カシミールめぐりインドとパキスタンが緊張状態 その背景は?

インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で、両国が砲撃の応酬をするなど緊張が続いている。23日からは両国の安全保障部門の責任者による協議が予定されていたが、中止された。
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An Indian army soldier guards near fencing on the line of control near Balakot sector in Poonch, Jammu and Kashmir, India, Monday, Aug.17, 2015. Despite a 2003 cease-fire, the two neighbors regularly trade fire, the latest coming as India celebrated Independence Day on Saturday. Pakistan observed it a day earlier. (AP Photo/Channi Anand)
ASSOCIATED PRESS

インドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方で、両国が砲撃の応酬をするなど緊張が続いている。8月23日からはニューデリーで両国の安全保障部門の責任者による協議が行われる予定だったが、直前に中止された。カシミールをめぐる問題とは何か、整理した。

最近の情勢について、産経ニュースは次のように伝えた。

事前交渉でパキスタン側はカシミール問題を協議に含めることを求めたが、インド側は応じず、意見が対立したという。

インドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相は7月の会談で、安全保障部門の協議などで合意していた。

印パ安全保障協議が中止 - 産経ニュース 2015/08/23 19:21)

カシミール地方では7月27日、インド北部のパキスタン国境に近いパンジャブ州グルダスプールで、3人からなる武装グループが警察署などを襲撃、警官と市民計8人が殺害されるテロが起きた

8月15日には、インド・パキスタン双方から銃撃や砲撃があり、インドからの報道などによると、少なくとも市民4人が死亡、約20人が負傷。インドは、同国内でのテロ攻撃にパキスタン軍の関与を指摘、一方のパキスタン側はこれを否定している。このように、両国の信頼醸成の動きに影響が出ている。

※地図中のジャンムー・カシミール(ジャム・カシミール州)がインド側で、点線の「停戦ライン」より北がパキスタン側のアザド(自由)カシミール州。カシミール地域を囲み、北東が中国、南がインド、南西がパキスタン。

■カシミールめぐりインドとパキスタンは3度の戦争

カシミール地方は、インド北部からパキスタン北東部にかけての山岳地域。イギリス領時代は従属下で一定の支配権を認められる藩王国だった。住民の約5分の3がムスリム(イスラム教徒)だったが藩王がヒンドゥー教徒で、1947年8月のインド・パキスタンのイギリス領からの分離独立時に帰属が決まらず宙に浮いた。独立から2カ月後、イスラム教徒による暴動が発生。藩王はインドへの帰属を表明し、暴動の鎮圧にインド軍派兵を要請。ムスリム国家のパキスタンはこれを認めず、第1次印パ戦争が勃発した

1949年に国連の調停で停戦ラインが設けられ、両国に中国を加えた3カ国が実効支配地域を分け合うことに。1965年9月の第二次印パ戦争を経て、1971年12月には第三次印パ戦争が発生し、カシミール地方は戦場になった。1999年には再び印パ間の衝突(カルギル紛争)も発生した。

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1965年9月13日、第二次印パ戦争でインド領カシミールを歩くインド兵ら(Photo credit should read STR/AFP/Getty Images)

インド側カシミールでは1989年以降、イスラム過激派がテロ活動を中心とする運動を展開し、2010年までに約5万人が犠牲になっているとされる。1990年代後半からは、「ラシュカル・エ・タイバ」(LeT)などの過激派が参加。LeTはパキスタンのCIAと称されるISI(三軍統合情報局)が背後で糸を引いているとも、タリバンやアルカイダと関係するともいわれ、2008年11月には、約170名が殺害されたムンバイ・テロ事件を起こすなどしている。

インド政府は、ムンバイ・テロ事件などに対するISIなどの関与を指摘しているが、パキスタン政府はこれを否定。カシミール問題は、核問題とともに両国関係の改善を妨げる大きな要因となっている。

現職のインドのモディ首相とパキスタンのシャリフ首相は、カシミール紛争の終結に道筋を付けて経済交流を進めたい意向を持っているとされる。しかし、両国の関係に改善の兆しが見えるとテロなどこれに反対する動きが活発化するという堂々巡りがこれまで繰り返されてきてきた。一筋縄ではいかないようだ。

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