女性飛行士に囲まれて喜んでいる金正恩の写真

『環球網』が掲載していた「崔龙海陪同金正恩视察朝军女飞行员 打破传言」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。
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『環球網』が掲載していた「崔龙海陪同金正恩视察朝军女飞行员 打破传言」という記事がいろいろ興味深かったので、これについて少し。

久々の翻訳ネタですが、正直メインは翻訳より写真といったところです。

1 記事の紹介

(北)朝鮮最高指導者金正恩が朝鮮空軍第2620部隊に対し、飛行訓練の指導を行ったという記事です。

金正恩は「社会主義祖国の神聖なる領空をきちんと守ってくれる飛行士がいるから、朝鮮の青い空はいつまでも澄み渡っている。」と述べ、どのようにして飛行訓練を強化するかについて教えを垂れたそうです。

当日飛行訓練に参加した飛行士は全て女性で、金正恩は彼女たちが劣悪な気象条件下でも様々な項目を成し遂げたことに対し、称賛を贈り、女性兵士たちと一緒に記念撮影を行いました。

その後、金正恩は飛行士の宿舎、食堂、倉庫を視察し、飛行士を含む軍人生活に関心を払うことは、指揮官の神聖な義務であることを強調し、これが部隊の戦闘能力を高める重要事項で、軍人にとって部隊が家の様に温かくあるべきだとした。

また報道では、崔竜海朝鮮人民軍総政治局長、張正男人民武力部長などが当日金正恩と共に指導を行い、韓国メディアが報道した「崔竜海が逮捕され調査を受けている」というスキャンダルを否定した。

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(写真は今回紹介した『環境網』のHPのスクリーンショット)

2 コメント

ニュースバリューという意味では、最後の失脚が嘘だったということが大事なわけですが、最初に述べたように、金正恩が女性兵士と親しそうにしているところがおもしろそうだということから記事にしたという話かと思います。

個人的にはこの記事についていたコメントもいろいろ興味深かったというのが、今回これを紹介しようと思った理由の1つです。具体的には以下の様なコメントが載っておりました。

「この写真だけからでも朝鮮でここ1,2年の変化は大きいことがわかる。2年前なら女性兵士が元首をみようものなら感動のあまり泣いていた。」

「神秘的な度合いまで達している。」

「三代目の太っちょは、美女に囲まれ笑いが止まらない、後ろにいる崔竜海は羨ましくてしかたがない感じだ。」

3 かつての自分

人は価値観に基づいて行動しているわけですが、後から考えると何故あんなことができたのかということが良くあるものです。多分その最たるものが新興宗教でしょう(震災がれき受け入れ反対と新興宗教)。

実際、中国も毛沢東に対してはかなり特別な感情をもっており、かつては似たようなことをしてたわけですが、忘れてしまったというところでしょうか(毛沢東の死を悲しむ中国人の行動が、今の北朝鮮とそっくり)。

また、こうしたコメント見ると、中国人が北朝鮮をどう思っているかよくわかります。中国政府も北朝鮮のミサイル発射などにはかなりのいらつきを見せおりますが(北朝鮮に対し、本気で苛立ち始めた中国)、一般市民は気遣いも必要ない分、より辛辣になるという話かと思います。

ただ、流行などもある意味同じで、後から見ると、当時何故あんな恥ずかしい格好をしていたのだろう、何故なんなことを喜んでしていたのだろうというのは皆、大なり小なりあると思うので、あまりどうこういうつもりはなく、人はそういうものだという話かと思っています。

4 最後に

つまり、何が格好良い、何が正しいなどということは所詮絶対的なものではなく、その当時その状況で皆がそう考えるものがそうなっているに過ぎないという話です。

そして、傍から見るとおかしいということでも、そこで生きている人にとっては、そういう価値基準しかない以上、おかしいとは思わないわけで、選択肢がないということは本当に悲惨だと思いますが、当事者はそうとすら思えないことがあるわけです。

確かに外からみると金一族など、ただの太った人でしかないわけですが、北朝鮮の人にとっては、まさに生き神様で、特定の人が神格化(絶対化)された結果、不幸しかもたらさなかった事例は歴史上数限りなくあるという話です(北朝鮮の神格化と「崩壊」)。

(2014年3月8日「政治学に関係するものらしきもの」より転載)