日本とドイツ、フランスとが受注を競うオーストラリアの次期潜水艦の共同開発事業について、有力紙オーストラリアン(電子版)は4月21日、海上自衛隊の「そうりゅう」型の日本案が受注する可能性が「最も弱い」とみられると報じた。オーストラリア放送協会(ABC)も20日に日本が「候補から外れた」と伝えるなど、官民を挙げて受注を目指してきたが日本劣勢の報道が相次いでいる。
オーストラリアン紙によると、主要閣僚らで構成する国家安全保障会議(NSC)が19日から正式な検討に着手しているが、フランス造船大手DCNSの案が最有力のもようという。日本政府高官は同紙に対し「日本の潜水艦は自信の持てるものだが、武器輸出の経験に乏しく、ドイツとフランスに比べると受注には弱い立場かもしれない」と話した。さらに、日本が受注できなければ、緊密な日豪の防衛関係に影を落とすもしれないと指摘している。
また、ABCの報道について、産経ニュースは「日本側に『熱意が欠けていた』ことを懸念したとした」などと次のように報じた。
同放送は、19日夜に開催されたNSCのこの決定が、「最終判断かは不明」ともしている。日本が脱落した根拠として、豪州政府担当者らが、入札で日本側に「熱意が欠けていた」ことを懸念したとした。
調達をめぐっては、米国政府の元高官らが、同じ同盟国である日本からの調達を推していた。だが、同放送は、オバマ米大統領が、調達は「主権」に従いなされるものだと、ターンブル豪首相に確約したことにも言及した。
(【豪次期潜水艦】日本が脱落か 入札で「熱意が欠けていた」と地元メディア - 産経ニュースより 2016/04/20 15:48)
オーストラリア政府は次期潜水艦を12隻調達する計画で、費用は設計や開発だけで500億オーストラリアドル(約4兆2700億円)かかり、オーストラリア史上最大の防衛装備品調達となる。
実現すれば、日本にとって過去最大規模の防衛装備品受注となる。製造を手がける三菱重工業は15日、シドニーに現地法人を設立。宮永俊一社長は談話で、日本の潜水艦受注が「(豪州の)さまざまな産業にイノベーションの波をもたらす」と訴えた。
(【豪次期潜水艦】豪州と共同訓練でそうりゅう型の実力誇示 日本の売り込み大詰め、総選挙控え雇用アピール - 産経ニュースより 2016/04/19 17:57)
オーストラリア政府は選定過程を一切明らかにしていない。ターンブル首相は20日のラジオ番組で「近く発表する」と話しており、来週にも発表されるとの観測が強まっているという。
安倍政権は2014年に武器輸出三原則を緩和し、大型武器輸出を解禁しており、時事ドットコムニュースは日本が受注できなかった場合について「関係が良好な豪州への潜水艦供与を足掛かりとして期待していただけに、戦略再考を迫られそうだ」と報じている。菅義偉官房長官は20日の記者会見で、日本の受注が難しくなったとする一部報道について、「承知している」とし「政府としては最善の努力をすることに尽きる」と述べた。
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