国連の独立調査委員会は6月16日、過激派組織IS(イスラム国)がクルド系少数派のヤジディ教徒約40万人を組織的に拘束し、大量虐殺(ジェノサイド)や女性の性奴隷化を進めていると発表した。ロイターなどが報じた。
調査委員会はヤジディ教徒の生存者から聞き取りを行って40ページの報告書にまとめた。2014年8月以来、ISの戦闘員がシリアとイラクでヤジディ教徒を包囲し、集団虐殺やレイプを繰り返している実態が明らかになった。イギリスに拠点を置くNGO・シリア人権監視団(SOHR)の報告では、ヤジディ教徒の女性約300人を戦利品として誘拐し、シリアへ移送。うち27人については、一人あたり1000ドル(約10万円)で売られ、イスラム教へ改宗させられたうえに結婚を強いられたという。
17歳のヤジディ教徒の少女はイタリアの「ラ・レプッブリカ」紙に、「自分と一緒に40人の女性が捕らえられ、中には12歳の少女もいた」と述べた。そして、彼女たちを虐待している戦士たちについて、「小さな子どもがいる女性を見逃すことすらしない、人間らしい心の欠けた人たち」だと語っている。
2015年6月には、紛争下の性暴力担当のザイナブ・バングーラ国連事務総長特別代表がヤジディ教徒が性奴隷になっている実態を明らかにした。ヤジディ教徒の女性たちは、狭くて苦しい劣悪な環境に押し込められ、戦闘員から虐待を受け、値段をつけられた挙句に売り払われた。あるケースでは、15歳の少女が50代のIS幹部に売り渡され、自殺したいという懇願する少女をあざけってレイプしたという。バングーラ特別代表は、IS戦闘員の奴隷市場では、時には10代の少女たちが、わずか「タバコ1箱」ほどの値段で売られることもあると述べている。
また、2015年11月には、イラク北部シンジャル郊外で、ヤジディ教徒の女性と見られる80人の遺体が発見された。白骨化し、長い髪や女性用の衣服もが見つかった。いずれも40〜80歳ぐらいの女性とみられる。ISは若い女性を奴隷とする一方、中年や高齢の女性を殺したとみられる。
「ヤジディ教徒の虐殺は進行中だ」と、報告書で述べられている。
BBCによると、ISの戦闘員は「最もおぞましい残虐行為」を用いてヤジディ教徒を虐殺し、奴隷にした。現在、少なくとも3200人のヤジディ教徒が拘束されているという。
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