日経平均が1143円急落してからあす23日で1年がたつ。当時強かった過熱感は消え、むしろ割安感が漂うが、本格上昇に至るには依然として力強さに欠ける展開だ。
アベノミクスへの期待感が後退しているほか、米利上げ予想が高まらない中で米金利が低下、円安も進まず、企業業績も減速気味だ。昨年は調整終了後に高値奪回に転じたが、当時と比べて日本株に不利な材料が多くなるなか、再浮上のきっかけを探り続けている。
<昨年と大きく異なる地合い>
日本株市場の地合いは昨年5月23日と大きく異なっている。水準が大きく低下したために大崩れの可能性は低下したが、相場の勢いを失い、低迷が続いている。
当時は、世界経済の回復予想が広がる中で、黒田日銀が4月に決めた「異次元緩和」の余韻が残り、「買いが買いを呼ぶ展開」(大手証券トレーダー)だった。さらに日経平均
一方、足元の日本株は冷え込んだままだ。欧米株が高値を更新する一方、日経平均は年初から約2000円下落した水準に低迷。東証1部売買代金も昨年ピークの3─4兆円から大きく減少、2兆円を下回る水準が定着しつつある。当時18倍近くあった予想PER(株価収益率)は13倍台まで低下しているが、「カタリスト(材料)が乏しい」(国内投信)とされ、反発しても買い戻しの範囲内にとどまっている。
目ぼしい成長戦略は見当たらず、日銀追加緩和期待も後退。消費増税への警戒感が広がる中で、企業業績も減速する懸念が出てきている。アベノミクスへの期待感が後退するなか、昨年、日本株を15兆円買った外人投資家が今年に入って2兆円以上売り越しに転じている。機関投資家、個人投資家ともに、国内勢は依然として日本株に慎重な姿勢を崩していない。
<大きく変化した米金融政策への市場認識>
日本株への影響という点に関しては、世界の投資環境で1年前と最も変わったのは、米金融政策に対する見方だろう。
昨年はバーナンキ米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言で、米金融緩和の早期縮小観測が強まったことが、日本だけでなく世界の株式市場が大きく調整に入った背景だった。その後、テーパリング(量的緩和縮小)は開始されたが、現在は早期の利上げ観測はむしろ後退。投資家はシナリオの再構築を迫られている。
早期米利上げ観測の後退はリスク資産市場にはプラスだが、日本株にとっては相対的に不利な環境となる。早期米利上げ観測の後退は米金利を低下させ、対ドルで円高の要因になるためだ。
ただ、マーケットの認識が早期利上げなしとの方向にやや傾き過ぎているとの指摘もある。米経済指標をみる限り、寒波の影響を脱し、総じて順調に回復しつつある。潜在成長率低下への懸念もあるが、このまま順調に経済が回復していけば、「出口」論も浮上するとみられている。そうなれば、日本株が出遅れを修正するきっかけになり得るだろう。
SMBC日興証券シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏は4月29─30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨について、FRBメンバーがかなり米景気に楽観的だったとの印象を受けたと話す。「FRBが出口戦略に着手するタイミングは一般に想定されているよりも前倒しになる可能性が高い」とみている。
昨年5月23日に、株売りのきっかけとなったのは、マークイット/HSBCが同日発表した5月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値だった。市場予想を下回ったことで中国の景気減速懸念が広がり、日経平均の下げ幅は1143円まで広がった。
だが、今年は反対に買い材料となった。景気判断の分かれ目である50は下回ったものの、5カ月ぶりの高水準となったことで、日経平均
(伊賀大記 編集:山川薫)