なぜ、日本では中小企業であることの強みが発揮できないのか?

中小企業は大企業になる前の「子供」ではないし、大企業の下請けではないとの考え方が強くあります。
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- Fotosearch via Getty Images

■ ヨーロッパと日本で感じる企業文化の「差」

ぼくはイタリアを拠点にビジネスをはじめて4半世紀になり、その前に日本でヨーロッパの企業とつきあっていた期間を加算すると、ヨーロッパビジネスの経験はそれなりの年数になります。当然ながら、いろいろな地域の文化差に直面します。

ある時、米国の方が「米国では中小企業は大企業に至るまでの過程の産物であるとみなすことが多い」と話すのを伺い、ヨーロッパとは違う点だなあと思ったことがあります。ヨーロッパでは少人数の先鋭集団が新しいコンセプトを生み出すことを良しとする企業文化があります。

大企業に敬意の念がないわけではありません。が、中小企業は大企業になる前の「子供」ではないし、大企業の下請けではないとの考え方が強くあります。言うまでもなく、実態としては下請け的存在の企業はたくさんあります。それでも、日本の古い体質の中小企業によくある「大企業は世界の情報を把握しているのだから、彼らの話に従っていればミスは少ないだろう」と大らかに構えていることは少ないと考えてよいでしょう。

日本でもスタートアップあるいはベンチャーと称される企業は、世の中のトレンドを自ら作っていこうとの気概に満ちています。そのために小さい規模であること自身にさほど負い目を感じない。優秀なチームはオープンな外部との協力関係で築くことで実現できるとの目論見もあるでしょう。

ぼくが長くヨーロッパで感じるのは、伝統的な中小企業においても日本のベンチャー企業の性格を色濃くもっている会社が少なくないということです。

■ 私には見える「日本企業に棲みつく亡霊」

一方、日本においてはベンチャー企業にしか挑戦に相応しい形態がない。その場合、モデルはシリコンバレーにあり、世界を大きく変えるような事業を短期間に達成するのを目標としないと消極的と思われる・・・との迷いに入り込みやすいとの現実があります。

「世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?」を書こうと思った理由の一つがここにあります。超のつく巨大企業やシリコンバレー型企業の動向ばかりに振り回され、無駄な労力と敗北感ばかり重ねる羽目に陥っている中小企業の経営者が日本に多いのではないか、と感じていたからです。  

■ 狭く、高く売ることが得意なヨーロッパの企業

彼らが参考になるヒントを海外の中小企業の幹部へのインタビューから拾って頂けたら違った視界が広がるはずと考えたわけです。ご存知のようにヨーロッパには、広く安く売るのではなく、狭く高く売ることを得意とする企業がたくさんあります。日本も含め世界の約20社の企業への取材結果を記していますが、今後の中小企業が考えなくてはいけない4つのポイントについてもまとめました。4つとは「デザイン」「ルールメイキング」「オープン」「ローカル」です。

昨年の6月に上梓されてから数々のご感想やご意見を伺ってきました。やはり多国籍大企業かシリコンバレーの話題の企業の書籍や報道ばかりで、海外の中小企業の動向や実態を知るきっかけができたとの声を多く頂きました。

また、中小企業の経営者を想定読者として考えておりましたが、意外にも大企業の経営企画や新事業担当の方たちに読んで頂いていることもわかり、大企業といえども精鋭集団の使い方が市場の新しい主役になるにあたり鍵であると認識されているのでしょう。

正直申し上げて、書き足りない点もあります。個々の取材レベルも企業によってばらつきがあります。日本の方が当たり前のように入手する企業基礎データも、海外の中小企業では外部に出さないのが一般的なことも多く、ご不満に思われる方もいると思います。それらは次作での課題と考えています。

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