一夜でネットアンチを跳ね返したジャルジャル  「誰も傷つけず、老若男女が楽しめる」笑いとは?

松本人志、大絶賛。
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時事通信社

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一夜でネットアンチを跳ね返したジャルジャルの底力

 年末恒例のお笑い界の一大イベント『M‐1グランプリ2017』(テレビ朝日系)が終了し、新たなお笑い地殻変動が起こっている。優勝したとろサーモンと準優勝の和牛に注目が集まる一方、6位に終わったジャルジャルも高評価を集めた。審査員の松本人志が最高得点95点を付け、「(僕が)あの日一番おもろかったのはジャルジャル」(『ワイドナショー』フジテレビ系)と明かしたことを筆頭に、ジャルジャルに称賛の声が相次いだ。ネットでは"アンチ"も多い彼らだが、今回のパフォーマンスが、その"ネットアンチ"ですら一夜にして黙らせることになった。そんな彼らの芸人としての底力とは?

■M-1敗退するも松本人志らお笑い芸人が絶賛

 M‐1グランプリで披露されたジャルジャルのネタは「ピンポンゲーム」と題されたもので、校内放送のチャイム「ピンポンパンポン♪」の音をネタに笑わせるもの。審査員の松本人志は「あれ以上いくと漫才ではなく曲(芸)になってしまう。ギリギリの設定が意見の分かれるところ。僕はバッチリ」と評した。さらに松本の次に高得点(93点)を付けたオール巨人も、「今日のM-1はベタなネタが多い中、新しいネタに挑戦してる姿勢が大好き。見てるほうが理解しないと笑えないネタやけど、すごく面白かったと思う」と大絶賛。後半のたたみかけるような丁々発止のやりとりを、漫才師ならではの気迫でリズミカルに披露した。松本は敗退の原因を前述の『ワイドナショー』では「感心させてしまった」と評した。

 たしかにネタ自体は初見で理解するには少し難解でもあり、見る人によってはまったく笑えない内容かもしれないが、一般視聴者にもその面白さは伝わっていたようだ。この漫才はネタでありながら、お笑い芸人でなくても楽しめる非常にエキサイティングな"ゲーム"でもある。SNSやYouTube上でも「ジャルジャルのピンポンパンポンゲームをやってみた」という投稿も続出するほど、ネット上で盛り上がりを見せたのだ。

■芸人の実力は折り紙付きだが...なぜかネットでのアンチが多い

 しかし、ジャルジャルと言えば、好き嫌いがはっきり分かれる"ネットアンチ"が多い芸人でもある。「『メチャ?イケてるッ!』(フジテレビ系)に"なぜか"レギュラー出演しているコンビ」と揶揄されたりするほか、かつての金髪スタイルや「よしもとおしゃれ芸人ランキング」で後藤淳平が1位になるなど、女性ファンの多さやアイドル的人気のイメージが先行することもその要因。だから、今回のM‐1グランプリにおける高評価を"意外"とする視聴者も多かったのである。

 だが、ジャルジャルは2005年のBGO上方笑演芸大賞新人賞をはじめ、2008年ABCお笑い新人グランプリ 優秀新人賞を獲得するなど、これまでに数多くの賞を受賞しており、漫才師としての実力は折り紙つき。そして2015年には、M-1グランプリの第一ラウンドで最高得点となる834点をたたき出しているのである(最終結果は3位)。だが、この2015年のM‐1グランプリあたりから徐々に視聴者の"好き・嫌い"が分かれていく。ジャルジャル独自のWボケや計算された繰り返しネタなど、新しい笑いを追求するネタの斬新さゆえに"笑い"以前に「理解できる・できない」といった話に発展することも。結果「全然面白くない」としてSNSでアンチから批判が飛ぶことに。また、『めちゃイケ』などで見せる"生意気キャラ"も、火に油を注ぐ結果となってしまい、やがてハッキリと"ネットアンチ"の層の存在が広く知られるようになっていく。

