イスラム教スンニ派の過激派組織「イスラム国」が、中東のイラクやシリアで急速に勢力を拡大している。シリアでは8月、湯川遥菜さん(42)がイスラム国に拘束されたとみられる事件も発生。現代イスラム研究センター理事長の宮田律氏は「日本も決して無関係ではない」と説明する。
時事ドットコムは、イスラム国について次の通り説明している。
2003年のイラク戦争後、イラクで凶悪な無差別攻撃を繰り返してきた国際テロ組織アルカイダ系組織の流れをくみ、04年にイラク旅行中の香田証生さんを殺害した「イラクの聖戦アルカイダ組織」出身者らで構成される。
かつては「イラク・イスラム国」を名乗ったが、11年以降、シリア内戦に介入して「イラク・シリアのイスラム国」に改名。今年6月にイラク第2の都市モスルを制圧後、イスラム国家の樹立を宣言して、名称を「イスラム国」とした。(時事)
(時事ドットコム「イスラム国」より 2014/08/18 01:32)
イスラム国が短期間で広範な地域を支配下に入れた背景には、シーア派のマリキ前首相の政権に対するスンニ派住民の強い不満があった。フセイン政権崩壊後、シーア派主導で国家再建が進められ、スンニ派は蚊帳の外に置かれていた。
2014年2月にイスラム国は、シリアからの撤退命令を拒絶したとしてアルカイダから関係を断絶された。シリア東部を制圧した後、同年6月、イラク西部や北部へ一気に侵攻した。戦わずに逃亡したイラク軍の武器を奪い、制圧地域を拡大。8月に入って、クルド人自治区の主要都市アルビルに迫り、アメリカ軍の空爆を受けている。
■インターネット駆使、欧米の若者らも戦闘員として勧誘
6月にイスラム国の樹立を宣言したのが、「第2のビンラディン」とも称される最高指導者アブ・バクル・バグダディ容疑者。イスラム国は、シリア北部のアレッポからイラク中部のディヤラまでを領土とし、シャリア(イスラム法)に基づく、スンニ派のカリフ(預言者ムハンマドの後継者)制イスラム国家とうたっている。
バグダディ容疑者は新しいカリフを自称し、世界中のスンニ派イスラム教徒に忠誠を求めている。しかし、国際社会は独立国家として認めず、近隣イスラム諸国も地域の安全を揺るがす脅威と危険視。また欧米諸国も危機感を募らせている。
イスラム国は、インターネットを駆使してアラブ諸国や欧米の若者らを戦闘員として勧誘している。アメリカのホワイトハウスは27日、イスラム国に戦闘員として加わるため、約50の国から数千人がシリアに渡ったとみていることを明らかにした。
イラク北部アルビル郊外で、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」を狙った米軍の空爆により立ち上る煙。=2014年08月08日撮影
■「日本政府は従来通り人道支援の分野での貢献を」
ハフィントンポスト日本版は、イスラム国について現代イスラム研究センター理事長の宮田律氏に聞いた。
Q イスラム国が今後、日本に与える影響は何かありますか。
A 「イスラム国」の台頭は日本とは無関係ではない。イスラム国によってイラクの南部油田地帯が攻撃を受けたり、あるいは支配されたりしたらガソリン価格は1リットル250円にも上ると見られている。そうなれば株価が下落して日本経済に深刻な影響を与える。
Q 湯川遥菜さんが拉致されたとされています。日本はどう対処したらいいでしょうか。
A 日本人の拉致については、イスラム国に影響力があるサウジアラビアやクウェートなど湾岸アラブ諸国を介して行うしかないだろう。アラブの商人のように、「イスラム国」は高く吹っ掛けてくるかもしれないが、粘り強い交渉が必要だ。
Q 日本は中東でどんな支援をしたらいいですか。
A イスラエルのガザ攻撃は、「イスラム国」のような過激な集団の主張や活動に追い風を与えることだろう。日本政府に求められているのは、これまで継続してきたガザなどパレスチナに対する教育や医療などの人道支援の分野での貢献だ。イスラエルとの兵器の共同開発は日本のイメージを損ない、日本人の安全にも負の影響を及ぼす可能性がある。
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