神奈川県座間市の部屋から少なくとも9人の遺体が見つかり、死体遺棄容疑で住人の男(27)が逮捕された事件では、9人のうち1人とみられる、東京都八王子市の女性(23)と男が「自殺サイト」などを通じて知り合ったことが報じられている。
集団自殺で浮上した自殺サイトの問題
「自殺サイト」、あるいは「ネットと自殺」をめぐる問題は、2004年の集団自殺で初めて社会的に大きく取り上げられた。
2004年10月12日、埼玉県皆野町の駐車場で、ワゴン車の中で練炭を使って自殺をしたとみられる男女7人の遺体が見つかった。
7人の住所は青森県や、佐賀市などバラバラ。ネットの自殺サイトへの書き込みを通じて、知り合っていたことがわかった。また、練炭を使った自殺の手法を、ネットの情報で得ていたことも報じられた。
集団自殺をネットが助長したのではとする見方から「ネット社会の危険性」が強く印象付けられ、当時、埼玉県の県教委は生徒たちに「インターネット利用に注意を」と呼びかけた。
自殺サイトを悪用した犯罪も
また、こうしたサイトを悪用して快楽殺人に利用した犯罪も発生している。
大阪府堺市の男は、2005年2月〜6月の間に、自殺サイトで知り合った相手を誘い出し、3人を殺害したとする事件で死刑判決を受けた。
初公判での大阪地検による冒頭陳述によると、動機は「相手を窒息させて苦しむ様子を見て楽しんだ上、最後は殺害してしまうというかねてから望んでいた殺害方法を容易に実行できると考えた」というものだった。
さらに、自殺サイトに集まった自殺志願者を対象にすることで「罪悪感が薄かった」とも供述していた(2005年8月26日朝日新聞朝刊社会面)。
警察庁のまとめで、ネットによる集団自殺は2003年の1年間で12件発生し、34人が死亡したと朝日新聞(2004年10月12日夕刊社会面)が報じている。警察庁は「2003年から自殺サイトで知り合ったとみられる集団自殺が目立つようになった」とコメントしている。
また、これらの事件をきっかけに、接続業者などの業界団体は2005年10月、自殺予告を書き込んだ人の住所や名前などの個人情報について、警察から照会があった場合には開示する指針を決めた。
様変わりしたネットの風景
あれから13年。
近年でも2014年9月に埼玉県越生町で自殺サイトで知り合った4人が集団自殺を試み、3人が死亡した事件や、2015年7月に山梨県富士河口湖町の青木ケ原樹海で、自殺サイトで知り合った女性の自殺を手助けした疑いで男性が逮捕された事件などが発生している。
しかし、すでにネットは現実の生活やコミュニケーションと切っても切れない関係になり、当時報道されたように「ネット社会」が「仮想空間」や「闇」「特殊なもの」として論じられる存在ではなくなった。
さらに、今回の事件で行方不明になった女性は、自殺サイトだけでなく、Twitter上でも一緒に自殺をする人を探す書き込みをしていたと報じられている。専門サイトや取り締まりなどネットの監視だけでは予防に限界がある実態も浮かび上がっている。
若者の「困った」「自殺願望」、信頼できるサイトに繋ぐには
「自殺」を求めてネットの海をさまよう人々を、どう支援し、また犯罪から救うことができるのか。
ネットで「死にたい」と検索した時に、自殺遂行のための情報や心ない暴言、悪用しようとする人々ではなく、信頼できる支援の情報にたどり着くために。
このサイトには、いじめや虐待、進学、犯罪被害、からだとこころの問題などを相談できる場所がどこにあり、どう連絡したらよいのかについて網羅されている。
代表者の森山誉恵さんは、ハフポスト日本版の取材に対して「必死で助けを求めてネットの世界に逃げ込んできた子に対しても、このサイトが届くことによって、なんとか支援の手がつながるような仕組みを作りたい」と話している。