■ひな壇バラエティが不得手なのは事実、だがそのトークスキルは大化けする可能性も

 漫才師としての実力は知られるジャルジャルだが、弱点もある。2010年から7年間レギュラー出演している『めちゃイケ』でも、正直あまり存在感を発揮できず、1カ月間出演がないことさえあったと、『エゴサーチ』(abemaTV)で明かしていた。また、後藤は「向いてなかった」「とにかく埋もれる、埋もれ上手」とも語っている。昨今のバラエティ番組では、多数のひな壇芸人が出演する構成の番組が増えているが、グイグイ前に出ていくタイプではない彼らにとっては現在の"ひな壇芸人フォーマット"の番組は不得手と言えるだろう。

 そうなると、ジャルジャルは漫才の実力は高いが、バラエティ番組ではそれを活かせないコンビということになってしまうが、そんなことはない。テレビ東京系のバラエティ番組『ざっくりハイタッチ』(2012~2013年)では、またふたりの違った魅力を発揮していた。番組は、千原ジュニア、小藪千豊、フットボールアワー後藤輝基・岩尾望がゲストを招いて、ロケバス車中のトークから企画に移るというのがお決まりの構成だが、ジャルジャルが出演する回は、先輩芸人にも臆せずアドリブでトークを繰り広げるという内容のもの。ジャルジャルの福徳秀介が小藪に食ってかかったり、ジャルジャル・後藤とフットボールアワー・後藤輝基が「同じ後藤なのに!」と揉めたりするが、最後は和解するという"キレキュン"トークが毎回のお決まりだった。ジャルジャルはたびたび番組のゲストとして出演し、ネットでは先輩芸人たちとのやりとりが"神回"と言われることもあった。

 しっかりとジャルジャル自体にスポットが当たる作りの番組では、先輩のフォローや、合いの手は外さず、持ち前のトークスキルをいかんなく発揮し結果を残している。アドリブでそれだけ笑いを生み出せるというのも、やはりジャルジャルがただの個性派漫才コンビではないことの証明なのである。

■実力を示し一夜にしてネットアンチを黙らせる

 そして、今回のM‐1グランプリでの高評価。同業のお笑い芸人からもラジオやSNSでジャルジャルを絶賛する意見が相次ぎ、6位に敗退しつつも、大会終了後にジャルジャルが株を上げる結果となった。ほかにも、大会終了後直後に出演した動画サイト『GYAO!』の番組で、M-1ファイナリストが負けた敗因を語り合うという企画で、福徳が号泣したことがネットニュースでも多数報じられた。

 先述の『エゴサーチ』で、改めてその時の想いを告白。福徳は、「現時点での最高のネタが出来たと思った。誰も傷つけず、老若男女が楽しめて、平和で、絶対に誰もが笑うネタが出来たと思った」と明かした。そのネタが通用しなかったことに、悔しさよりも悲しさを感じたという。「18年間付き合ってきて、ラグビー部の引退試合でも泣かなかったのに、始めて泣いているところを見た」と相方である後藤が明かし、話題を呼んだ。

 これまで何となく"もやっとしたアイドル系芸人"ぐらいにしか思っていなかった視聴者たちも、こういった一連のネットでの盛り上がりを目の当たりにしてジャルジャルのお笑いにかける情熱や真摯な姿勢に共感し、ネットアンチ層までも手の平を返したように「ジャルジャルってこんなに面白かったのか!」と再評価しはじめたのである。まさに、一夜のパフォーマンスでアンチを黙らせる結果となった。

 『めちゃイケ』はじめ、出演するレギュラー番組が立て続けに終了が決定するということも"アンチ"からいじられていたジャルジャル。しかし、バラエティ番組よりもネタ番組で本領を発揮できるだけに、新たなフィールドでさらなる実力を示すチャンスでもあるはずだ。年末年始のお笑い特番や、来年2018年の新展開による"ジャルジャルの大逆襲"を見守りたい。

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