韓国南西部で起きた大型旅客船「セウォル号」の沈没事故を受け、鄭烘原(チョン・ホンウォン)首相が4月27日、緊急記者会見を開き、辞意を表明した。
事故の初動を巡り、政府機関である海洋警察などの対応が批判され、政府の対策本部も不正確な発表を二転三転させた。「政府の総体的な失敗」(聯合ニュース)との批判が高まり、6月の統一地方選を直前に朴槿恵大統領の支持率も急落していた。
大統領府スポークスマンは同日、辞表を受理する意向をと明らかにしたが、時期について朴大統領は「救助作業と事態の収拾が最優先であり、事態の収拾後が望ましい」と話しているといい、当面は留保される見通しを示した。
事故を巡る韓国政府の対応には、どんな問題点があったのか。
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■「大統領が決断」
聯合ニュースによると、鄭首相は会見で「今回の事故の犠牲者の霊前に哀悼の意を表明し、遺族の皆様に心の底から謝罪申し上げ、救助された方々のご快癒をお祈りします」と話したあと「今回の事故が発生する前、予防から事故後の初動対応と収拾過程において、多くの問題をまともに処理できなかった点について、政府を代表して国民の皆様におわびいたします。愛する家族を失った悲痛に震えておられるご遺族の心痛と、国民の皆様の悲しみと怒りをみて、私は国務総理としてすべての責任を負うべきと考えました」と話した。
さらに「内閣を総括する首相として、私が責任を負って身を退くことが当然であり、お詫び申し上げる道と考えました。まずは事故の収拾が最優先であり、一日も早く収拾とともに対策を立てることが責任ある姿勢と考えます」としたが「しかし、これ以上、私が首相の地位にとどまることで、国政運営に負担をかけられないと思い、辞任を決心しました」と話した。
韓国の首相は大統領が任命する。大統領府スポークスマンは報道陣に対し「大統領が熟考の末に判断したと聞いている」と説明した。
■最初の通報から37分後に出動…初動の遅れ
聯合ニュースによると、地元の消防本部が最初に通報を受けたのは4月16日の午前8時52分。乗客として乗っていた高校生からの電話だった。しかし、消防から通報を受けた海洋警察は、船舶自動識別装置(AIS)で位置は即時に把握できるにも関わらず、電話で高校生を相手に現在地の緯度、経度や船の名前、商船なのか漁船なのか、などを6分間にわたって聞き直し、出動したのは37分後の午前9時半になってからだった。通報した高校生は死亡が確認された。
海洋警察と海軍、民間による救助が行われたが、救助者174人の中に海軍に救助された人は一人もおらず、行政機関の連携不足が疑われた。
■志願の潜水士を門前払い
政府の対策本部も当初の発表を二転三転させ、混乱ぶりを露呈した。特に救助者数を半分以下に修正したことが、修学旅行で行方不明になった高校生らの家族を激怒させた。
さらに現場では、ボランティアを志願した民間の潜水士を門前払いし、海の中で潜水士が休息するときなどに使われる「ダイビングベル」と呼ばれる装置も、「効果がない」として提供の申し出を断っていたことが判明した。いずれもメディアや関係者から批判されてから導入を決めるなど、一貫性のなさも際だっている。
■過積載、警察も海洋水産部も見逃す
セウォル号を巡っては、韓国導入時に客室増設や貨物増設などの改造をした結果、重心が51cm上がって不安定になっていた。しかし検査機関の社団法人が通過させ、管理や取り締まりにあたる海洋水産部や海洋警察も情報を共有していなかったことが批判されている。
【UPDATE】
大統領府スポークスマンは同日、辞表を受理する意向をと明らかにしたが、時期について朴大統領は「救助作業と事態の収拾が最優先であり、事態の収拾後が望ましい」と話しているといい、当面は留保される見通しを示した。
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