NYで建築の仕事をしていた頃、同僚にレンというゲイのデザイナーがいました。レンはハンサムで身体も鍛え上げていたので、超かっこいい。
ある時に2人で残業してたレンに、私つい「ねー、女じゃだめなの?」って聞いてしまった事がありました。
その時にいつも明るい彼が一瞬とても苦しそうな顔をしたのです。それから、ぽつり、ぽつりとこんな話をしてくれました。
僕は南部出身でしょう? 子どもの時から男らしく見えるように努力してたんだ。ティーンエイジャーの時、ゲイじゃないかと言われてね、違うと言わなかった事が原因で袋叩きになってね。気持ち悪いと殴られたんだ。彼らの仲間の誰かをを好きなわけでもないのにさ。
20歳で、親に正直にゲイだと言ったらさ、母親からやめてくれと泣かれてね。
好きな相手が同性だった。それだけで、まるで犯罪者かというような目で見られてきたんだ。ニューヨークに来るまで地獄だった。
「ゲイってことやめれるなら、俺が一番最初にやめてる」
15年くらい前の出来事です。でも本当にその時のこと鮮明に覚えてます。レンがじっと床見てて。私も彼の悲しみを共有しました。友情が深まった瞬間でもあったんだと思います。
人を好きになる。その自由で尊重されるべきことで苦しんできた人がいる。そういう苦しみを、ゲイの人に差別はなかったつもりだったけどやっぱり全然わかってなかったんだな、とその時、心から反省しました。
レンは長年連れ添った人と今も幸せに暮らしています。
日本にも(最低限の)LGBT法案を通したい、とゲイの友人からお願いされて、私も賛同して発起人になりました。今、理解されず反対されてる人も多くいるのが実情です。法案も通るか通らないかぎりぎりのところだそうです。
一人でも多くの署名があれば、法案ができること、後押しされると思います。
苦しんで自殺するような人がもう出ませんように。
(2016年10月5日「犬も歩けば どこかにあたる」より転載)