神宮外苑再開発、盛山文科相に要望書を提出「秩父宮ラグビー場を改修し、樹木や文化を守って」

「気候変動が問題になる中、改修を考えないで建て替えありきの計画を進めるのは不適切だ」と訴えています

東京・明治神宮外苑を再開発して高層ビルを建てる計画に対して、反対の市民運動が続いている。見直しを求める署名の一つにはこれまでに22万4000人以上の賛同が集まっている。 

この署名発起人で経営コンサルタントのロッシェル・カップさんが9月25日、盛山正仁文部科学相への要望書を文科省に提出した。

カップさんは要望書の中で「再開発には、多くの市民や専門家から懸念が示されている」と指摘。

文科省の外郭団体である「日本スポーツ振興センター(JSC)」が再開発事業者の一つであることから、同センターに計画の見直しをするよう指導することなどを同省に求めている。

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(左から)盛山正仁文部科学相宛ての要望書を提出したロッシェル・カップさん。スポーツ庁の担当者が代理で受け取った(2023年9月25日)
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なぜ文科省に?

JSCは文科省が所管する独立行政法人で、再開発の対象となっている土地の約4分の1は国がJSCに出資している土地で、もともとは国民の共有財産だったものだ。

そういった背景から、カップさんは要望書で次のような対応を求めている。

▼神宮外苑の樹木や文化遺産としての価値を守るために、現在の再開発計画を見直すようJSCを指導すること

▼秩父宮ラグビー場を改修で保存活用するようJSCを指導すること

▼JSCの土地(秩⽗宮ラグビー場)と神宮外苑の⼟地(神宮球場)を交換する権利変換計画に同意しないよう、JSCを指導すること

▼いちょう並木を名勝指定するための手続きを進めること

▼イコモスからのヘリテージアラートに10月10日までに公式な回答をすること

神宮外苑の再開発をめぐっては、ユネスコの諮問機関であるイコモスが9月7日に「ヘリテージアラート」を発出して計画の撤回を求めている。

イコモスはこのアラートで、政府や文科省に対しても、再開発の問題に積極的に介入するよう要請している。

一方、盛山文科相はこのヘリテージアラートについて、「東京都、新宿区、港区が関係事業者と協議しながら適切な対応をしていくべきもの」と9月22日の記者会見で述べて、文科省としては対応しない考えを示した。

この盛山文科相の姿勢について、カップさんは「監督している団体が事業者の一つだということを無視した発言で、責任逃れだ」と要望書の提出後に開いた記者会見で述べた。

「今、国内外から反発が起きているのは、都と区のこれまでのやり方が不十分だからであり、文科省が関わるべきだと思います」

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要望書を手にするロッシェル・カップさん(2023年9月25日)
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秩父宮ラグビー場の「建て替えありき」に疑問

神宮外苑の再開発では、JSCが管理・運営する秩父宮ラグビー場を壊し、場所を移動して建て替える予定だ。

しかし新しいラグビー場は現在に比べて観客席が約4割減るほか、屋根をつけて人工芝にする計画になっており、元ラグビー日本代表の平尾剛氏らから反対の声が上がっている

カップさんは、「4割減るとがっかりするラグビーファンが多いのでは。新計画では大きなスクリーンを設置する予定になっていて、ラグビーではなくイベントスペース優先になっています。人工芝になることで、選手が火傷をする恐れや、マイクロプラスチックの問題が発生する可能性もある」と述べた。 

カップさんが2022年にスポーツ庁に「秩父宮ラグビー場の建て替えと改修について、それぞれメリットとデメリットを比較したか」と尋ねたところ「していない」という回答だったという。

カップさんは 「気候変動が問題になる中、改修を考えないで、建て替えありきの計画を進めるのは不適切だ」と訴えた。

「多くの専門家が、建物を壊すと大量のゴミが発生し、新しく建てることで、かなりのCO2排出されると指摘しています。既存のビルを使い続けるのが、一番環境に良い選択です。 文科省にはぜひそういうことを考えてほしい」