北朝鮮の金正男氏殺害事件に使われた薬品は、猛毒の神経剤「VX」と特定された。
現地紙「スター・オンライン」によると、マレーシア警察のカリド・アブ・バカル長官は2月24日、声明を発表し、予備的分析の結果、遺体の目と顔から検出された成分が、VXと一致したことを明らかにした。その他の成分についてはまだ分析中という。
VXはサリンなどと同じ有機リン系の化学剤。無味無臭で極めて毒性が強く、呼吸器や皮膚から吸収されて微量で死に至る。日本では「オウム真理教」が1994年から95年にかけて、被害対策弁護団の弁護士や大阪の会社員らを信徒がVXで襲撃し4人を死傷させたとして、教団幹部らの死刑判決が確定している。
実行犯の疑いで逮捕された女は、薬品を金正男氏の顔に塗ったあと、犯行後にトイレで手に着いた薬品を洗い流していた。アメリカ連邦捜査局(FBI)アカデミーで毒性学を講義するジョン・トレストレール氏は韓国紙・中央日報の取材に「素手で触っても皮膚に浸透せずに安全な薬品など、私の知る限りない」と述べている。
一方で昭和大学薬学部の沼沢聡教授はテレビ朝日に対し「皮膚に付着した場合には、吸収されるまで一定の時間がかかる。例えば10分から30分程度、ほとんど症状が出てこない。その後、症状が出始めるが、それが急速に進行して、数時間で死に至る」と話している。