"歌わない"カラオケルームが人気 予約だけで2ヶ月待ちのワケ

カラオケルームはもはや、“歌う”だけの場所ではなくなってきている。
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A young Japanese girl sings inside a Karaoke box, in Shibuya, Tokyo, Japan (Adobe RGB)
bbossom via Getty Images

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“歌わない”カラオケルームが盛況 予約だけで2ヶ月待ちのワケ

若い世代に変わらず人気のカラオケルーム。

かつての会社帰りに仲間同士で毎日通うようなブームが過ぎ去ってからも、個室でひとりで歌える“ひとり”カラオケや、アーティストとのコラボルーム、キッズルームなど、あの手この手の試みで新たな楽しみ方を提示し、変わらず多くのファンを楽しませてきている。

そんななか、“歌わない”カラオケルームと称されるデュアルモニタールームが、予約2ヶ月待ちという人気になっている。

◆SNSで拡散、アイドルやアニメ“オタ会”需要

デュアルモニタールームとは、一見ふつうのカラオケボックスと変わらないが、壁二面を巨大スクリーンとして映し出せるプロジェクターが備え付けてあり、そこに持ち込んだライブやアニメ映像を映し出すことができるのだ。

たとえば、メインモニターにアーティストが立つステージ、横の壁のサブモニターに観客席を映し出せば、部屋の視界はもうライブ会場そのもの。巨大スクリーン2面の映像とカラオケルームならではの大迫力の音響の臨場感は、ライブ会場とはひと味異なる特別なものになる。そこに好きなもの同士で集まって、好きなように盛り上がれるとなれば、ファンにとってはたまらないだろう。

このデュアルモニタールームで行われているのは、いわゆる“オタ会”が多いようだ。ペンライトやハッピなどを持ち込み、大好きなアイドルやアニメの映像をファン同士で楽しむ、“最高の趣味の空間”になっている。

SNSなどで知り合ったファン同士が、この部屋でオフ会ならぬオタ会を開き、その様子を写真や動画でアップ。気の合うファンだけのクローズドな空間で、ときに激しく歌って踊って騒いだりと、思い思いに楽しむ姿が瞬く間に拡散。好きなアイドルの世界に引き込まれるような錯覚に陥る部屋への興味も高まり、大ブレイクとなった。

現在、デュアルモニタールーム(プロジェクタールーム)を設置しているカラオケボックスは全国で数十店舗。ラウンドワンなどのアミューズメント施設でも展開しているが、急激に盛り上がった人気に対して部屋数が少ないため予約は激戦となっており、都内では2ヶ月待ちというのも珍しくない。料金が通常のカラオケルームとほとんどかわらない(差は数百円ほど)のも人気の理由のひとつだろう。

◆音楽やスポーツなどのライブビューイングもカラオケルームで楽しめる可能性も

こうしたデュアルモニタールームのヒットについて、ラウンドワン広報は「家ではできない、お客様それぞれの映像の楽しみ方があります。このルームを導入後は、これまでカラオケに来ていなかった方々の来店動機にもなっているようで、来店者数が増えています。利用されるお客様の8割の方は音楽などのライブ、2割の方はアニメDVDを鑑賞していらっしゃるようです」という。

音響や映像システムの進化、昨今のユーザーの嗜好の変化にあわせて、常に新しいエンタテインメントの楽しみ方を提供しているカラオケルームは、もはや“歌う”だけの場所ではなくなってきている。

ラウンドワン広報では「今後はモニターがなくなり、3Dホログラム映像のように、アーティストがすぐそばにいる、一緒に歌える、アーティストの一員になれるなど、よりリアルな空間で歌ったり、ライブ映像が楽しめるようになるのではないでしょうか」とする。

SNSの活発な利用から仲間同士のコミュニケーションがより深まり、そうした仲間でのプライベート空間での楽しみ方に注目が集まるなか、まるでライブ会場や映画館をそこにカスタマイズするようなスペースは、今後もさまざまな形態が模索され、需要も伸びていきそうだ。

この先、音楽やスポーツなどのライブビューイングがカラオケルームで観られるときも来るかもしれない。エンタテインメントの新たな楽しみ方の可能性を秘めている。

(文:吉田可奈、編集部)

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