ここは日本だ。決めさえすれば、必ず間に合う。

「国立競技場将来構想有識者会議」で、新国立競技場の総工費2,520億円が了承された。
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「国立競技場将来構想有識者会議」で、新国立競技場の総工費2,520億円が了承された。

芥川賞受賞者の平野啓一郎さんがつぶやいておられた言葉が体に突き刺さる。

「次世代の絶望を想像できないのか」

市民がおかしいと叫んでいるのに、それがまかり通る。

何が問題なのか。

それは「誰も責任をとらなくていい」ことになっていることだ。

私は、文部科学省と、整備と資金調達を担う文科省所管の独立行政法人であるJSC(日本スポーツ振興センター)に直接問い合わせた。

出てきたのが次の図だ。

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「キールアーチ」構造という「特殊性」のゆえに建設費が高くなったと報道されているが、コスト増加要因の中で一番大きいのが、765億円におよぶ「新国立競技場の特殊性」だ。

内訳として「屋根鉄骨」「スタンド鉄骨」「内外装」「大量の建設発生土」が列挙されている。

そこで、それぞれの金額を具体的に聞いてみたところ、なんと全く答えられなかった。

信じられないかもしれないが、本当に、答えられないのだ。

それはおかしいだろうと、さらに質問していくと、実はこの765億円、昨年5月に決めた1,620億円と、建設予定者であるゼネコンに入ってもらって新たに算出した2,520億円との差額のうち、消費税増税分(40億円)や資材・労務費の高騰分(350億円)では説明できない「残差」の部分だという。

つまりこの756億円は、ゼネコンが必要だと認めた総工費のうち、増加について明確な説明ができないところに、単に「特殊性」という都合のいい理由をつけた金額に過ぎないのである。

さらに、「開閉式屋根」「電動式可動席」「芝育成補助システム」の予算はこれに入っていない。それを加えれば3000億円近くに膨らむだろうと言われている。

私は聞いた。

「最高責任者は一体誰なのか?」と。

文科省はJSCと言い、JSCは文科省だと言う。

ちょっと待ってほしい。

2020年の東京オリンピック関連の施設は、新国立競技場だけではない。様々なインフラ整備をこれから2020年までに実施していかなくてはならない。

しかし、新国立競技場の建設だけ見ても、文科省、JSC、東京都の責任関係が不明確であるのに、他のインフラ施設や恒久施設については、東京都のオリパラ準備局、港湾局、都市整備局が担当することになっている。

さらに、仮設施設やオーバーレイなどの整備は、東京オリパラ組織委員会(TOCOG)の担当となっている。

安倍政権がすぐにやらなければいけないのは、これらの組織を束ね、オリンピック・パラリンピック関連施設やインフラ整備を一体的に把握して、総合的なプロジェクト管理をする組織をつくることだ。

整備計画や予算の一元的コントロールを行う司令塔を作り、予算執行の責任者を早急に決めて欲しい。

このままでは、「時間がないから進むしかありません」といった言い訳が各所からあがり、誰も責任をとらないまま、想像を絶する巨額の投資に突き進まざるを得なくなる。

承認された以上、今からやり直しできるのは、安倍総理しかいない。

増加理由について回答さえできない予算は、放置すればさらに膨れ上がる可能性もある。

例えば、そのうちの500億でも使えば、かなりの効果が期待できる政策がある。貧困家庭への教育支援、いじめ根絶、自殺防止、介護職員の待遇改善...

確かに地味かもしれない。効果が目に見えるまでに時間がかかる。だが、屋根よりも『人』の苦しみに、未来に、投資して欲しい。

私も財務省出身だ。大きな組織を動かすのは難しいのは身にしみてわかる。

しかし、まだ5年ある。

総理は、資料の備考に小さく書いてある、「改築後50年間に必要な大規模改修費を試算したところ、約1,046億円」は読まれたのだろうか?

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単純に50年で割ると毎年20億9,200万円の費用が追加で必要になる。

それを引き受ける民間企業が出てくるのか?

安倍総理、今からでも遅くない。

自民党の若手のみなさん、せめてこれには声は出せませんか?

やり直しましょう。

そして、オリンピック、パラリンピックを成功させましょう。

そのための協力は、惜しまないつもりです。

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