【見つかりました】14年前に、仙台駅でクレイマーさんを助けてくれたJR社員 「自分だと思う」とコメント

恩人が見つかったクレイマーさん「びっくりしました……。みつかってとても幸せです」と驚き、喜んでいます。
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14年前に助けてくれた駅員さんにお礼を言いたい――。

7月に掲載した、アメリカ出身のジャッド・クレイマーさんが恩人を探しているという記事には、たくさんの情報や励ましのコメントが寄せられました。

クレイマーさんが探していたのは、14年前の2005年8月16日に仙台駅で地震に遭遇した時に、宿泊費を払って彼をホテルに泊め、帰りの新幹線に乗せてくれたJR社員。 

本音を言うと、14年という長い年月を考えると簡単にはみつからないかもしれないという気持ちも、記事を掲載した時にはありました。

しかし、集まった情報やJRの協力のおかげで、「自分ではないか」という男性社員がみつかりました。 

 

■情報とJRの協力で、恩人探しが始まった

その男性社員は、今もJR仙台支社で働いています。クレイマーさんが仙台駅で地震に遭遇した2005年8月16日は、仙台駅で帰宅困難者の支援に当たっていました。

今回恩人探しの手がかりとなったのは、男性が当時30歳くらいで、片腕だったというクレイマーさんの記憶です。

記事掲載後、JR東日本仙台支社が当時の社員名簿を元に、その詳細に当てはまる人物がいたかどうか調べてくれました。しかし残念ながら、該当する社員は人みつかりませんでした。

ただ、手に障がいをお持ちの社員がいました。「もしかしたら手を不自由そうにしているのご覧になって、片腕と思われたのでは」と、調べてくれた担当者は話してくれました。

それと同時期に、ハフポスト日本版にも「2005年当時仙台駅で働いていた社員の中に、手に障がいのある男性がいました。当時の年齢は20代後半。クレイマーさんが探しているのは彼ではないでしょうか」という情報が寄せられました。

もしかしたらこの男性社員が、クレイマーさんを助けてくれた人物かもしれない。ハフポスト日本版はJR東日本仙台支社にお願いし、その男性社員に外国から来た旅行者を助けた記憶がないかを確認してもらいました。

■決め手になったのは、当時の写真

その男性社員は、地震当日に仙台駅で帰宅困難者の対応に当たったことは覚えていました。

その中には外国からの旅行者もいて、その旅行者をホテルに案内したという記憶もあったのですが、「片腕」という詳細が当てはまらなかったため、記事を最初に読んだ時は自分ではないだろうと思ったそうです。

ただ、時間をかけて当時を振り返るうちに少しずつ当時の状況が思い出され、もしかしたら自分かもしれない……という気持ちが強くなったといいます。

一方で、14年前の出来事ということもあり、その旅行者の顔までは覚えていませんでした。

そこで、ハフポスト日本版はご本人の同意を得て、その男性社員が約10年に撮影した写真をお借りしてクレイマーさんに送り、確認してもらいました。

写真を見たクレイマーさんから返ってきたのは、驚きと喜びの言葉でした。

「99%、この男性社員でした。写真を見てびっくりしたと同時に、とても嬉しくなりました。もう一度仙台に会いに行きたいです!」

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ジャッド・クレイマーさん
KAZUHIRO SEKINE / HUFFPOST JAPAN

 ■14年越しに会いに来てくれたのが嬉しかった

男性社員は名前の公表を希望されていないため、今回お名前を伏せた上で、当時のことについてコメントをもらいました。

地震が起きた日、仙台駅は帰宅困難者で溢れ、JRは社員総動員で対応したそうです。

ホテルの確保やチケットの延長手続きは、クレイマーさんだけでなく、その日自宅に帰れなくなった人たち全員に対してのものでした。

しかし、クレイマーさんが14年後の2019年7月に、彼を探しに仙台駅に来てくれたことがとても嬉しかったと男性社員はいいます。

「このたびは14年前の話であるにも関わらず、はるばるアメリカから会いに来ていただいたことを嬉しく感じています。顔は憶えていないのですが、外国人のお客さまを案内した事を思い出し、身体的特徴からも自分であると思っています」

「接客業務に携わっている当時は、海外から来られたお客さまに対しては、『日本は良い国だ、また日本に来たい』と感じていただけるような接遇を日頃から心掛けていました」

■障がいがあったことで、人の痛みに敏感になれた

当時クレイマーさんは、18歳になったばかり。初めて訪れた日本で大きな地震に遭遇し、不安でパニックになったといいます。

そんな中で、わざわざホテルまで案内し、切符の手配をしてくれた見知らぬ駅員さんの優しさに、本当に安心できたとクレイマーさんは話します。

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2005年に、日本の友人宅を訪れた際に撮影した写真。真ん中がクレイマーさん
JUDD CRAMER

男性社員は「困っている人の気持ちを敏感に感じ取れたのは、自分に障がいがあったからだと思う」と、生み育ててくれた両親や分け隔てなく働ける職場への感謝も綴ってくれました。

「今回の対応については、自らが障がいを持っているせいか、人の痛みや気持ちに対して敏感なこともあり、外国人のお客さまの不安げな状況を察することができたのではないかと思っておりますが、自分としては普段どおりに対応したと思っています」

「障がいを持っているにも関わらず区別なく働く環境をいただき、このような機会につながったことについて、当時の仙台駅同僚、会社及び自分を生んでくれた両親に対しても感謝しています」

■クレイマーさんから「ありがとうございます」

クレイマーさんはハーバード大学で教鞭をとっているため、大学の冬休みに再び仙台駅を訪ね、男性と再会する予定です。

今回恩人探しを応援し、協力してくれた多くの人たちに感謝を伝えたいと、メッセージを送ってくれました。

「ハフポスト日本版の読者のみなさん、そしてコメントや励ましを送ってくださったみなさん、そして恩人と私をつなげてくれたJR東日本のみなさんに、改めてお礼を申し上げます」

「そして、私が詳細を間違って記憶していたにも関わらず、名乗り出てくださった男性に心より感謝します。『自分の仕事をしただけ』と言いますが、彼がしてくれたことは、私にはとても大きな意味を持つもので、とても心を動かされました」

「私はいつも、アメリカの友人や同僚たちに、日本の人たちがどれだけ寛容で親切かを話しています。まず最初に話すのが、仙台駅で私を助けてくれた男性のことです。それから日本での初めての旅で道に迷った時に、車に乗せて助けてくれた人たちのことも……」

「これからはそこに、今回私を助け、励まして下さった読者のみなさんが加わりました。本当に、ありがとうございます」

ハフポスト日本版からも、情報をお寄せいただいたみなさん、記事を読んで拡散してくださったみなさん、応援してくださったみなさん、協力してくださったJR東日本仙台支社のみなさんにお礼を申し上げます。

今回の恩人探しは、みなさんからの協力がなければ実現しませんでした。ありがとうございました。