イスラエル、人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のビザを拒否

「パレスチナのプロパガンダに政治的に関与している」
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SYDNEY, AUSTRALIA - FEBRUARY 22: Israel Prime Minister Benjamin Netanyahu speaks at a luncheon at Sydney International Convention Centre on February 22, 2017 in Sydney, Australia. Netanyahu's visit to Australia will be the first by an Israeli Prime Minister, and will include meetings with Prime Minister Malcolm Turnbull, the Opposition Leader, Bill Shorten, and the NSW Premier Gladys Berejiklian. (Photo by Mark Metcalfe/Getty Images)
Mark Metcalfe via Getty Images

イスラエル内務省は、国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」(HRW)イスラエル・パレスチナ支部代表への就労許可証(ビザ)発給を拒否し、「パレスチナのプロパガンダに政治的に関与している」と非難した。

創立39年で、1997年に地雷禁止国際キャンペーンの主要メンバーとしてノーベル平和賞を受賞したヒューマン・ライツ・ウォッチは、イスラエル・パレスチナ支部の新代表オマル・シャキル氏が2016年10月から任務につけるよう、同年7月にイスラエル政府にビザの発行を申請した。承認手続きは60日で終わるはずだったが、イスラエル政府からの返答は2017年2月20日まで得られなかった。

シャキル氏はイスラエル内務省から「ヒューマン・ライツ・ウォッチは真の人権擁護団体ではない、という見解に基づいてビザ発行を拒否するとの通達を受けた」と述べた。シャキル代表はカリフォルニア生まれのイラク系アメリカ人で、 ジョージタウン大学で修士号、スタンフォード大学で法律学学士号を取得している。

イスラエル内務省は同国外務省の助言を引用し、ヒューマン・ライツ・ウォッチの申請を拒否する決定について説明した。内務省の通達文書には 「外務省より、当該団体は以前から『人権』という偽りの看板を掲げ、パレスチナのプロパガンダを支持する政治活動と密接に結びついた公的活動や報告を行っており、よって申請取り下げが望ましい、との助言を受けた」と記載されている。

ハフィントンポストUS版はイスラエル政府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

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2017年2月17日、ヨルダン川西岸地区ラマラ近郊の村、ビリン。イスラエルの防壁に登り抗議するパレスチナ人。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまで30年間にわたりイスラエルで活動を行ってきた」と、シャキル氏は語った。「前任のイスラエル・パレスチナ支部代表はイスラエル国籍を有していたためビザを得る必要はなかった。しかし、それ以前に同地域を担当した代表たちにはビザが必要で、イスラエル政府は申請に応じていた」と、シャキル氏は反論した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは公式サイトのイスラエル/パレスチナのページに、イスラエル政府は「パレスチナ人の人権に苛酷で差別的な制限をしている」と指摘し、占領下にあるヨルダン川西岸地区に「非合法の入植地」を建設していると非難している。一方でヒューマン・ライツ・ウォッチはパレスチナも批判している。ガザ地区での拷問に反対する学生や活動家、イスラム原理主義組織ハマスの治安部隊を拘束したとして、パレスチナ自治政府を非難している。

「今回の決定、そして捏造された根拠、イスラエルの根本的な民主主義的価値観に懸念を抱かざるを得ない」と、 ヒューマン・ライツ・ウォッチのプログラム局長代理イアン・レヴィンは声明で述べた。「嘆かわしいことだが、イスラエル政府は自らの行いに対する正当な批判と、敵対的な政治プロパガンダとの違いを区別できない、あるいはしたくないようだ」。

イスラエルは2016年7月、外国の政府や団体から多くの支援を受けているNGOは情報発信する際に外国から支援を受けた活動であることを明示しなければならない「NGO透明化法案」を成立させた。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この法律により、海外から資金を得てパレスチナ人グループを支援するNGOに対する締めつけが強くなった一方で、ユダヤ人の入植地拡大を支援するNGOは法律の対象外とされていると指摘した。

アメリカ国務省は23日、ヒューマン・ライツ・ウォッチを支持する声明を発表した。23日、国務省のマーク・トナー報道官代理は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対するイスラエルの見解には全く同意できない、とコメントした。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチは信頼に足る人権擁護団体だ。この団体の主張や調査結果のすべてに同意するわけではないが、真摯な活動に鑑み、 我々はヒューマン・ライツ・ウォッチの活動の重要性を認め、支持する」と、トナー報道官代理は述べた。「ヒューマン・ライツ・ウォッチによる報告は、我々アメリカ政府が年間人権状況報告書をはじめとする諸報告を作成する際の参考資料ともなっている」

非営利組織ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ヨーロッパ安全保障協力会議(CSCE)で、人権保障条項を盛り込んだ1975年のヘルシンキ宣言の遵守状況を監視することを目的とし、1978年に創設された。同団体は現在約90カ国で活動し、各国の人権状況を報告している。1997年には、ヒューマン・ライツ・ウォッチが他団体と共同で設立した組織「 地雷禁止国際キャンペーン」が、ノーベル平和賞を受賞した。

イスラエルは、エジプト、スーダン、アラブ首長国連邦、ウズベキスタン、ベネズエラ、キューバ、北朝鮮とともに、人権状況を監視するヒューマン・ライツ・ウォッチの参入を拒否している国のリストに名を連ねることになる。

ハフィントンポストUS版より翻訳・加筆しました。

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