PRESENTED BY FACT FASHION

医療×衣料で目指す、誰もがファッションを楽しめる社会。業界の垣根を越えてできること

皮膚疾患の乾癬患者さんがもっと心からおしゃれを楽しめるように——。そんな想いを胸に立ち上がった服作りプロジェクト「FACT FASHION」。患者さんで乾癬啓発普及団体の理事、皮膚科医、ファッションデザイナーがそれぞれの想いを語ります。「医療×衣料」を通じた、社会課題への問題提起や解決への新しい糸口も見えてきました。
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(左から)近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授で、アトピーや乾癬が専門の大塚篤司先生。一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD乾癬啓発普及協会理事の山下織江氏。株式会社MAISON SPECIALの玉井秀樹氏。
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乾癬(かんせん)という皮膚疾患を伝えるために生まれたアパレルブランド「FACT FASHION(ファクトファッション)」。製薬会社であるヤンセンファーマ株式会社のプロジェクトに、乾癬の患者会、アパレルメーカーや医師らが賛同し、患者さんの悩みに寄り添う新しい衣服ができあがりました。それぞれがプロジェクトに対してどんな想いをもっているのでしょうか。連載の最終回は、業界や属性といった垣根を超えて課題解決に取り組むプロジェクトメンバーたちの声を、座談会形式で紹介します。

乾癬は周囲のサポートや理解も必要な疾患

━━大塚先生、乾癬とはどのような疾患ですか?

大塚篤司先生(以下、大塚) 乾癬は皮膚に赤い斑点=紅斑(こうはん)や白いかさぶたのようなものができる疾患です。頭や腕やすね、爪に出るケースもあります。関節炎を発症する方もいて、指先がこわばって動かしにくいという患者さんもいます。

現在は研究が進み、「Th17」という細胞が乾癬の病態に重要な働きをしているということが分かっています。

━━乾癬は10代から発症するケースもあるそうですね。山下さんは何歳で乾癬を発症したのでしょうか。

山下織江さん(以下、山下) 10代の初めに乾癬を発症しました。頭皮に症状が出たのが最初です。鱗屑(りんせつ)と呼ばれる皮膚片が大量に落ちてくるので、紺色の制服を着るのがとても嫌でした。いつも肩や背中に皮膚片が落ちていないか気にしていました。スカートやノースリーブも選びたかったのですが、自分を隠すことに一生懸命になっていました。

それに乾癬という音の響きから「感染」するというイメージをもつのか、うつる病気だと思われることもありました。乾癬は皮膚症状だけではなく、精神的にも辛い疾患です。周囲のサポートや理解が必要です。

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━━職場や学校でも周囲の目が気になり、精神的に追い込まれる方もいると聞きます。

山下 そうですね、精神的にダメージを受けて治療に積極的になれないという患者さんもいらっしゃいます。

大塚 私は今、皮膚病の患者さんへの調査をおこなっているのですが、皮膚疾患があると、無意識に自分の行動に制限をかけてしまうことが分かっています。病気に対して自分の生活を合わせてしまっている状態ですね。乾癬の患者さんは無意識のうちに自分が着られる服を選んでしまっている。そうした「気づかないうちに不自由になっていること」を解決する必要があると思っています。

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ファッションを通じた、社会課題へのアプローチ

━━人や社会にまつわる課題をファッションを通じて問題提起や解決する。玉井さんはどう考えますか?

玉井秀樹さん(以下、玉井) MAISON SPECIALはおしゃれ、かっこいいだけではない「意味のある服」を作りたいと思ってブランドを運営しています。多様性や環境を意識した服作りもその一つで、自閉症の方が描いたアートをプリントした服や古着をリメイクした服などを発表してきました。

━━「FACT FASHION」のオファーに、どんなことを感じましたか?

玉井 乾癬の患者さんの声を起点に洋服を作ることに魅力を感じました。「FACT FASHION」は、衣服を通じて乾癬の認知や正しい理解の促進を目指すプロジェクトです。患者さんだけではなく、多くの人に見てもらえる、手に取ってもらえるデザインにしています。

一番のポイントはデザインと機能を併せもつ服だということ。「インサイドアウト」がキーワードで、例えば縫いしろが肌にあたらないよう外に出したり、ポケットの内側を外に出したりしています。素材も滑りのよいナイロン生地で鱗屑を落ちやすくしました。デザインのポイントにもなっています。

関節炎で痛みがある患者さんは、シャツのボタンを留めることが大変だと聞いたので、ボタンやボタンホールを少し大きめにデザインしました。

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2022年2月発売のインサイドアウトプライムオーバーバイカラーバンドカラーシャツ。
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━━山下さんと大塚先生は2020年発売の「FACT FASHION」の服を着ています。着心地はいかがでしょうか?

山下 肩から背中にかけてツルツルの生地で皮膚片がつかず、安心して着ることができます。普段洋服を着ると、首の後ろのタグが肌にあたりチクチクすることがあるのですが、今着ているシャツワンピースはタグが裾のほうについているので心配ないですね。

大塚 私の着ているジャケットも肩にフケがつきにくい仕様になっています。乾癬の患者さんは鱗屑の悩みを抱えている方が多いので、こうしたファッションを選べるのは大きな進歩だと思います。

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2020年発売のNEW BASIC SHIRT DRESS。
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NEW BASIC SHIRT DRESSのタグは裾に縫いつけている。
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2020年発売のWOOL 0.00% JACKET。
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━━2月発売のアイテムは乾癬患者さんだけではなく、皆にとっておしゃれな服だと感じます。玉井さんは服作りを通してどんな気づきがありましたか?

玉井 機能性の高さをデザインに落とし込めることが大きな気づきでした。でも、僕らがデザインに落とし込めると思ったことが、患者さんには不便なこともありました。デザインと機能性のバランス感覚は今後の服作りに生かしたいですね。

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業界の垣根を越えて課題解決に取り組む「FACT FASHION」

━━「ファッション×医療」はどのように広がると思いますか?

大塚 ファッションを入り口にした医療はとても新しい取り組みです。私は様々な業界で活躍されている方と組んで医療情報を発信していますが、違った職業の方とコラボすると、これまで情報が届かなかった人にも届けられることがわかりました。ファッションが好きな人が乾癬という病気について知るきっかけになると思います。

玉井 僕も可能性を感じています。ビビッドなカラーの服を着ると元気が湧くように、乾癬の患者さんだけではなく、あらゆる課題を抱える人が前向きになるような服作りを続けたいです。

山下 皮膚に負担がなく、安心しておしゃれができるのは本当に嬉しいことです。海外の乾癬患者さんに向けて「FACT FASHION」を発信すると、大きな反響がありました。このプロジェクトを世界に広げられたら素晴らしいと思っています。

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乾癬患者さんの声から生まれたアパレルブランド「FACT FASHION」。患者さん、アパレルメーカー、ファッションディレクター、皮膚科医と、プロジェクトに関わる様々な方にお話を伺い、プロジェクトの背景や込められた想いを全6回の連載でお届けしました。

「FACT FASHION」を通じて、患者さんの衣服への悩みが解消されるだけではなく、乾癬への正しい理解を促し、患者さんが抱える精神的な負担も軽減される。そして患者さんをはじめ、誰もがもっと自由にファッションを楽しめる、そんな未来をプロジェクトチームは目指しています。

2022年2月4日発売の「FACT FASHION」のアイテムについてはこちら

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(文:国分瑠衣子)