ボランティアが描いた『ナウシカ』の映画看板、まさかの晴れ舞台に。『アニメージュとジブリ展』で展示へ

秋田県大館市の「御成座」では、介護士の映画ファンがボランティアで映画看板を手がけています。
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御成座で使われた『風の谷のナウシカ』の映画看板。左が作者の仲谷政信さん
Twitter/OdateOnariza

2020年秋のリバイバル上映に合わせて、地方の映画館で制作された『風の谷のナウシカ』の手描きの映画看板が、4月15日から都内で始まる「アニメージュとジブリ展」で展示されることになった。

同館の公式Twitterが6日、写真付きで「地方の小さな映画館の絵看板が、まさかの晴れ舞台に飛び出します」と感激の声を投稿すると、3日間で約1万2000回もリツイートされるなど話題になっている。

 

■介護士の映画ファン、ボランティアで映画看板を手がける

展示される看板は、秋田県大館市の映画館「御成座(おなりざ)」で掲示されたものだ。同館は、近年ではあまり見かけなくなった手描きの映画看板を上映作品に合わせて制作することで知られている。『風の谷のナウシカ』の看板はベニヤ板4枚分のサイズで、横幅は約3.6メートル。看板の左下には同館で飼育しているウサギの「てっぴー」が隠れている。

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『風の谷のナウシカ』映画看板の制作風景。左のナウシカの隣に「てっぴー」が隠れている(御成座の公式Twitterより)
Twitter/OdateOnariza

御成座によると、同館の映画看板は、市内に住む介護士の仲谷政信(なかや・まさのぶ)さんがボランティアで描いている。御成座が営業再開した翌年の2015年1月、館主の発案で劇場スタッフが2作品の看板を描いた。それを見た仲谷さんが『自分にも看板を描かせて欲しい』と申し出たことがきっかけだった。それ以降はほぼ全ての映画看板を仲谷さんがを手がけており、4月9日現在で165枚に上る。

仲谷さんはもともと御成座に通い続けていた映画ファンで、デザイン会社にも勤めていた経験もあった。映画看板を描くという、若い頃からの憧れをかなえた形だった。

御成座の担当者は、映画看板を設置する理由を「昭和建築の一戸建ての映画館が全国で少なくなっていく中で、あえてレトロさを売りにしてやっていくというポリシーもあり、看板を設置する映画館が絶滅寸前だからこそ当館では絵看板を続けていきたいと思っております」と話している。

 

■「来場者にどのように見て頂けるかは、楽しみでもあり怖くもあります」

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『風の谷のナウシカ』上映時の御成座。ジブリ作品の看板が掲げられている(公式Twitterより)
Twitter/OdateOnariza

『風の谷のナウシカ』は御成座で、2020年10月16日から11月5日まで上映。2014年に新体制で営業再開して以来、念願のジブリ作品の上映だった。これまで御成座に映画を見に来たことのなかった家族連れなど幅広い年齢層が来館したことで、通常の作品の倍以上の観客動員だったという。

この映画の看板の制作にあたり、著作権を管理するスタジオジブリから承諾を得た際に、完成品の写真をメールで送っていた。その写真を見た展覧会の主催者から「展示したい」と御成座に打診があったという。「アニメージュとジブリ展」は、4月15日から5月5日まで、松屋銀座8階のイベントスクエアで開催される。

御成座の映画看板が展覧会で展示されるのは初めて。同館の担当者は、ハフポスト日本版の取材に以下のように話している。

「地方の劇場の絵看板にこのようにスポットを当てて頂けて非常に光栄に感じております。実際に展示はされてもそこまで話題になるとも思ってはいなかったので、SNSで思った以上に多くの反響を頂き、このような取材まで受けてしまうことには若干戸惑いも感じております。展覧会の来場者にどのように見て頂けるかは、楽しみでもあり怖くもあります」