「プレコンセプションケア」という考え方が最近注目を集めている。
将来の妊娠や出産にかかわるリスクがないかどうか、事前に調べることで安全な妊娠や出産につなげ、産まれてくる子どもの健康を目指すケアを指す。
国立成育医療研究センターが2015年に設立した「プレコンセプションケアセンター」が2周年を迎えたことを記念して11月15日、セミナーが東京都港区の慶応大学で開かれ、担当医師の荒田尚子さんが講演した。
どうしてプレコンセプションが注目されてきたのか。
その背景の一つとして、荒田さんは先進諸国で妊婦の死亡率が劇的に低下してきた一方で、先天性障害を持った子どもや未熟児の割合、母親の合併症が原因の乳児死亡率は減っていないことを紹介。そこで妊娠前から女性の健康を管理することが、妊娠・出産の結果の改善につながると説明した。
また、子どもの6%が早産で、10%が低体重の状態でそれぞれ生まれ、2~3%は先天異常を持っているというデータも示し、「妊娠、出産の問題は、その後の子どもの健康にも影響する」と指摘した。
「こうした問題にならないようにするには、妊娠してからのケアでは間に合わない」として荒田さんは、事前に感染や摂取を防げるものとして以下のものをあげた。
風疹、梅毒、高血糖、アルコール依存症、たばこ、肥満、葉酸欠乏、サリドマイド、抗精神薬、抗てんかん薬、ワルファリン、メチマゾール、ビタミンA誘導体、たばこ
また、日本の赤ちゃんの平均出生時体重は年々減る一方で、あわせて出生時の体重が2500グラム以下の低体重児が増加しているという現状も紹介。
こうした現状に影響を与えている要因の一つとして、荒田さんが示したのが、日本の女性の「やせ」の増加だ。日本特有の現象とされ、「20代では4人に1人、30代で6人に1人がBMIが18.5%より少ない」という。
一方で、若い世代の肥満も増加しており、「やせ」と「肥満」の二極化がすすんでいるという。
また、母親の年齢別出生率も減っており、1970年は女性1000人あたり65.8人生まれていたが、2008年は40.8人まで減っている。
こうした出産年齢の高年齢化、生活習慣病や慢性の病気を持った女性の増加、肥満とやせなど、一連の社会的要因から、荒田さんは「妊娠のリスクが上がっている」とした。
プレコンセプションケアセンターでは、10~40代のすべての女性を対象に、妊娠に問題がないかを検診で調べたり、妊娠を考えたりするに当たっての改善点や注意点を、管理栄養士や医師が1対1で話したりする「プレコンセプション・チェックプラン」を用意している。
これとは別に、いま病気を抱えている女性で、妊娠を希望している人も、病気を持っていながら最適な状態で妊娠、出産するにはどうしたらいいかを相談する専門外来も設けた。2015年11月からの2年間で、約90件の相談を受け、このうち、慢性の病気を持っている人からの相談が32件を占めているという。
荒田さんは「医療の発達で妊娠、出産のチャンスは増えている」と話し、プレコンセプションケアセンターの意義を改めて強調した。
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