「神宮外苑の樹木を守ってほしい」――市民の思いを小池百合子都知事に伝えようと8月23日、神宮球場前で再開発に反対するデモが開かれた。
再開発では、100年以上神宮外苑を見守ってきた多数の樹木が伐採される計画になっており、多くの市民から反対や懸念の声があがっている。
しかし、小池知事は3月に計画を承認。その後、事業者側(三井不動産、伊藤忠商事、明治神宮、日本スポーツ振興センターJSC)に都民参加や樹木の保全を求めたものの、大量の木が切られる計画内容は変わっていない。
23日のデモは、小池知事が神宮球場で開かれた東京ヤクルトスワローズ対広島カープの試合で始球式をしたことにあわせて開催。
集まった参加者たちは「樹木を切らないで」「小池さん、神宮の緑を守ってください」などのメッセージが書かれたプラカードを掲げ、声を上げた。
未来の世代のことも考えて
東京都在住の二見真由美さんは、100年以上守られてきた樹木を守りたいとデモに参加した。
「ビルだらけの都心で、神宮外苑はオアシスです。木が少ない都会にこそ、樹木が必要で大切だと思います」と話す。
さらに小池知事に対し「都民ファーストであれば、都民のために、そして国民のために木を残してください」と訴えた。
東京都在住の中島ケリーさんは、未来の世代のことも考えてほしいと話す。
「世界中の国々で、木や環境を守りましょうという流れになっています。東京都心はただでさえ緑が少ないのに切ってしまうなんて、小池さんは大丈夫なのかと感じます」
「気温が上がり、とても暑くなっています。今だけではなく、将来の子供たちのことも考えた時、わざわざ緑を無くして開発する必要はあるのだろうかと思います」
さらに、中島さんは再開発で神宮外苑のシンボルである4列のいちょう並木の景観が損なわれることにも懸念を示す。
再開発計画では「いちょう並木を確実に守る」ということが大前提になっている。
しかし、並木からわずか8メートルの位置まで迫る新球場の外壁で、いちょうの根がダメージを受けることが懸念されており、中央大学研究開発機構の石川幹子教授は8月15日に開いた記者会見で、新宿御苑の保全調査から「今の計画のままでは、外苑いちょう並木は、樹勢が確実に衰えていくだろう」と指摘した。
事業者側は、いちょう並木は守るとしているが、確実に保護できることを示すデータなどは提示していない。
排出されるCO2は年間4万7000トン
再開発計画で失われるのは、樹木だけではない。建築家らが歴史的価値がある神宮球場の取り壊しに反対し、計画の見直しを求めている。
さらに、新たに高層ビルやホテルが建設されることで、年間4万7000トンものCO2が排出されることがわかっている。
千代田区の「神田警察通り」の街路樹を守る活動をしている小枝すみ子千代田区議も23日のデモに参加。
「使える建物を壊してゴミを増やし、ヒートアイランドを悪化させる。やってはいけないことだ」と話した。