現代の家に生きる日本の伝統

一部の建築家は伝統を受け継いで、現代の家に活用しています。今回は、そんな現代の家に受け継がれた日本建築を紹介したいと思います。
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昔ながらの日本の家を見かけることが少なくなりました。文化的な価値のあるものは残されますが、多くの古い家は取り壊されています。そして新しく建てられるのは現代的な住宅であったり、マンションやアパートといった集合住宅。伝統を受け継いだ家が失われつつあると言えるでしょう。ですが、それは消える一方ではありません。一部の建築家は伝統を受け継いで、現代の家に活用しています。今回は、そんな現代の家に受け継がれた日本建築を紹介したいと思います。

「雁木」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。これは家の軒が伸びて、通りの横にアーケードのような構造を作るものです。雪よけのために屋根が付いた屋外通路と言えるでしょう。それは積雪の多い新潟県などに見られる昔ながらの建築です。ただし除雪が効率的に行われるようになり、 また雁木が利用される商店街の衰退もあって、現代ではあまり見られなくなってきました。それは既に失われつつある日本の建築文化の1つと言えるかもしれません。

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そんな雁木を現代の家に活用したのは照井康穂建築設計事務所です。北海道の札幌市に「雁木のある家」を建てています。家の前に見えるのは軒が伸びた雁木。これは伝統的な使用法と同じく、積雪の際に家の周りに通路を作り出します。それ以外に果たすのは夏の強烈な陽射しを避ける役割。ここで雁木は建物の南側に取り付けており、直射日光が建物内に射し込まないようにしています。そのため室温の上昇を防ぎ、空調機器に頼りきることのない健康的な生活を可能にするのです。

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古い家で見られるものの一つは土間でしょう。それは屋内に設けられた地面と同じ高さの空間。雨風を防ぐ屋外空間の役割を果たし、作業場や炊事場として使われていました。また屋内と屋外を繋ぐ場所であるため、外でも中でもない中間的な性格を持っています。ですが家の中にキッチンが設けられ、屋内と屋外を繋ぐ場は玄関が果たすことになって、土間の役割は失われていきます。今では新しい家にそれを見ることは簡単でないでしょう。

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そんな土間を現代の家に設けたのはカイコ建築設計事務所です。その外と内とを繋ぐ中間的な性格に注目して、土間に重要な機能を与えています。それとは2世帯住宅を繋ぐこと。「蒲郡の2世帯住宅」では、2棟の建物を土間のある空間で結んでいます。それは玄関として外と内とを繋ぎ、同時に親世帯の家と子世帯の家を繋いでいるのです。2世帯住宅はお互いの距離感を保つことが重要です。そこで必要なのは近すぎず遠すぎない心地良い距離感。土間はそんな距離感を作ることに活用されているのです。

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最後に取り上げたいのは縁側です。それは家の縁に設けられた板敷の通路。屋根があり壁が無いため、雨風を避けれる空間となっています。そして土間同様に外でも中でもない中間的な場所と言えるでしょう。そんな縁側は近所の人と話す場所となるコミュニケーションの重要な場所でもありました。ですが、今では防犯やプライバシーを考えるようになり、外と中との境界は明確になり、縁側はかつて果たしていた役割を失いつつあります。それは現代社会の近所付き合いの希薄さに少なからぬ影響を与えていることでしょう。

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建築事務所ALTS DESIGN OFFICEはこうした縁側を現代の家に設けています。縁側があるのは「阿久比の家」。通りに面したところに屋根が伸びて縁側が作られています。それは近所に住む人にとっては気軽に立ち寄れる雑談の場となります。もちろん役割をそれだけではありません。縁側の横にはガラス戸が設けられており、建物の中から縁側や外に広がる風景を眺めることができます。そのため開放感を生み出すことになるのです。

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昔ながらの日本建築文化は時代の変化によって徐々に失われつつあります。ですが完全に忘れられている訳ではありません。それは暮らしの知恵が形となっているため、今でも必要とされているのです。もちろん、その姿は昔のままでなく、果たす役割も現代的なもの。それは姿を変えて、今なお私たちの暮らしをより良くするために大きな役割を果たしているのです。