「電動キックボード」を運転中に衝突・転倒した場合、頭部にはどれくらいの衝撃があるのだろうかーー。
電動キックボードを巡っては、7月1日から交通ルールが一部緩和され、街中でも運転する人の姿をたびたび見かけるようになった。
一方、飲酒運転による事故も報道されており、一層の交通ルール徹底が求められている。
今回の実験では、ヘルメット着用の有無が生死を分ける現実が浮かび上がった。
酒を飲んで運転相次ぐ
政府インターネットテレビの動画「乗るのはルールを知ってから!」によると、電動キックボードはこれまで、いわゆる「原付バイク」と呼ばれる「原動機付自転車」と同じ扱いだった。
道路交通法改正により、7月1日から16歳以上は免許不要、ヘルメットは努力義務になるなど、ルールが一部緩和された。
もちろん、交通ルールを守らずに違反をすれば、これまでの原付と同じように罰則が適用される。
飲酒運転や2人乗り、スマホを見ながらなどの「ながら走行」は禁止だ。
縁石に衝突してこけた場合は?
JAFは今回、街中で遭遇しそうな交通場面を再現し、走行速度やヘルメットの有無によって、衝突・転倒時の危険度がどう変化するのか実験した。
まず、ダミー人形を乗せた電動キックボードを時速20キロでけん引し、高さ10センチの縁石に衝突させたケースだ。
危険度は、頭部損傷値(HIC値)で計測。「Head Injury Criterion」の略で、値が1000を超えると脳傷害の可能性があり、3000を超えると非常に高い確率で重篤な傷害が発生する。
その結果、ヘルメット着用時は1231.8、非着用時は7766.2となり、非着用時は着用時に比べ、重篤な頭部損傷・死亡するリスクが高いことがわかった。
車に衝突した場合は?
次に、ダミー人形を乗せた電動キックボードを時速20キロでけん引し、静止している自動車に衝突させた。
ヘルメット着用時、車に当たった「一次衝突」のHIC値は19.7、当たった反動で地面に叩きつけられた「二次衝突」は147.9と、いずれも1000を下回った。
非着用時は、「一次衝突」は12.8と低かったが、「二次衝突」は6346.3となり、着用時の43倍の値となった。
一次衝突は、腕から当たったため、低い値となったとみられるという。
フロントガラスに蜘蛛の巣状のヒビが…
では、頭部から自動車に衝突する事故ではどうだろうか。
フロントガラスにダミー人形の頭部(4.5キロ)を高さ1.6メートルの位置から落とし、時速20キロでフロントガラスに直接頭部が衝突した衝撃を再現した。
すると、フロントガラスに蜘蛛の巣状のヒビが広がるほどの衝撃があり、頭蓋骨骨折や脳損傷、死亡のリスクが高いことがわかった。
JAFは、電動キックボードは気軽に乗れる便利な乗り物だが、走行中に転倒して頭を地面に打ちつけた場合、重篤な頭部障害や死亡事故につながるとしている。
その上で、頭部を保護するヘルメットの着用は重要だとし、「免許なしで運転できるからこそ、ひとりひとりが交通ルールやマナーを守り、思いやりの心を持った運転を心がけてほしい」と呼びかけた。