米保守派の草の根運動「ティーパーティー」の資金源として知られる大富豪コーク兄弟が、経営難の米トリビューン社傘下のロサンゼルス・タイムズ(LAT)やシカゴ・トリビューンなど8紙の買収を検討していることが明らかになった。
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WASHINGTON, DC - NOVEMBER 04: Americans for Prosperity Foundation chairman and Koch Industries Executive Vice President David H. Koch (2nd L) gives a thumbs-up to Republican presidential candidate and former Godfather's Pizza CEO Herman Cain during the Defending the American Dream Summit at the Washington Convention Center November 4, 2011 in Washington, DC. The conservative political summit is organized by Americans for Prosperity, which was founded with the support of Koch and his brother David H. Koch. (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)
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米保守派の草の根運動「ティーパーティー」の資金源として知られる大富豪コーク兄弟が、経営難の米トリビューン社傘下のロサンゼルス・タイムズ(LAT)やシカゴ・トリビューンなど8紙の買収を検討していることが明らかになったと、21日付の朝日新聞デジタルが報じた。

「買い手として浮上したのは、石油化学大手などを経営するチャールズ・コーク氏(77)とデビッド・コーク氏(73)の兄弟。米フォーブス誌によると、資産は各340億ドル(約3兆5千億円)に上るとされる。

LATはメディア王ルパート・マードック氏も買収に関心があるとされるが、8紙をまとめて売りたいトリビューン社には、兄弟が「最も魅力的な買収者」(ニューヨーク・タイムズ=NYT)と伝えられる。同紙によると、兄弟の代理人はすでにLAT発行人と会ったという。

(中略) 今回の買収の動きについて「兄弟の考えを広める大がかりな土台とする」(NYT)との見方が広がる。兄弟は保守派批判を繰り返す既存メディアに不満なうえ、大統領選敗北の焦りから、政権奪還の手段としてメディアを挙げてきたとも伝えられる。

(2013/05/21 朝日新聞デジタル「政権奪還に新聞利用?」より)

コーク兄弟とは何者か。フリージャーナリストの中岡望氏のブログに詳しいので、以下、引用する。

コーク兄弟は、アメリカの保守主義運動を裏から支える大スポンサーである。

コーク兄弟が経営するコッチ・インダストリーズは1940年に父親のフレッドによってカンサス州に設立され石油、化学製品、天然ガス、パルプ、農薬、金融など幅広く業務を行っているコングロマリット企業である。2009年の売り上げは1000億ドルに達し、従業員数は8万人を越える大企業でもある。

トリビューン社は傘下にロサンゼルス・タイムスやシカゴ・トリビューン、バルチモア・サンなど8紙を抱えるリベラル色の強い老舗メディア企業だが、リーマンショックの2008年に日本の民事再生法にあたる米連邦破産法11条(チャプターイレブン)を申請して「倒産」。経営危機から脱却していない。複数の米紙の報道によると、傘下の8紙をまとめて購入すると申し出ているのは、現在のところコーク兄弟だけのようだ。

これに対し、ロサンゼルスでは市民の反対デモも起きた。14日付の本国版ザ・ハフィントン・ポストによると、労働運動家や環境活動家、NPOスタッフらが「コーク兄弟は要らない」などと書いたプラカードを掲げ、トリビューン社(シカゴ)の大株主企業の本社前で気勢を上げた。記事の中で、あるNPOの職員の女性は「貧富の差は良いことだとし、気候変動を認めないティーパーティー運動を支えた連中よ」と話した。(2013/05/14 The Huffington Post)

また、5月9日付のザ・ハフィントン・ポストの記事では、ロサンゼルス・タイムスの社内表彰式で、社員の半数は「コーク兄弟が買収したら会社を辞める」と表明したと報じている。(2013/05/09 The Huffington Post

米国の新聞業界を取り巻く状況は厳しい。新聞各社は発行部数減に悩み、富豪や実業家らによる買収劇も後を絶たない。2007年にはメディア王・ルパート・マードックが米ウォールストリート・ジャーナル紙を買収。オーナーが編集方針にまで干渉するようになり、優秀なベテラン記者たちは相次ぎ会社を去った。また、「オマハの賢人」と呼ばれる著名な投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資持株会社バークシャー・ハザウェイは昨年、米国南東部の地方紙63紙を買収。フランスの老舗ル・モンド紙も2年前に当時のサルコジ大統領の反発をはねのけ、左派系の企業家グループによる買収提案に応じている。

米の大富豪兄弟による老舗新聞社の買収問題について、朝日デジタルの記事はこう結んでいる。

米新聞協会によると、米紙の広告収入は2012年、紙・デジタル計223億ドル(約2兆3千億円)と、05年比で約55%減。経営環境はなお厳しい。 『買い手がつかない方が深刻では』との声もある。

(2013/05/21 朝日新聞デジタル「政権奪還に新聞利用?」より)

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