6月5日の夜にあった、俳優の蒼井優さんとお笑いコンビ「南海キャンディーズ」の山里亮太さんによる結婚発表会見の取材に行った。幸せそうなお2人や、しずちゃん(山崎静代さん)の山ちゃん(山里さん)への愛情深いツッコミを間近で見て、私までハッピーな気分になった。
でも、会見が終わった時には、モヤモヤしていた。それは質問の内容に、だ。
今回の会見は、時間の都合もあったのか、質問ができたのは記者席最前列にいた芸能リポーターや在京キー局アナウンサーといったテレビ番組の関係者らだった。
この人たちは「芸能のプロ」であり、芸能人にとっても「知っている顔」で、安心して話しやすいと思う。
だが、質問内容が気になったのだ。
「お子さんを作る計画とか?」「ブサイクランキング殿堂入りぐらいの方なんですけども?」
質問者たちが”当たり前”のように聞いていることに、「家族観」や「見た目」に関する固定観念が透けて見えた。
■「アナウンサーらの質問が、番組の質問」な理由
私は朝日新聞からハフポストに出向中だ。朝日新聞では2年間、テレビ局や芸能の担当をしていた。さらにその前はテレビ局員で、報道番組を作っていた。
会見での、アナウンサーらの質問は、事前にディレクターらと内容を練っていることも多い。最終的にどういうVTRに仕上げたいかに質疑の内容が影響するからだ。文章と写真の新聞とは違い、テレビはVTR編集に時間がかかるので、事前の打ち合わせが重要になる。会見中に制作スタッフと連絡を取り、質問内容を変えることもある。
■繰り返された「見た目」への言及
質問でまず気になったのは、「見た目」への言及だった。
「蒼井さん、(山里さんは吉本興業の)ブサイクランキング殿堂入りぐらいの方なんですけども。結婚はね、外見ではないというか、でも、そういう方だと思うんですけど」
自然に山里さんが引き取り、「オブラートが薄いなあ」と笑いに変えた後、自身の顔を指差しながら「『これでいいの?』ってことですね」と言うと、質問者は「そうです」と答えた。
別の質問者からも蒼井さんに対して、「ブサイクキャラで人気だったという山里さんですけども、ここの顔のパーツが好きという所はありますか?」という質問が出た。
山里さんが「キラキラしている人」を皮肉る芸で人気を集めてきたのは事実だ。だからといって、そのパートナーに対して、「見た目」についてのコメントを求める必要があるのだろうか。
「男ぶりが上がったような」と前置きしたうえで、山里さんに「モテない芸人たちへのコメント」を求める質問も出ていた。
■性別を「置き換えた」時に、聞きますか?
既にSNSなどで指摘が出ているが、女性に置き換えて考えた時にこれらの質問はするだろうか。性別を置き換えた時に「失礼で聞けない」と感じるのであれば聞くのをためらうはずだ。
また、蒼井さんについても質問者が「芸能界一のモテ女優。その女優さんを独り占めにしちゃった」などと表現し、蒼井さんが微妙な表情を見せる場面もあった。
■なぜ似たような質問がでるのか。番組の事情とは?
「ブサイクキャラで人気だった〜」の質問が出た時には、「見た目」に関する質問はすでに出ており、私は現場で「もういいでしょ…」と感じていた。不祥事の会見などで、回答が不十分なために同じ質問をくり返すことはあるが、今回はそのようなケースではない。
質問者の事情は分からないが、会見場に情報・報道番組の担当アナウンサーらが来ている場合、番組は、質問で番組名を言う場面や、アナウンサーが質問する映像を使いたい。ゆえに、同じような質問がくり返される。
■結婚会見から透ける、質問者の「家族観」
会見終盤、ある民放番組は「見た目」関連の質問をした後、こう続けた。
「晴れてご家族になったわけですけれども、お子さんを作る計画とかはもう考えられてますか?」
″結婚イコール子ども”を前提にしたような質問だ。
山里さんが「授かりものということでございまして、もし来ていただけるんだったら嬉しいなということは思っております」と答えると、質問者は楽しげな声でかぶせるように質問を繰り返した。
「何人くらいの家族とかの想像は?」
山里さんは「(子どもは)来ていただけるだけでありがたいという感じでございます」と応じ、蒼井さんは真顔のまま「はい」と重ねた。
結婚と「お子さんを作る」がイコールなのかは、その人たちの考え方・生き方による。様々な事情で子どもを持たない・持てない人もいる。軽々しく聞けることではないと私は思う。といっても、私がこう考えるようになったのはテレビ局を辞めてからだった。新聞記者として地域社会で、様々な事情を抱える家族や、色んな価値観を持って生きる人たちを取材してからだ。
テレビ番組に関わる人たちがとても忙しいのはよく分かる。視聴者が求める情報を追っている部分もあるのかもしれない。でも、「視聴者が望んでいるから」という言い訳ばかりをするのではなく、メディア側が自発的にもう少しアップデートしてほしいと感じた会見だった。
芸能人の結婚報告はFAXやSNSで行われることが多くなり、結婚会見というおめでたい場を取材できる機会も減っている。その貴重な機会に、時代の空気にあった質問をしたい。自戒も込めて、そう思った。