新型コロナウイルスの感染拡大で医療現場の人手不足が深刻な地域に、自衛隊の看護師が派遣されることになった。なぜ今、自衛隊の看護師が求められているのか。普段、どんな仕事をしているのか調べてみた。
■過去最大のクラスターが発生した旭川などに派遣へ
北海道旭川市の旭川厚生病院では12月7日までに計237人の感染が判明。国内では過去最大のクラスター(感染者集団)となった。
市内の他の病院でもクラスターが発生しており、旭川市の西川将人市長は7日、自衛隊看護師10人の派遣を北海道を通して政府に要請すると表明。西川市長は会見で「医療機関でクラスターの発生が相次ぎ、市中感染も広がっている。このままでは医療体制が崩壊する恐れがあり、自衛隊から看護師を派遣してもらうよう、道に対し要請した」と話した。
また、大阪市内でも15日から稼働する「大阪コロナ重症センター」の看護師が不足している。大阪府の吉村洋文知事は7日、「自衛隊につきましては、昨日、防衛大臣に要請しました。数人程度は派遣いただけるんじゃないかと」と災害派遣を要請したことを明らかにした。
■自衛隊の看護師「看護官」とは?
防衛省の広報担当者によると、自衛隊の看護師は全国に約1000人。身分は自衛官の一員で、隊内では「看護官」と呼ばれている。普段は全国16か所の自衛隊病院、全国の基地や駐屯地の医務室などで看護師業務に携わっている。隊員数が多い陸上自衛隊が最も多くの看護官を抱えているという。
看護官は埼玉県所沢市の防衛医科大看護学科などで養成。看護師資格を取った後、幹部自衛官としての教育を受けており、野戦病院で負傷者を手当てするなど特別な訓練も積んでいる。
自衛隊の看護官はコロナに関する任務にこれまでも当たってきた。2月から3月にかけて、集団感染が発生したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」に派遣されたほか、空港での水際対策で検体採取などをしていた。
自衛隊による新型コロナ対応をめぐっては、ダイヤモンド・プリンセス号での船内活動で自衛官の感染者を出さなかったほか、新型コロナ患者を受け入れている自衛隊中央病院でも院内感染は起きていない。産経ニュースでは「感染症対応能力が評価されている」と報じている。
【UPDATE】NHKニュースによると、岸信夫防衛相は、北海道から看護師を旭川市に派遣する医療支援の要請を受けて、自衛隊に災害派遣命令を出したことを明らかにした。(2020/12/08 17:55)