日本人人質事件と自国民救出、そして集団的自衛権〜隣国からみた「普通の国」日本

憲法の制約のために自国民の保護にすら国力を活用できない状況を残念がる日本の外交官の姿から、筆者は「普通の国」になりたいという日本の願望を肌で感じることができた。
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過激派組織ダーイシュ(イスラム国)による日本人人質事件で、安倍晋三首相は「罪を償わせる」と、テロに屈しないとの姿勢を強調した。日本では自衛隊が海外で自国民を救出するための法整備が焦点となっている。

1994年5月、中東のイエメンで内戦が発生したとき、筆者は現地の韓国大使館で1等書記官として勤務していた。内戦初日からアメリカやヨーロッパなど主要国の大使館を回り、各国が自国民救出のために派遣した軍用機に韓国人25人を乗せてくれと頼んだが、どの国も「自国民をまず退避させてから考慮する」との返事だった。やがて4日後、やっとフランスの軍用機に空きが出て、韓国人を国外に救出することができた。

当時、日本は現地在留者が100人を超えていたが、自衛隊が政府専用機のボーイング747型機を2機も保有しているのに、現地に派遣できなかった。憲法上、海外での武力行使が認められていないため、自衛隊機を派遣する法的根拠がなかったのだ。結局、日本大使館も韓国と同様、主要国の大使館を回って協力を求めた末、ドイツの軍用機でなんとか自国民を脱出させた。世界第2位の経済大国だが、憲法の制約のために自国民の保護にすら国力を活用できない状況を残念がる日本の外交官の姿から、筆者は「普通の国」になりたいという日本の願望を肌で感じることができた。

その後、自衛隊法が改正され、現在は航空機、船舶、車両を海外に派遣して自国民を「輸送」できるようになったが、自国民を直接「救出」することはまだ不可能だ。しかし、2014年に日本政府は、当事国の同意など一定の条件下で自衛隊の自国民救出を可能にするよう自衛隊法を改正する方針を明らかにした。今回の人質事件で安倍政権はさらにその動きを加速させるとみられる。

法律が改正されたとしても、日本がアメリカのような本格的な救出作戦を展開する可能性はなく、自衛隊の活動はどこまでも「当事国の警察力を代行する程度」に制限されるというのが日本政府の説明だ。しかし、これまで小火器を主とし、正当防衛や緊急避難の場合に限っていた自衛隊の武器使用範囲が、新たな任務に合わせてさらに拡大するのは明らかだ。

これ以外にも、2015年は日本の安全保障政策に大きな変化があるだろう。2014年7月、日本政府は、それまで禁止していた集団的自衛権の行使を認めると閣議決定し、2015年上半期に国会で関連法案を審議する予定だ。ここには、集団的自衛権に関する法律以外にも、自国民救出はもちろん、アメリカ軍の支援や領土・領海の防衛、国際平和維持活動(PKO)など安全保障分野の法的基盤を整備する作業が網羅されている。従って、自国民救出の問題は、日本の安保政策が「普通の国」に大転換することを示すひとつの事例に過ぎない。

1994年、イエメン内戦当時、フランスの軍用機で救出された韓国人は、紅海を越えてジブチという小国のフランス軍基地に着陸したのち、民間機に乗り換えてパリ経由で帰国した。ジブチは現在、フランス軍基地以外にも、アフリカ唯一のアメリカ軍基地があり、北大西洋条約機構(NATO)各国も駐留している。日本もソマリアの海賊対策の一環として、2011年6月に自衛隊初の海外活動拠点を開設した。

ジブチ国際空港に隣接した自衛隊の拠点には、司令部と宿舎、そしてP3C哨戒機の駐機場と格納庫があり、哨戒機を運用する海上自衛隊の約110人と、陸上自衛隊の施設警備要員約70人が駐留している。2013年、日本人10人が死亡したアルジェリアの人質事件では、この陸上自衛隊を人質救出に投入する案も検討された。日本政府は2015年、安保法制が整備されれば、ジブチの自衛隊拠点を事実上の「海外基地」に格上げし、海賊対策だけでなく自国民救出や災難救助、PKOなど多目的に活用する計画という。憲法上は軍隊すら保有できない日本が、海外基地まで保有する時代になるとは隔世の感を禁じ得ない。

国際情勢の質的な変化に対応し、自国民救出など安保体制を整備しようとする日本の悩みは、韓国としてもある程度共感できる。しかし軍事力の拡大に直結する日本のこうした動きが、ともすれば東アジアでさらに大きな摩擦と緊張をもたらさないか、韓国の国益に否定的な影響を及ぼさないよう、注意深く見守りながら必要な対応を怠らないようにしなければならないと思う。

この記事はハフポスト韓国版に掲載されたものを翻訳しました。