日本の安全保障関連法成立に伴い、朝鮮半島有事の際、日本の武力行使に韓国がどう対応するのかが、韓国内で議論されています。韓国政府は、自衛隊の上陸には韓国政府の同意が必要だとの見解を重ねて強調しています。
韓国の国会法制司法委員会で韓民求・国防相は、朝鮮半島有事に際して日本の自衛隊が韓国に派遣される場合「たとえ米韓連合軍司令官の要求があっても、韓国は拒否できる」という趣旨の回答をしました。米韓連合軍司令官は、米韓両国の軍統帥機関に従う存在であるため、韓国の大統領が「日本の自衛隊は参加させてはならない」と指示すれば、それに従わなければならないというのです。この発言はいくつかの問題点をはらんでいます。
まず、韓国の領海と領空に境界線を設定して、日本の自衛隊が、ここを越えるか、越えないかという問題がそれほど決定的なのか、ということです。日本の海上・航空自衛隊は、朝鮮半島に入らず、公海上からいくらでも北朝鮮を攻撃できます。一昨年に策定された日本の「防衛計画大綱」では、北朝鮮に対する「ミサイル総合対策」を明らかにしています。過去に「ミサイル防衛」としていた内容を「総合対策」に名前を変えた背景には、北朝鮮のミサイル基地に対する先制攻撃も念頭に置いた、拡張された安全保障の概念があります。日本の主力戦闘機のF-15Jや、今後導入されるF-35、イージス駆逐艦などは遠距離打撃能力があるので、あえて韓国領海に入る必要すらありません。自衛隊が韓国の領域に入ってくるかどうかを問うている間に、日本は参戦国として必要な軍事行動をとり、そうしているうちに戦争は終わります。
第二に、日本の海上自衛隊の派遣は、日本が要求して韓国が同意するのではなく、韓国が日本に助けを求め、日本がこれに同意する形になる可能性が高いでしょう。8月に韓国と北朝鮮の軍事的緊張が高まった当時、北朝鮮の潜水艦50隻がレーダーから姿を消し、韓国軍が発見できなかったことを覚えているでしょうか? この後、アメリカの中古のバイキング海上哨戒機を緊急導入することにしたとの報道も記憶に新しいところです。日本が保有する約70隻の海上哨戒機が出動すれば、韓国にとっては援軍になると考える可能性があります。問題は、韓国が日本の自衛隊に依存するしかない状況がもたらされることです。日本の海上哨戒戦力は、北東アジアで最強です。
三番目に、北朝鮮の核ミサイルの恐怖に非常に弱い日本は、北朝鮮に対する軍事的対応に最も性急に対応し、これは韓国を望まない紛争に巻き込む危険要因になる可能性があります。韓国はどのみち、北朝鮮の核ミサイルでなくても、旧来型の脅威だけで首都圏が焦土となる危険を常に抱えています。ところが、日本にとって唯一の脅威はミサイルです。こうした安全保障環境の違いのために、戦争を決心する時期と内容が韓国と日本で異なる場合がありますが、ここで意見が食い違うと、韓国の安全保障に大きな負担となりかねません。日本が自国の安全のために韓国の意見を無視して北朝鮮への先制攻撃を敢行しようとしたとき、韓国政府は果たしてどう対応するのでしょうか。
戦争の問題は、同盟国である米韓でも意見調整が難しいのに、ましてや日本がさらなるプレーヤーとして登場し、意思決定が複雑になった場合、必ず韓国の利益にかなうとは断言できません。それだけ戦争は難しい問題です。韓国政府に対策がなく、周辺情勢に引きずられる場合は、最悪の状況に直面することもありうると知っておく必要があります。こうした戦略的な状況の変化に言及せず、韓国の領域に入って来るのか、来ないのかが、まるで問題のすべてだと勘違いしてはいけません。
この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳しました。