首都ワシントンD.C.で1月6日起きたトランプ支持者による暴動を受け、アメリカの大手出版社サイモン&シュスターは共和党のジョシュ・ホーリー上院議員の本の出版を中止すると発表した。
ホーリー氏は「選挙では不正が起きた」と根拠のない主張を続けるトランプ大統領を支持し続け、ジョー・バイデン氏の勝利確定に反対すると最初に表明した議員だ。
サイモン&シュスターによると、6月に出版する予定だったホーリー氏の著書『The Tyranny of Big Tech』は「FacebookやGoogle、Amazon、Appleなどの巨大テック企業がアメリカの自由に与える脅威」を論じる内容だった。
出版中止の決断は「簡単ではなかった」と同社は説明している。
出版中止の説明
1月6日に起きた死者を伴う暴動を受け、サイモン&シュスターはジョシュ・ホーリー議員の『The Tyranny of Big Tech』の出版中止を決定しました。決して簡単な決断ではありませんでした。様々な声や視点を広く届けるのは、出版社である私たちの使命です。しかし同時に、市民として我々出版が担う大きな責任を、私たちは真剣に捉えています。ホーリー議員が私たちの民主主義と自由に与えた脅威から、私たちはホーリー上院議員を支持できないという結論に達しました。
ホーリー議員は強く反発
この決定に、ホーリー議員は強く反発している。
同氏はTwitterで「これほどジョージ・オーウェル的なものはない」とサイモン&シュスター社を批判。
「出版中止は単なる契約上の論争ではなく憲法修正第1条(言論や出版の自由を保障する条項)に対する侵害だ。自分たちが承認したもののみ出版し、左翼の自分たちが認めないものは全てキャンセルしようということだ」と憤りを綴った。
さらに「私はできうる全ての手を尽くして闘う。裁判になるだろう」と、法廷に持ち込む意思も示している。
ホーリー氏は、6日の連邦議事堂での暴動に責任があると批判されてきた。
同氏は選挙人投票によるバイデン氏の勝利確定に反対しただけではなく、暴動前には議会の外に集まったトランプ支持者に向かって、拳を突き上げて歓迎するようなジェスチャーを見せた。
またホーリー氏の選挙陣営は暴動の最中、大統領選の結果に反対するための資金調達依頼メールを送信していた。
暴動の後、ホーリー氏は「暴力を終わらせなければならない。警察を攻撃したものと法を破ったものは、起訴されるべき」とコメントした。
しかし同氏の地元ミズーリ州のカンザスシティスターは「ホーリー氏はこのクーデターの責任がある」と同氏を強く叱責する社説を掲載。
さらに2018年にホーリー氏の上院当選を支えた元上院議員のジャック・ダンホース氏も「ホーリー氏を支え、当選を後押ししたのは人生最大の間違いだった」と後悔を語った。
ホーリー氏への批判続出
そういった状況でサイモン&シュスターが下した出版中止の決定。
それに対して怒りを表したホーリー氏だが、ソーシャルメディアではホーリー氏への厳しい批判が投稿されている。
民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員はホーリー氏の投稿に「暴動に火を注いだ責任がある」とコメントしている。
オカシオ=コルテス議員のツイート「あなたは、根拠のない攻撃をする暴徒たちに向かって拳を突き上げた。あなたの行動が暴動に火を注いだ。あなたはカオスの最中で資金調達をしていた。この暴動で5人が亡くなっています。共和党の同僚でさえ、あなたから距離を置こうとしている。それでも本の契約について文句を言っているのか。あなたは追放されるべきだ」
また、ホーリー氏の憲法修正第1条の引用についても厳しいコメントが寄せられている。
民間企業に対する規制を無くし、何でも誰でも好きなことができるようにすべきと主張していた上院議員が、民間企業が彼に対して好きなようにした途端、悲しんでいる
憲法修正第1条についてよく調べたら、興味深い事実がわかるはず。政府は自由な言論を制限できないけれど、民間企業は反逆者に対して好きなことができるということがわかるでしょう
憲法修正第1条は、あなたに言論の場を与えることやそれに対価を払うことを民間企業に強制できないんですよ