官房長官の会見で東京新聞記者の質問制限→官邸の申し入れに新聞労連が抗議。真意を聞いた

なぜ抗議が1ヶ月以上も遅れたのか、記者クラブに加盟していないウェブメディアの会見参加をどう考えるか…。新聞労連の南彰委員長に聞いてみました。
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記者会見する菅義偉官房長官=1月24日、首相官邸
時事通信社

首相官邸が東京新聞の女性記者の質問行為を制限する申し入れを行ったとして、日本新聞労働組合連合会(新聞労連)は2月5日、抗議声明を発表した。

首相官邸は、菅義偉官房長官記者会見での東京新聞の記者による米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設工事に関する質問を「事実誤認」だとして問題視。2018年12月28日、記者クラブ「内閣記者会」に対し、「当該記者による問題行為については深刻なものと捉えており、貴記者会に対して、このような問題意識の共有をお願い申し上げる」と文書で申し入れを行っていた。

新聞労連は、「記者会見において様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことは、記者としての責務」としたうえで、「官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の「知る権利」を狭めるもの」だと抗議した。

さらに、官邸が問題視している質問内容についても、記者の認識が正しいと指摘。申し入れ行為について、「偽った情報を用いて、記者に『事実誤認』のレッテルを貼り、取材行為を制限しようとする行為」と反論した。

首相官邸報道室は「声明の現物(紙面)を確認していない。こちらから何もコメントすることはない」としている。

「なぜ今?」 南彰・新聞労連委員長に聞いてみた

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記者会見で挙手する東京新聞の記者を指す菅義偉官房長官=2017年7月4日、首相官邸
Jiji Press

なぜ申し入れから1ヶ月も過ぎて抗議するのか。「 #質問できる国へ 」というハッシュタグとともに、Twitterで積極的に発信している新聞労連の南彰委員長(朝日新聞社)に聞いた。

━━なぜすぐに抗議しなかったのですか?

新聞労連として、この件を知ったのが2月1日だったからです。「選択」の記事で初めて知りました。

━━内閣記者会に加盟している社は問題視しなかった?

当初、記者クラブに対しては、もっと強いトーンでこの記者の排除を求める要求が水面下であったようです。記者クラブがこれを突っぱねたため、紙を張り出すかたちで申し入れを行ったと聞いています。クラブとしては、これを受け取ってはいない、ということです。

━━声明には、1月に「『公の取材機会』である記者会見などの充実・強化」とうたった春闘方針を決定したとあります。これは申し入れとは無関係なのでしょうか?

申し入れの事実は知りませんでしたが、官房長官会見が酷い状況であることは把握していました。春闘の方針も、これを念頭に決めたものです。

━━官邸がメディアにこのような申し入れをすることの、何が問題だと考えていますか?

日本の中枢である官邸の会見がこうでは、地方でも「あれでいいんだ」という風潮が広まる恐れがあります。新聞労連内でも、地方で取材している記者のほうが問題を深刻だと受け止めています。

━━新聞だけの問題とは思えません。

今回は新聞記者がターゲットになったので、新聞労連が最初に動きました。今後は各メディアの労組や記者クラブとも連携し、一緒に声を上げていきたいと思っています。

━━ところで、ハフポストなどの記者クラブに加盟していないメディアが官房長官会見に出席できないのですが、どう思いますか?

理由は詳しく知らないのですが、ニコニコ動画は普段から出席していますね。記者会に加盟していないメディアでも、申請して認められれば、金曜午後の会見には出席することができるようです。どんどん出席して、いろいろな質問をぶつけてほしいです。

新聞労連の抗議声明は以下(一部抜粋)

記者会見において様々な角度から質問をぶつけ、為政者の見解を問いただすことは、記者としての責務であり、こうした営みを通じて、国民の「知る権利」は保障されています。政府との間に圧倒的な情報量の差があるなか、国民を代表する記者が事実関係を一つも間違えることなく質問することは不可能で、本来は官房長官が間違いを正し、理解を求めていくべきです。官邸の意に沿わない記者を排除するような今回の申し入れは、明らかに記者の質問の権利を制限し、国民の「知る権利」を狭めるもので、決して容認することはできません。厳重に抗議します。

 官房長官の記者会見を巡っては、質問中に司会役の報道室長が「簡潔にお願いします」などと数秒おきに質疑を妨げている問題もあります。このことについて、報道機関側が再三、改善を求めているにもかかわらず、一向に改まりません。

(中略)

日本の中枢である首相官邸の、事実をねじ曲げ、記者を選別する記者会見の対応が、悪しき前例として日本各地に広まることも危惧しています。首相官邸にはただちに不公正な記者会見のあり方を改めるよう、強く求めます。