1月12日発売の「広辞苑」(岩波書店)の第七版で、「フェミニスト」「フェミニズム」の説明文が一部改められた。「フェミニズム」で「男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動」という表現が、「性差別からの解放と両性の平等とを目指す思想・運動」に挿し替わるなど、新しい解説が加わっている。
この2つの言葉を巡っては、市民団体が「あらゆる性の平等を目指すフェミニストの理念が明示されていない」などと、説明文の書き換えを求めていた。
具体的にどう変わったのだろうか。
「フェミニスト」は、第六版で「①女性解放論者。女権拡張論者。②俗に、女に甘い男」と説明。これに対し、第七版では「①女性解放論者、女権拡張論者。②女に甘い男。女性尊重を説く男性」に。従来の表現はほぼ残しつつ、これに「女性尊重を説く男性」が加わったかたちだ。さらに、②の説明文に続き、「坂口安吾、市井閑談『このおやぢの美点は世に稀なーであることである。先天的に女をいたはる精神をもち』」という引用文も加わった。
「フェミニズム」は、第六版で「女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動。女性解放思想。女権拡張論」と説明。これに対し、第七版では「女性の社会的・政治的・法律的・性的な自己決定権を主張し、性差別からの解放と両性の平等とを目指す思想・運動。女性解放思想。女権拡張論」となった。「男性支配的な文明と社会を批判し組み替えようとする思想・運動」という表現がなくなり、代わりに「性差別からの解放と両性の平等とを目指す思想・運動」という文言が新たに加わったかたちだ。
これらの文言の説明文を巡っては、2017年5月、男女平等を求める若手フェミニストグループ「明日少女隊」が、岩波書店に「フェミニズム」「フェミニスト」の説明文の書き換えを求める公開書簡を送るとともに、オンライン署名を開始。これまでに約6270筆を集めていた。
公開書簡によると、「明日少女隊」は「フェミニスト」の「女権拡張論者」という説明について以下のように指摘している。
「男性支配的な社会を、女性支配的な社会に変えるために、女性問題の解決や女性の権利だけを主張していると、多くの人が理解するのではないでしょうか」
「しかし、現在、フェミニストが実際に主張していることは、政治的・社会的・私的な領域で、どんな性として生きていても平等に扱われることです。広辞苑第六版の語釈では、あらゆる性の平等を目指すフェミニストの理念が明示されていないために、言葉の核心にある意味が伝わっていません」
「イギリス、アメリカ合衆国、フランス、韓国の辞書にも、性別平等の意味が入っています」として、平等の概念を盛り込んだ文章に書き換えるよう求めている。
「明日少女隊」によると、アメリカの「ウェブスター辞書」は、「フェミニズム」について「The theory of the political, economic, and social equality of the sexes.」(性別間の政治的、経済的、社会的平等の理論)などと説明し、イギリスの「オックスフォード辞書」(米国英語版)では「The advocacy of women's rights on the basis of the equality of the sexes.」(性別間の平等に基づく、女性の権利をサポートする理論や運動)などと説明しているという。
広辞苑は「国語+百科」辞典という位置づけで1955年に初版が刊行。各分野の専門家が、従来から載っている言葉の説明文や新たに盛り込む言葉を監修し、必要なものは見直している。
ハフポスト日本版の取材に対し、同社辞典編集部は「指摘を考慮し、説明文を見直すことにした」と説明していた。