本田圭佑、猛プレスでも圧巻のキープ力。セリエAに"慣れた"(神尾光臣)

カリアリ戦、イタリアにわたってから初のフル出場を果たした本田圭佑。決定機を三度逃し、悔しがるシーンもあったが、チャンス演出に至るいい動きがあったのは事実。得意とするトップ下ではなく右サイドでの起用で、本田は何を見せたのか?
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■フル出場が意味するもの

実に惜しく、そして勿体なかった。カリアリ戦の前半18分、右サイドからゴール前に入り、バロテッリから最高のパスが供給されGKと1対1になる絶好のチャンス。しかしアブラモフをじっくりと見て、その脇を抜こうとしたはずのシュートは、思いっきり相手に弾かれた。

後半15分にはカウンターから前を向いてロビーニョへパスを出し、さらにDFラインのギャップの間に入って折り返しを呼び込む。タイミングは絶妙だったが、シュートはゴールの遥か上に逸れた。

1-0のままミランがカリアリに破れたのなら、戦犯として扱われても仕方のないところだ。しかし本田は試合終了間際、正確なCKでパッツィーニの逆転ゴールをお膳立て。後半38分にもプレースキックからカカーのヘディングシュートを演出しており、持てるストロングポイントを活かして確実に得点へと結びつけたナイスプレーだった。

彼がそういうチャンスに絡めたのは、当然ピッチに残されていたからこそ出来た話でもある。ミッドウィークのウディネーゼ戦で温存されていたとはいえ、プレスの激しい中タフに動いて前を向き、チャンスではゴール前でボールに触れていたからこそセードルフ監督からの信頼を享受することが出来たのだろう。

■決定機に至った巧みなランニング

数年来、コンスタントにセリエA残留を決めているカリアリの強みは、4-3-1-2のシステム固定で培われた連係と、タフなプレスにある。これまでの試合で、本田が厳しく寄せられた末にボールをロストしたシーンが少なからずあった。彼らがそんな本田に対してどう対処するのか、その一方で自身はどうプレーを修正するのか、興味があった。

いざキックオフになれば、本田はトップ下ではなく右サイド。カリアリの中でもとりわけタフなプレスを誇るアンカーのダニエレ・コンティ(ローマのレジェンド、ブルーノ・コンティの息子)のプレッシャーから逃した格好だが、その本田には左SBのムッル、そしてサポートに入る左ボランチのエクダルがはり付いた。

彼らは本田に体を寄せ、特に左半身のスペースを切り、左足でボールタッチを許さないようにしていた。しかし本田は粘った。左足で切り込めないなら右足でマーカーの背後を突き、振り切れなければ耐えた末にファウルを貰う。

そしてそんな状況の中、ゴールから離れたポジションからスタートし、3度の決定機に絡んだことは、むしろポジティブに捉えるべきことだ。代表での岡崎、またポジションは違うが現在インテルで5ゴールを挙げている長友を見れば明白だが、外から斜め方向に絞った動きをDFは視野に入れづらい。

戦術的に考えられたランニングによって本田はマーカーを振り切り、シュートにまで持って行くことが出来ていたのだ。

中でも39分、中盤へ下がるバロテッリやカカーの動きに連動するような形で前線に飛び出し、デ・シリオのアーリークロスを呼び込んだ動きは秀逸だった。このヘディングシュートも止められているが、これはむしろファインセーブを見せたアブラモフの反応を褒めるべきだろう。

■アバーテ復帰で広がる可能性

コンディションも随分上がってきた印象も受ける。これまでミランで先発した2試合では、時間の経過によってミスも増えてきた様子だったが、むしろこの日は時間を追う毎に精度が向上。終盤にはチャージに耐えた末にボールをキープし続け、前を向いて次のプレーを繰り出すという働きもしていた。

これまでの4試合、ガチガチに体を寄せてボールキープを潰しに来るイタリアの守備のリズムに、本田がまだ慣れていない印象もあった。現にコッパ・イタリアの2試合で立て続けに食らった2度の警告は、プレスをかけられてボールを失い、そのリカバーに走った末のものだ。

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ただ、本来ボディバランスは強く、コンフェデ杯ではデ・ロッシやキエッリーニを空転させてきた男である。プレッシャーの中でもクイックに前を向き、チャンスを作れることが本田の強み。身体的なスピードには欠けるかもしれないが、こういったボールコントロールを通し、彼は展開を加速させる。

そして周囲にスペースが得られ、ダイアゴナルランを駆使してゴールへと迫ることも出来る右サイド起用も、これはこれでありだろう。

自らはウイングとして縦を破れなくても、俊足でオーバーラップを繰り返す右SBのアバーテが先発に復帰すれば、連係を駆使し右サイドを縦に攻略することも可能になってくる。今回のカリアリ戦でも、終盤のセットプレーへ結びつく流れを引き寄せたのは、この右のラインだった。

周囲との連係が向上し、右でもよりボールへ触れるようになれば、本田の良さはさらに出て来るはず。マーカーを引き寄せるスタイルなのでケガが心配にはなるが、セリエAでも十分勝負は出来る。あとは訪れるチャンスを着実にゴールへと結びつけ、攻撃的なタレントとして定着を果たして欲しいものである。

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