アサド政権の市民虐殺、ISには好都合 なぜ飛行禁止区域が必要なのか

アメリカが主導する過激化組織IS(イスラム国)に対する空爆は、うまくいっていない。1年前に空爆を開始した時には、私も含めた多くのシリア人が、シリアの恐怖を終わらせる第一歩になるだろうと思っていた。
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A Syrian youth runs past blood stains and debris following air strikes by government forces on the rebel-held town of Douma on August 20, 2015. Human Rights Watch urged the United Nations to impose an arms embargo on the Syrian government after air strikes on the Eastern Ghouta region town near the capital Damascus killed more than 100 people. AFP PHOTO / SAMEER AL-DOUMY (Photo credit should read SAMEER AL-DOUMY/AFP/Getty Images)
SAMEER AL-DOUMY via Getty Images

アメリカが主導する過激化組織IS(イスラム国)に対する空爆は、うまくいっていない。1年前に空爆を開始した時には、私も含めた多くのシリア人が、シリアの恐怖を終わらせる第一歩になるだろうと思っていた。ISを根絶すると考えていた。シリアの大統領、バッシャール・アサドの残虐行為に終わりをもたらしてくれるだろうと思っていた。しかし今も、ISは、シリアのいたるところで新しい拠点を勝ち取り続けている。アサド政権の部隊が市民を虐殺している間にだ。アメリカと同盟国がすぐにでも軌道修正をしないと、大きな犠牲を伴う命懸けの本格的な軍事介入でしか、ISを壊滅できないというリスクが出てくる。

アメリカ主導の連合国は、ISだけに対する戦略に固執し過ぎている。アサドの市民への残虐さは、ISにとっては、市民に対する兵士採用の道具として使われる。アサド政権以外の選択肢、またはアサド政権からの身を守る手段だと考える人もいるからだ。

■ISよりもアサド政権の方が多くの市民を殺害

世界がISに注目している中、アサド政権の方がもっと多くの市民を殺害しているのが現実だ。シリアのバイオレーション資料センターによると、シリア市民を殺害している主なものは、アサド政権のヘリコプターから落とされる樽爆弾、塩素ガスだ。この政権は、引き続きこれらの兵器の使用を強化しており、最近では、ドゥーマーの市場への残虐な爆撃により100人を超える市民が殺害された。

アサド政権の樽爆弾から市民を守ることを連合国が拒否したことで、この粗末な兵器の導入以後、1万2,000人を超える死者を出す結果となった。アサドは樽爆弾使用の強化にますます自信をつけているのだが、その犯罪の重大さに彼が直面することがないからだ。シリア人には正義も説明責任も見えない。25万人を超える死者が出て、国の半分が取って変わられているこの危機の中で、新たなこの残虐な状態に、シリア人は地上にいながら飛行禁止区域設定を嘆願しているのだ。

普通のシリア人で、自分の国に外国の介入を望んでいるものはいない。しかし、シリアの危機は尋常ではないのだ。シリア危機は、もはやシリア国内の問題ではなく、国際問題なのだ。シリア難民はシリア国境の外に逃れており、ISの脅威は世界の脅威なのだ。

■飛行禁止区域はシリア危機に効果的

シリアの飛行禁止区域は、シリア人だけでなく、ヨーロッパやアメリカ、中東広域、その他の地域の人々に直面する問題の核心となっている。それは毎週、数えきれないシリア市民が殺害されているのを止められる。人道的支援が安全にもっと頻繁に送られるようなスペースを作ることで、苦しみを軽減するのに役立つ。飛行禁止区域は、難民の大量流出に歯止めをかけるだろう。

飛行禁止区域は、欧米諸国がシリア人を守る気があると見せつけることによって、ISの兵士採用の中心部に打撃を与えるだろう。樽爆弾の使用を効果的に止めさせ、その結果、アサド軍の計画を変更させることになる。アサドは、ロシアを含めた国際社会に対し、政治的な移行に関する真の交渉をせざるを得なくなる。飛行禁止区域により、これら全てがもたらされる。ほんの少しの飛行禁止区域設定という脅しだけでも、シリア危機を政治的解決の方向に向かわせるのに十分なのだ。

■人道的な危機は全世界の問題

空からではなく海からの飛行禁止区域の実施によって、シリア政権の防空手段に対して先制攻撃をかける必要はなくなる。この海を拠点とした選択肢があるにも関わらず、国際社会の中には、飛行禁止区域の利益を認めるのをまだ戸惑っている国もある。介入が広がるという危険な先行きを心配しているのだ。ひとたび飛行禁止区域が発表されてしまえば、シリアの問題が国際社会の問題になってしまうことを不安に思っている。しかし、国際社会はもうシリアに関わっている。国際社会の航空機はシリア領空を飛んでいる。人道的な危機は全ての人々の問題なのだ。

現在の努力はうまくいっていない。なぜなら、主な殺害が何なのか、この危機の主な主導者は誰なのか、そしてアサドのシリア市民に対する攻撃を取り上げようとしないからだ。もしアメリカ主導の連合国がISに固執したアプローチを続け、この問題の核心を無視し続けるなら、流血は長引いてISはさらに力をつけるだろう。

もしこの危機がこのまま許されれば、アメリカとヨーロッパはISとISに影響された攻撃に、なすすべがないままでいるだろう。だからこそ、欧米諸国は、本格的軍事介入という危険な先行きにすでに足を踏み入れているのだ。飛行禁止区域は、欧米諸国の人もシリア人も誰も見たくない悲惨な結果を回避するための、最初の一歩なのだ。

この記事はハフポストUS版に掲載されたものを翻訳しました。

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