PRESENTED BY KDDI株式会社

「コーヒーおいしかったよ」障がいのある社員と交流が生まれるカフェがあった。

障がいは特別ではなく「凸凹」の幅が大きいだけ。KDDIチャレンジドの取り組み
|
Open Image Modal

「企業にダイバーシティは不可欠」だと、誰もが頭では分かっている。

だが、いざ障がいのある人たちと一緒に働くことになったら「コミュニケーションが取りづらいかも」「どんなことに配慮すべき?」など、戸惑いを覚える人も多いのではないだろうか。

「障がい者は特別な人ではなく、凸凹の幅が大きいだけの普通の人たちです」

KDDIグループで、障がい者を受け入れる特例子会社「KDDIチャレンジド」(東京)の池内公和事業企画部長は、自然体でこう話す。中には仕事を通じて、能力を大きく花開かせる人もいるという。池内さんに、障がい者にとって働きやすい職場を作るための、具体的な取り組みや工夫を聞いた。

Open Image Modal
株式会社KDDIチャレンジド 事業企画部長 池内公和さん
Asami Kawagoe

タブレット、電子マネーを利用、障がい者が働きやすいカフェ

KDDIチャレンジドは2008年に設立され、身体・知的・精神に障がいのある人、約130人が所属する。仕事はKDDI本体から受託した清掃や経理、事務、携帯端末の解体作業などだ。特に2016年に始めた従業員向けのカフェ事業は、障がいのある社員と一般社員の大事な接点になっているという。

「以前は同じビルにいながら、障がい者の働く姿が社員の目に入ることは、ほとんどありませんでした。カフェがオープンして初めて、障がいのある仲間の存在を、多くの社員に認識してもらえました」と、池内さんは言う。

Open Image Modal
Asami Kawagoe

現在は東京・飯田橋の本社と大阪、新宿のオフィス内に店舗を構え、各店で10人弱が働く。新宿店にはパン工房を設け、焼き立てのパンも提供している。

注文取りはタブレット端末をタップするだけ。支払いも電子マネーに限定し、小銭のやり取りをなくすなど、障がい者が働きやすいよう運営も工夫されているそうだ。

それでもスタッフは、開業前「泣きながら端末操作を練習していた」(池内さん)。そんな彼らも今は手慣れた様子で、タブレットやエスプレッソマシーンを操る。 

「コーヒーおいしかったよ」「いつもありがとう」など、利用者とスタッフとの間にコミュニケーションも生まれているという。池内さんは「スタッフは、カフェの仕事を通じてできることが増えたという自信をつけ、利用客のかけてくれる言葉に励まされています」と語った。

Open Image Modal
エスプレッソマシーンでカフェラテなどを淹れ、提供している

チームを組み、社員それぞれが能力に合った作業を担う

池内さんは「障がいがあっても、特定の分野で能力を開花させる人もいる」として、ある社員の例を挙げる。

男性は自閉症で、入社するまで家にひきこもっていた。最初はうまく人間関係を築けず、話しかけても、蚊の鳴くような声で返事をするのがやっとだったという。

しかし、彼は事務作業などで優れた力を見せた。人に褒められてみるみるうちに自信をつけ、大きな声で話せるようになった。

「今では、KDDI本体の社員と業務の打ち合わせをし、メンバーへ作業を割り振るなど、リーダー的な仕事もできるようになりました」(池内さん)

数字を一目見ただけで記憶し、人の二倍の速さで経理作業ができる社員もいる。また携帯端末は、手で分解するとほぼ100%リサイクル可能だが、知的障がい者の中にはこうした細かい作業を、健常者以上に得意とする人がいる。

池内さんは「大事なのは彼らが『できる』ことを把握し、業務を割り振ることです」と強調する。

Open Image Modal
不要になった携帯電話を解体して素材別に分別し、リサイクル率を高めている

KDDIチャレンジドでは、障がいを持つ社員5~7人がチームを組み、健常者のリーダーが統括する。池内さんによると、他社では1チームの人数が15人にのぼることもあるが、リーダーの目の届きやすい少人数制が、定着率の高さにつながっているという。

また、リーダーは毎月メンバー全員と面談し、体調が悪い時などの場合は仕事よりも治療や回復を優先する。リーダーだけでは解決しきれない場合に備えて、障がい者全員にマンツーマンで外部の支援者もついているという手厚さだ。こうした取り組みの積み重ねが、社員に「できることをやってもらう」(池内さん)環境を生み出している。

