イスラム国(IS、旧称ISIS)の過激派は、「異教徒(不信心者)」に対する武器として、ペスト菌を使う計画を検討している模様だ。
「フォーリン・ポリシー(Foreign Policy)」誌は8月28日付けで、IS戦闘員が所有していたと見られるノートパソコンについて報じた「記事」を掲載した。
同記事によれば、このノートパソコンは、ムハンメド・S・アブ・アリという名のチュニジア人の持ち物であり、2014年1月、シリアの穏健派反政府勢力によるIS拠点への襲撃で発見され、持ち帰られたものだ。
2人のジャーナリスト、ハラルド・ドーンボス氏とジェナン・ムーサ氏は、このノートパソコンのクラッキングに成功。ハードディスク上で146GBもの容量を占めていた、3万5000の隠しファイルを発見した。
2人のジャーナリストたちは、持ち主である「ムハンメド・S・アブ・アリ」が、チュニジアの大学で化学と物理学を専攻し、細菌兵器を作る方法を学ぼうとしていたらしいことも明らかにした。この人物の現在の所在は不明だ。
隠しファイルの中には、ISが大量殺戮兵器について調査していた形跡を示す文書があったという。そのうち、化学兵器に関する調査には、ペスト菌を兵器化する方法についての説明が含まれていた。
この文書では、「ウィルスを仕込んだ小型のグレネード弾を使用して、地下鉄やサッカー競技場、娯楽施設等の閉じられた場所に投げ込む」、それが空調機の付近であれば最も効果的である、と解説している。
ノートパソコンにあった19ページにわたる詳細な文書には、「細菌兵器の利点は、多大な人的被害を与えうるにもかかわらず、高額の費用を要しないことにある」と述べられているという。
ペストは、かつては黒死病とも呼ばれた死亡率の高い伝染病であり、14世紀ヨーロッパの大流行では約3000万人の死者を出した。
ヨーロッパでは、ペストの流行は、1664年から1666年にかけてイギリスで7万人が死亡した「The Great Plague(大疫病)」を最後に、19世紀までにほとんど根絶された。しかし、中国とインドでは19世紀に1200万人が死んだとされる。現在はワクチンと抗生物質があり、適切な治療がなされれば死亡率は20%未満とされる。
アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、14世紀頃から、各国の軍が様々な形でペストを利用してきた歴史があり、テロリストがこれを用いる可能性についても警戒すべきと強調している。
ISが何らかの細菌兵器を入手したという確実な証拠は、いまのところ得られていない。だが、2014年7月にイラクの旧化学兵器貯蔵庫をISが占拠したため、その種の兵器がISの手に渡ることへの不安は高まっている。
もっとも、この問題について報じたニュースサイト「Vice News」によると、「細菌兵器を開発して使用するのは、実際には途方もなくむずかしい」というのが専門家の一致した意見だという。
なお、フォーリン・ポリシー誌の記事によると、ノートパソコンからは、大量殺戮兵器の使用に関する26ページの「ファトワー」(その権利があると認められたイスラム法学者が、個別事例に対する見解を示すために発行する勧告)も見つかった。「イスラム教徒が、他の方法では異教徒(不信心者)との戦いに勝てない場合には、大量殺戮兵器の使用も許される」との記述があったとしている。
同記事によると、ノートパソコンにはそのほかに、「オサマ・ビン・ラディンのビデオ映像、爆弾の製造方法のマニュアル、車の盗み方の解説書、イスラム戦士が集まる場所から移動する際に、逮捕されないようするための変装の仕方についてのレッスン」等も含まれていたという。
[Charlotte Meredith(English)日本語版:水書健司、合原弘子/ガリレオ]
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