日本テレビの人気バラエティー番組「世界の果てまでイッテQ!」の「祭り企画」にやらせ疑惑が浮上していた問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会は7月5日、「程度は重いとは言えないものの放送倫理違反があったと言わざるを得ない」とする意見を公表した。
■「ガチンコ勝負」に傾きすぎて…
委員会は、問題が指摘されていた「ラオス・橋祭り」と「タイ・カリフラワー祭り」の2つの「祭り」は、番組のために用意したものであったと認定した。
この祭りの提案やロケの設定は、ベテランの現地コーディネーターに任せており、番組スタッフは、祭りが番組のために準備されたものであることを把握していなかった。
委員会は意見書の中で、「(視聴者は)『祭り』は地域にもともとある催しであり、いつも本気で挑戦する芸人が今回もまた体当たりで参加していると思い、その奮闘に満足し拍手を送ったことだろう」と、番組スタッフが意図的に作った祭りではないとしても、「制作過程の重要な部分を制作者側が把握していなかった点」に問題があったとした。
「放送内容に責任を持つのはコーディネーターではなく、放送局である」ことも強調した。
「制作過程の重要な部分」が見逃された背景として委員会は、制作者側が、「『祭り企画』が定着していく過程で、(出演者の)ガチンコの姿にフォーカスし過ぎる余り、ガチンコの“舞台”そのものへの関心をほとんど失っていったのではないかとの印象を受けた」と指摘した。
また、「ナレーションとスーパーで出演者がもともとある祭りに参加しているように視聴者を誘導した点で、多くの視聴者が番組に求める約束に反したものだったと言われても仕方がない」という点も指摘した。
■2つの「祭り」と、これまでの経緯
「祭り企画」は番組の人気コーナーで、芸人の宮川大輔さんらが世界の特徴ある祭りに参加し、奮闘する姿を伝えるものだ。
この企画についてのやらせ疑惑は、週刊文春の報道で浮上した。
文春は、2018年11月8日発売号で、2018年5月に放送された「ラオス・橋祭り」が「でっち上げ」だと報じた。番組は障害物を避けながら自転車で橋をわたる祭りの様子を、「年に一度の祭りとあって、町中の人が集まってきた」とナレーションをつけて放送していた。
この文春の報道に対して日本テレビは、「(企画は)現地からの提案を受けて成立したもので、番組サイドで企画したり、セットなどを設置した事実はなく、また、番組から参加者に賞金を渡した事実もございません」とコメントした。
しかし、文春が翌週の11月15日発売号で、2017年2月放送のカリフラワーの収穫の速さを競う「タイ・カリフラワー祭り」も「でっち上げ」だったと指摘すると、日本テレビはこうコメントを出し、祭り企画の当面休止を発表した。
「番組の意向でコーディネート会社が主催者に提案したり実質的な主催者となったりして、イベントとして開催したケースがありました。中には場所や時期を変更して開催したものもありました」
放送倫理検証委員会は、2019年1月に審議入りを決めた。
■その他の祭り企画も検証
委員会の意見書によると、日本テレビはそのほかの109の祭り企画について自主的に調査し、委員会に報告したという。
報告によると、初めて開催した催しを「年に一度」とナレーションをつけたものが3件あったという。
いずれもタイを舞台にした企画で、文春が報じた2つの「祭り企画」と同じコーディネーターが関わっていた。
■バラエティー制作者へのメッセージ
会見の中で、委員会の升味佐江子委員長代行が、バラエティー制作者たちにこうメッセージを送る場面があった。
「バラエティーの可能性は、今の世の中、ますます大きなものがあるのではないか。バラエティーという形式を使うことによって、権威とか無意味な制約とかそういうものを笑い飛ばしたり、差別や偏見のばかばかしさを指摘できたりという一つの大きな可能性のあるジャンルだと思いますので、是非ともバラエティーの制作者の方々には、そういう挑戦(をして欲しい)」
そしてこう続けた。
「イッテQ!も、実際に聞き取りに行った委員の方々は口を揃えて現場の熱気のようなものを語っていました。そういう熱気を大切にしながら、もうちょっとバラエティーを綿密に計算した形で新しい面白さを貪欲に追求して欲しいというのが、委員会の希望でございます」
■日本テレビ「真摯に受け止める」
日本テレビは7月5日、ハフポストの取材に対し、「本日のBPOの意見を真摯に受け止め、今後の番組制作にいかしてまいります」とコメントした。