったためにのど飴をなめながら定例会本会議の演壇に立った。
RKK熊本放送の議会中継動画を見ると、緒方市議が質疑のために登壇しようとした際、朽木信哉議長が「緒方議員、まだ待ってください!」と制止。続けて「何か口にくわえておられますか」と質問した。
会場から失笑が漏れ、緒方市議が「龍角散のど飴をくわえています」と答えた。登壇し、緒方市議が「のどを痛めておりまして...」と話し始めたが、その後、ほかの市議から次々と「臨時休会!」と怒号が飛ぶ事態に。
午前10時から始まった定例会は、通常であれば昼頃には閉会する予定だったが、このために議会進行は約8時間止まって紛糾した。
「のど飴をなめる」という行為が、会議規則にある「品位の尊重」に触れるとして急きょ懲罰特別委員会が設けられた。会議規則では「議員は、議会の品位を重んじなければならない」などと記載されており、飲食については特に言及はない。
休止して開かれた懲罰特別委員会では、陳謝させることが決まった。この時、「陳謝文」は本人が文言を考えるのではなく、緒方市議は用意された文章を事務局から渡され、そのまま読むようにと言われたという。
緒方市議は「自分の言葉ではない」として、用意された文書を読み上げるのではなく、自分自身の言葉で説明することにしたという。
だが、それが「陳謝文と内容が違う」として「違うだろ!」などと紛糾し、議会への一定期間の出席停止という、さらに重い処分となった。その結果、9月28日のその後の議会には出席できなくなった。
緒方市議は、ハフポスト日本版の取材に対し、「市民のために真剣に議論するという場である、議会の本旨が理解されていない。議員の発言は市民の声を代弁する重要で重大な権利。質疑や討論をする権利を、このようにいとも簡単に奪うのはいかがなものか」と話している。
緒方市議は、2017年11月に、議会に生後7か月の長男を連れてきたことで、厳重注意を受けた過去がある。
この出来事がきっかけになり、熊本市議会では会議規則が変更され、乳幼児などが議会に入れないように明文化された。