受動喫煙防止にむけ、恥ずかしくない政治決断を

自民党議連の「表示さえしていれば、望まない受動喫煙から人々を守ることができる」というのは、きわめて甘い考え方ですよ。

2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けて、厚生労働省は受動喫煙の防止対策を強化すると宣言しています。

近年のオリンピック開催国をはじめとする諸外国に比べ、日本の対策が遅れていることが理由です。現状では、世界保健機関(WHO)の4段階評価において、日本の喫煙環境は「最低レベル」に分類されています。まあ、そろそろ努力義務というよりは、実効性の高い制度へと高めた方がよさそうですね。

個人が自宅でタバコを嗜むことについて、とやかく言うつもりはありません。私自身、受動喫煙は気になりませんし、かなり寛容なほうです。ただ、タバコの臭いが嫌い・・・、嫌悪に近いほど不愉快という人たちが沢山います。この時点で、もはや公共の場所における喫煙が容認されないのは明らかだと思うんです。しかも、受動喫煙による健康被害が明らかであるなら、さすがに妥協の余地はないでしょう。

愛煙家は、あきらめて自宅(もしくは周囲への影響がまったくない屋外)での嗜みに切り替えた方がいいですよ。他人の迷惑を顧みることなく、喫煙場所の確保にしがみついてるから、「中毒者」などと憐れまれてしまうんです。冷静に考えれば、屋内での完全な分煙など不可能なわけだし、ここは謙虚になった方がいいんじゃないでしょうか?

家庭内における受動喫煙も課題ではあります。放置すべきではありません。ただ、こちらへの行政による介入は、慎重であるべきだと私は考えます。あくまで家庭内の問題であり、ほとんどの場合、家庭内で解決されるべきことです。それが上手くいかない家庭については、ソフトなサポートを充実させてゆきましょう。嫌煙派の方々も、あまり踏み込みすぎないようにしてほしいですね。

塩崎大臣も「公共の福祉に反しない限り、喫煙の自由はある」(参院予算委員会)と認めています。いま問題となっているのは、この自由の行使が、学校や病院など公共の空間を汚染しているということ。そして、飲食店において、タバコを吸わない他の客やアルバイトの店員への配慮を欠いたものになっていること。ここは明確にしておきたいと思います。

というわけで、厚労省が昨年10月に提示した法案の「たたき台」では、主な公共施設を建物内完全禁煙とし、飲食店などでは原則建物内禁煙としたうえで、煙が外部に流出しない喫煙室の設置を認め、違反者が勧告や命令に従わない場合には、罰則を適用するとなっていました。

ただ、このたたき台に対して、自民党の一部の議員から反発が噴出します。そこで、厚労省は今年の3月になって、面積の小さい店舗を禁煙の対象としないなど、この法案を緩和させました。

ところが、それでも約280人のメンバーを抱える自民党たばこ議連の反発は収まりません。今月になって、学校や医療機関での分煙を認め、飲食店では「喫煙」「分煙」などのステッカー表示で店内での喫煙を認めるとした対案をとりまとめ、自民党の厚労部会で厚労省にぶつけてきました。

でもですね、「表示さえしていれば、望まない受動喫煙から人々を守ることができる」というのは、きわめて甘い考え方ですよ。想像力が欠落しているのか、分かっていてごまかしているのか・・・。

よほど厳格な嫌煙者でない限り、価格やメニュー、サービスの内容などを優先させて飲食店を選ぶことはあるものです。あるいは、上司や取引先に連れられて、親族や友人との付き合いを優先せざるをえないこともあるでしょう。そんなときに、本当は望んでいなかった受動喫煙が起きてしまうのです。

やっぱり、飲食店内は禁煙と義務づけておくべきじゃないでしょうか? これが一番確実な方法です。自民党議連の緩い対案に厚労省が押し切られるかどうか、いま、受動喫煙対策は重要な岐路にあります。ごまかしなく冷静で、かつ建設的な議論へと高めてほしいと思います。メディアも(ヤジごときに注目するのではなく)粘り強く、この問題の本質を報じていただきたい。

今週、大学、医療機関、企業などの個人の発起人が集まって、厚労省案を支持する「たばこ煙害死なくそう」の声明を公表しました。私も厚労省案を支持しているので、この声明の発起人となりました。この声明をきっかけにして議論が盛り上がればいいですね。このチャンスを活かし、法案を尻すぼみにさせないことが何より大切です。

そして、最後には、先進国として恥ずかしくない「人権と科学のバランスがとれた結論」へと、国民の側を向いた政治によって決断いただけるものと信じています。