少子化は30年も前から指摘されていたにもかかわらず、抜本的な対策を怠ってきたことが事態を招いた原因です。
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石破茂
Bloomberg via Getty Images

 石破 茂 です。

 27日の衆議院本会議で入国管理法の改正案が衆議院を通過、参議院に送付されました。「移民政策」や「単純労働」の定義など、最後まで議論は噛み合わず、やや残念な思いが致しましたが、参議院では衆議院で指摘された幾多の問題点についてさらに掘り下げた議論を行い、国民の理解を深めていく必要があります。

 外国人労働者を受け入れざるを得ないのは、生産年齢人口が急激に減少し、介護や建設現場などで決定的な人手不足が生じているという差し迫った事情によるものですが、少子化は既に30年も前から指摘されていたことであるにもかかわらず、その抜本的な対策を怠ってきたことが今日このような事態を招いた最大の原因です。

 今からたった20年後の2040年には人口が2000万人近くも減少し、相前後して高齢者の数がピークに達することが予想されており、これを見据えた中での外国人労働者の受け入れでなくては、単なる緊急避難的対応にしかすぎません。このような国家ビジョンが総理から提示されることを期待し、参議院における発言を注視しています。

 受け入れる外国人材に対して、日本語や日本の文化伝統、社会の決まりなどについて教えるのは日本政府の責任において行うべきものでしょう。生産年齢人口の減少はこれから多くの国において起こることであり、外国人材の奪い合いとなる事態も容易に想像されます。それを見据え、「外国人から選ばれる体制」の構築が急務です。

 「単なる労働者不足への対応であり、国の形を変えるような移民政策とは全く異なる」と言うのであれば、国の形を維持するための少子化対策を国家の最重要課題として確立しなくてはなりません。少子化対策予算の対GDP比がフランスやスウェーデンの3分の1の1・3%ではどうにもなりません。今から少子化対策に取り組み、その成果があがるのは早くても20年後であり、それまで人口は急激に減少し続けるのです。繋ぎとしての今回の法案との理解とともに、受け入れる外国人に対して、日本人と遜色ない待遇を提供することも、国家としての責任であると思っております。

 海上自衛隊のいずも型ヘリコプター搭載型護衛艦の固定翼機搭載型への改修が今後の防衛力の整備と関連して話題となっています。どの国に対するどのような抑止力を企図するものか、運用構想はどのようなものになるのか、常時一隻稼動させるためには最低3隻が必要と言われる中、何隻保有するのか、水上艦における固定翼機の運用技術には極めて高度なものが要求されるが、どのように錬成するのか、この艦自体は単なるプラットフォームで脆弱なため、これを護るための潜水艦、イージス対空護衛艦(DDG)、対潜護衛艦(DD)、直衛戦闘機はどれほど必要なのか、それでなくても現在決定的に不足している水上艦艇乗組員をどのように確保するのか等々、導入に向けては国民・納税者に理解・支持される濃密な議論が必要です。国民の代表である国会議員が兵器や運用について知識がなければ、文民統制が機能するはずはありません。

 当選同期であった園田博之議員の逝去に伴って衆議院本会議場の議席が変更になり、扇形に配置されている12列の最後列に移動となりました。

 議席は基本的に当選回数順の年齢順となっており、昭和61年の初当選時、最年少の私には最前列の一番端の議席が割り当てられ、遥か後方の最後列に座っておられる錚々たる顔ぶれを見ながらあそこまで行くのに何年かかるのか、そもそもそこまで行けるのか、などと思ったものでした。あれから32年余、感慨複雑なものがあります。

 週末土日は茨城県議選の応援演説に県内数カ所を回る予定です。

 皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。

(2018年11月30日「石破茂ブログ」より転載)