大阪市在住の立命館大学4回生、冨田すみれ子さん(22)は、自宅に近い在日コリアンの集まる街・鶴橋や、大学への通学で通る梅田駅前などで、人種差別や外国人排斥を叫ぶ人々が出てきていることに胸を痛めていた。
東アジアの国家間では昔から様々な問題が外交的な摩擦を生んでいたが、それが一般市民の感情に発展し始めたことに「何か自分にできることはないか」と思っていた。
そんな2014年の5月末、ファレル・ウィリアムズの"Happy"に出会った。内戦でイスラエル軍の砲撃に遭うパレスチナ自治区のガザや、福島第一原発事故の放射能汚染のもとで暮らす福島など、この曲に合わせてたくさんの人が踊る動画が広がり、困難な状況でも明るく生きる姿を世界にアピールしていた。
そうだ、日中韓の若い世代で"Happy"を踊ろう。ヘイトスピーチには笑顔で対抗しよう。冨田さんは仲間を募った。自分たちの世代は、今よりよい日中韓の関係が築けるはずだ。未来を担う世代から「大人たち」に伝えようと思った。
立命館大学に通う日本人や在日コリアン、中国人、韓国人の留学生に頼んで撮影したほか、高校の頃に参加していた日韓交流プログラムや、自身のアメリカ留学中に知り合った韓国人、中国人の学生が快く協力してくれ、メールで動画を送ってもらった。参加者は総勢約100人になった。
日中韓で"Happy"をつくる作業は思いの外、センシティブな壁もあった。「ビジュアル的に映えるから」と日中韓の国旗を使おうとも思ったが「年配層には不快感を覚える人もいる」との指摘を受けて断念した。
でも「仲良くしようぜ!」というシンプルなメッセージがセンシティブであってはいけない、と冨田さんは思っている。笑顔で楽しく踊るのは人種に関係ない、人類共通のHAPPYだ。「人は○○人であるという前に、みんな一人の人間だ」という若い世代からのメッセージが、東アジアに伝わってほしいと願う。「簡単な問題ではないけど、みんな同じひとりの人間と考えたら、日中韓も少しは仲良く出来るかな」
撮影を機会に知り合った日中韓の学生たちと、勉強会や討論会をしようというアイデアも出た。楽しく踊って終わりにはしたくない。高校の頃から日韓関係などに興味を持ち、歴史問題なども勉強してきたが、動画を見て興味を抱いた人たちも巻き込んで、新しい関係作りに動き始めている。
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