中には、知的障がいのある人がバーコードの読み取りを担当し、身体・精神障がいの人が読み取ったデータを処理するといった「融合チーム」もあるという。社員それぞれが能力に合った作業を担うことで、異なる障がいを持つ人が、一つのミッションを完遂することもできるのだ。

「外の世界」に憧れ離職 期待と裏腹に厳しい現実

現場では、日々さまざまな問題も起きる。その中でも悩ましいのが、スタッフが働き始めて2~3年経つと「外の世界」に憧れ、転職を考え始めることだという。

カフェの仕事で自信をつけた社員たちは「別の職場でもうまくやっていけるのではないか」と、一般の求人に目を向けるようになる。しかし実際には、彼女たちに一般就労は難しく、仮に職を得られたとしても、パートやアルバイトであることが多い。正社員として採用され、月々の給与とボーナスも出る現状と比べれば、収入は大幅に下がってしまう。

「『外』が必ずしもバラ色の世界ではないことを、なかなか理解してもらえないのです」と、池内さんは嘆く。

Open Image Modal
Asami Kawagoe

以前、ある女性社員が「時給980円のカフェでアルバイトしたい」と退職を申し出た。池内さんらが彼女の目の前で電卓を叩いて「月~金曜日まで毎日7時間働いたとしても、年収は30万円以上も下がるよね。それにアルバイトでは、週5日もシフトを入れてもらえるとは限らないよ」などと説得したが、聞き入れられなかったという。

「最近は高等特別支援学校でも、生徒に一般就労の厳しさを教えるようになりました。私たちも、社員に必要な情報を伝えなければと考えています」と、池内さんは力を込めた。

それぞれの特性を理解して、安心して働ける環境に

精神障がい者は日によって症状に波があり、出勤時間や勤務日が不安定になりがちだ。他人の気持ちを推測するのが苦手な人や、暴力的な傾向がある人もいる。

日常的に障がい者と接している池内さんですら、特性を理解しきれないこともあるという。

ある社員は、池内さんが誰かと立ち話をしている時に限って「相談がある」と割り込んできた。「席にいる時に来てくれればいいのに」とずっと思っていたが、ごく最近になって、彼が「席に座っている人は仕事で忙しく、立ち話をしている人はヒマ」だと認識していたことが分かった。

また、障がい者には日光や大きな音、強い匂いなどを苦手とし、健常者と同じ場所で働くことに苦痛を感じる人も少なくない。特例子会社という「組織内組織」に障がい者を集め、健常者と働く場を分けることには批判もあるが、池内さんは「特例子会社の利点を生かして、彼らの困りごとがあればその解決を優先して、彼らが安心して働ける環境にしたい」と語った。

政府も求める障がい者雇用 取り組まないのは時代遅れ

政府は、企業に対して一定割合の障がい者を雇い入れるよう求めており、未達成の企業には納付金が課せられる。現在の法定雇用率は2.2%で、2021年4月までに2.3%に引き上げられる予定だ。昨年の調査では、法定雇用率を達成した企業は48%と、半分以下に留まった。

KDDI の障がい者雇用率は2.54%(2019年6月時点)で、法定雇用率を大幅に上回る。このため池内さんの元には、多くの企業から、障がい者雇用に関する相談が寄せられる。

だが企業に話を聞くと、人事や総務の担当者が障がい者雇用を兼務し、忙しすぎて手が回らないこともしばしばだという。「社屋がバリアフリーではないので、採用できない」と話した担当者もいた。

池内さんは「障がい者は人より『はみだし具合』が大きいだけ。どんな企業にも彼らが能力を発揮できる仕事はあるはずです。採用できない言い訳探しをせず、彼らを雇い入れてほしい」と訴えた。

KDDIは持続的成長の基盤としてダイバーシティ&インクルージョンを位置付けており、障がい者雇用も取り組みの一つだ。

同社は、障がいの有無だけでなく性別や国籍、宗教などに関係なく、全ての社員が、イキイキと働き続ける「真のダイバーシティ経営」の実現を目指して、これからもさまざまな施策を打ち出していく。

(取材・文:有馬知子 撮影・編集:川越麻未)