歴史教科書の国定化に反対する韓国の高校生らが10月17日、ソウル市内で「歴史教科書国政化反対」集会を開き、生徒らが「韓国の歴史教育は死にました」「歪曲された歴史が含まれる国定教科書を強要しないで」「非常識を強要しないで」などと書かれたプラカードを持ってデモを行った。
韓国政府は12日、中学・高校の歴史教科書を、複数の教科書会社が発行する検定制から、国家が単一の教科書を編集・発行する「国定制」に戻すと発表。その理由について政府担当者は、「政府が直接、歴史的事実に関する誤りを正し、歴史教科書の理念的偏向性による社会的論争を終息させるため避けられない選択だった」と述べた。
これに対して、野党の新政治民主連合は、国定教科書になれば、過去の日本統治時代や軍事独裁政権を美化しかねないと反発。与野党は変更の是非を巡って激しく対立し、教育界では執筆拒否を宣言する学者が次々に現れるなど、世論は真っ二つに割れている。
なお、韓国内で歴史観が大きく対立するのは、大きく次の点。
・1910~1945年の日本の植民地支配を、日本による抑圧と収奪と否定的にみるか、朝鮮半島の近代化に一定の貢献があったとみるか
・主に1945年の解放以降、韓国(南朝鮮)で起きた反政府暴動を、民衆運動と肯定的にみるか、北朝鮮の指示を受けた左翼テロと否定的にみるか
・1960~70年代の朴正熙政権を、民主主義を弾圧した独裁者と否定的にみるか、経済発展の立役者と肯定的にみるか
韓国では、進歩派(革新)は前者、保守派は後者の見方を取る場合が多いが、歴史学、教育学界では進歩派が優勢だ。現政権は、今の教育現場で使われている歴史教科書が「反米的で北朝鮮に甘い」と批判してきた。
2014年には、「ニューライト」と呼ばれる韓国内で保守的な学者らのグループが中心となって編集した「教学社」の歴史教科書が初めて検定に合格したが、教師らは「日本の植民地支配や、軍事政権の独裁を美化している」と猛反発し、大規模な採択反対運動が繰り広げられた。採択した学校が1校にとどまったことで、与党は「国定化」指向を強めることになった。
この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳・編集しました。
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