ダーイシュ(イスラム国)で暮らす女性は16歳くらいで結婚し、「ずっと家の中で」恐怖も危険とも無縁な生活を送ることができる――女性を勧誘するためにダーイシュが新しく発行した文書はこう説明する。
アラビア語で詳細に書かれたこの文書は、サウジアラビアやペルシア湾岸諸国の女性をターゲットにしていると見られている。ダーイシュの法では女性は9歳で結婚でき、結婚後は人目につかないところに隠れて生活しなければならないと書かれている。この文書を作成したのはダーイシュ女性の取り締まりを担当している「アル・カンサー」部隊だという。
これまでに、ダーイシュには50人のイギリス人女性が加わったとされていて、そのうちの何人かは、Twitterなどのソーシャルメディアで活動している。
シリア北東にある街ラッカで、パンの入った袋を運ぶ女性。
この文書は、シンクタンク「キューリアム財団」によって英訳されている。それによると、ダーイシュの女性は7歳から結婚するまでの間教育を受けることができ、10代始めか半ばに結婚する。そして女性の役割や立場についてはこう説明している。
「女性の偉大な役割・存在目的は『母親になる』という神から授かった義務を果たすことだ。女性はつねにベールで隠され、そしてそのベールのうしろから社会を支えることが望ましい」
「しかし、我々は決して、女性が無学で遅れていて、無知でいるようにと言っているわけではなく、女性が家を出て外で働くことと、学問すること区別されるべきだ考えている。我々は女性も学ぶべきだと考えている」
一方、美容院やファッションのための店は、悪魔が女性を誘惑的に見えるようにするために作ったもので、「こういった店は多額の金を使って、神の創造物に手を加えるよう女性をそそのかし、鼻や耳、あご、爪を手術によって変えるよう求める。そうした店の『女性の本物のファッション』とは、何かをぶらさげた耳や、まだらに剃った髪など、見る者にとって心地よくないものだ」
文書はさらに欧米の女性解放は失敗だと主張し、「体の『突起物』以外は男性と平等であるという思想から、女性が得られるものは何もない」と述べている。
また文書のかなりの部分を使ってダーイシュでの「のどかな」暮らしを描き出している。そこでシリアの都市ラッカは、将来の移住者たちの「安息地」と呼ばれ、「家族が平和に暮らし、飢えや寒風、霜に悩まされることのない場所」だという。
一方でダーイシュは、はりつけや斬首の刑を執行したり、同性愛者をビルから突き落として殺害したり、ヤジディ教徒の女性や子どもを奴隷にしたりしているが、そういった残虐な処刑については文書は触れていない。
この文書を翻訳した「キューリアム財団」のアナリスト、チャーリー・ウィンター氏は「女性のジハーディストたちは、ダーイシュの最高指導者であるアブ・バクル・アル・バグダディ容疑者を『カリフ』と呼ぶことを含め、ダーイシュが支持するあらゆることを受け入れている。この文書はそうした女性たちの心理を探る、直接的な手がかりになるだろう」と述べている。
この文書は1月23日に公開されたが、現在のところ、英語版はないようだ。「この文書にはダーイシュが支配する地域での女性の役割が詳しく書かれており、貴重な情報源だ。これまでダーイシュの女性の役割についての情報は、英語を話す女性のジハーディストたちのソーシャルメディアのメッセージから得ていたが、そういった女性ジハーディストたちは新しい人を勧誘するために自分たちの役割を大げさに書くことが多い」とウィンター氏は言う。
「この文書では、女性は主婦であり母であると明言されている。欧米人女性のリクルーターたちは、若い女性をダーイシュに勧誘する時に、冒険や興奮といったテーマをよく使うが、それらは男性のためのものだ」とウィンター氏は指摘している。
この記事はハフポストUK版に掲載されたものを翻訳しました。
[日本語版:梅田智世/ガリレオ]
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