政府は7月21日、2015年度版の防衛白書を発表した。今回の防衛白書は、中国の動向や軍事情勢についての新たな記述を増やし、批判を強めたのが特徴。集団的自衛権の行使容認を閣議決定した安倍政権が、中国への警戒感を一段と強めていることをうかがわせる。
中国についての主な新しい記述は以下の通り。
・中国の東シナ海でのガス田開発
・中国の海洋進出を「自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢」と批判
・中国が「南沙諸島にある7つの岩礁で急速かつ大規模な埋め立て活動を強行」と批判
・中国が海空軍などを統合運用するための「東シナ海統合作戦指揮センター」を新設と指摘
・中国国内の反腐敗運動の内容を紹介
・日中の外務・防衛当局間による「海空連絡メカニズム」の早期運用開始
■自民部会「中国の活動に関する記述が少ない」
このうち、中国の東シナ海でのガス田開発をめぐっては、自民党国防部会(佐藤正久部会長)が7日、「中国の活動に関する記述が少ない」と批判し、防衛白書の了承をいったん見送った。そして、防衛省に中国のガス田開発についての記述を加筆させ、16日の同部会で改めて了承した経緯がある。
この加筆された箇所は、「中国は2013年6月以降には、東シナ海の日中中間線の中国側において、既存のものに加え、新たな海洋プラットホームの建設作業などを進めている」と指摘。「中国側が一方的な開発を進めていることに対して、わが国から繰り返し抗議をすると同時に、作業の中止などを求めている」と記された。
中谷元(げん)防衛相は10日の衆院平和安全法制特別委員会で、この掘削のための新たな海洋プラットホームに中国が軍事レーダーを配備する可能性があると指摘した。
また、南シナ海などでの中国の海洋進出についても、これまでの防衛白書では「高圧的とも言える対応を示している」との表現にとどまっていたが、今回の白書では「高圧的とも言える対応を継続させ、自らの一方的な主張を妥協なく実現しようとする姿勢」と記述を増やし、警戒感を募らせている。
■中国の国防費「過去27年間で約41倍」
中国の公表国防費については、「引き続き速いペースで増加している」と強調。「名目上の規模は、過去27年間で約41倍、過去10年間で約3.6倍となっている」と指摘した。
世論の反発が強い集団的自衛権の行使容認については、日本を取り巻く安全保障環境の変化を指摘したうえで、「今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様などによっては、わが国の存立を脅かすことも現実に起こり得る」とし、行使容認の必要性を強調した。
このほか、シリアやイラクの混迷に乗じて勢力を拡大してきたIS(イスラム国)など、国際テロ組織については、「先進国においてもテロ発生のリスクが増大しており、わが国とも無縁とは言えない状況が起きている」と記した。
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