朴槿恵・韓国大統領が日中韓の「共同歴史教科書」を提案、その意図は?

韓国の朴槿恵大統領が、北東アジアの共同の歴史教科書を編さんすることを提案した。この発言の背景にある考えは何か。
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BRUSSELS, BELGIUM - NOVEMBER 8: South Korea's President Park Geun-hye talks during a media conference at the European Council building on November 8, 2103 in Brussels. South Korea's President Park Geun-hye is on a week long trip to France, Britain and Belgium, meeting with Belgian and EU officials. (Photo By Dursun Aydemir/Anadolu Agency/Getty Images)
Anadolu Agency via Getty Images

韓国の朴槿恵大統領が、北東アジアの共同の歴史教科書を編さんすることを提案した。

朴大統領は11月14日、韓国の外交官を育成する国立外交院の行事で演説し、日中韓共同歴史教科書を発刊することが、歴史や領土問題によって対立している状況を改善させ、平和を促進するための方法としてふさわしいと話した。47NEWSが報じた。

朴氏はフランスとドイツなどが共同で歴史教科書をつくったことを例に挙げ、北東アジアでも共同で教科書を発行すれば、国家間の協力や対話を強化できるとした。朴氏は北東アジアでは歴史観が異なっていることによる不信が強まり、「衝突の素地も高まっている」と述べた。

(47NEWS「北東アジア共同の歴史教科書提案 韓国大統領、日中韓念頭に」より 2013/11/14 12:58)

朴大統領はこの演説のなかで、「共同教科書」を提案する理由として、北東アジアにおける多国間連携の必要性をあげた。北東アジアでも、EUのような体制をつくることで、経済がさらに発展するという独自の考えだ。演説の一部を紹介しよう。

私は新政府の発足を機に、北東アジアを信頼と協力の場に変えるため、「北東アジアの平和協力構想」を提唱しました。

私が提案してきた北東アジアの平和協力構想は、地域の国々がちょっとした協力から始め、お互いに信頼できる経験を蓄積し、さらにそれを拡散させ、不信と対立を緩和するというものです。核問題をはじめ、環境問題への対応や自然災害への対応、サイバー協力、資金洗浄防止などから始め、対話と協力を蓄積し、さらにその範囲を広げていくというものです。

このような過程が進むに従って、究極的にはヨーロッパの経験のように、最も敏感な問題も論議できる時期が来ると確信しています。

私は、北東アジアの平和協力のために、まず、地域の国々が、北東アジアの未来に対する認識を共有しなければならないと思います。目的を共有しなければ、小さな違いも克服できません。

しかし、目的が同じであればその差を克服することができるのです。ドイツとフランス、ドイツとポーランドがやったように、北東アジア共同の歴史教科書を発刊することにより、東西欧州がそうだったように、協力と対話が、蓄積されるかもしれないのです。

対立と不信の根源である「歴史問題の壁」が、崩壊する日が来るかもしれません。

北東アジアの平和協力に向けて、北東アジアは開放された場所になるべきだと思います。単なる北東アジアではなく、世界の中の北東アジアとなるべきなのです。世界とともに汗を流し、世界の平和と発展に寄与する北東アジアとなるべきなのです。

それは北東アジアが持続的に成長していく秘訣にもなることです。また、北東アジアの葛藤と対立はあくまで平和的な方法で解決されるべきものです。

軍事的手段が動員されることがこの地域で二度とあってはなりません。私たちはお互いの政策意図を透明にして、国家間に信頼をもたらす様々な措置を通じて、軍事的紛争を予防しなければなりません。

(KTV「北東アジアの未来の認識の共有···共同歴史教科書発行」より 2013/11/14 11:00)

一方、日本では文部科学省が、現行の小中高校「社会科教科書」の検定基準について、見直しをはじめている。13日には、歴史的事実について政府の見解がある場合は、それらを踏まえた教科書の記述を求めることを「明確化する」方針を固めた。

新たな検定基準では、尖閣諸島(沖縄県石垣市)や竹島(島根県隠岐の島町)など領土に関わる問題、慰安婦や南京事件など歴史問題、自衛隊の位置づけなどについて、(1)政府見解や確定判決があれば、それを踏まえた記述をする(2)通説的な見解がない場合は特定の見解だけを強調せずバランスよく記述する-とした。

歴史などの教科書をめぐっては、南京事件の犠牲者数で誇大な数字が挙げられるなど、検定のたびに偏った記述が指摘されていた。慰安婦問題の記述でも、戦後補償は解決済みであるとする政府見解が書かれていないケースがあった。

(MSN産経ニュース「教科書検定基準見直しへ 文科省、領土や歴史認識…政府見解を反映」より 2013/11/14 00:12)

現在日本の教科書検定制度では、教科書会社が編集した教科書の記述が客観的な内容となっているかなどの点を、文部科学省が審査している。この教科書検定の中に「近隣諸国条項」というものがあり、アジア諸国との近現代の歴史的事象についての記述は、配慮したものにするよう定めている。

安倍首相は昨年の衆院選において、「近隣諸国条項」の撤廃を公約に掲げている。自民党教育再生実行本部の特別部会は今年6月、「多くの教科書は自虐史観に立つなど問題となる記述が存在する」と指摘したが、文科省は「近隣諸国条項」については当面の検討課題として、今回は見直さないとしている。

依然として、日韓両国の間では、歴史認識に深い溝が存在していますが、あなたは朴大統領の「北東アジア構想」についてどう考えますか?ご意見をお寄せ下さい。

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