ロウハニ次期イラン大統領、3日に就任 イスラエルの占領政策を批判

3日に就任するイランのロウハニ次期大統領は2日、イスラエルについて「イスラム教徒にとっての古傷だ」と述べ、同国の長年にわたるパレスチナ占領政策を批判した。AFP通信が伝えた。AFPはこれより先、ロウハニ師が「古傷の洗浄が必要だ」と発言したと報じていたが、「その部分は国営メディアの引用ミスだった」とし、撤回した。

3日に就任するイランのロウハニ次期大統領は2日、イスラエルについて「イスラム教徒にとっての古傷だ」と述べ、同国の長年にわたるパレスチナ占領政策を批判した。AFP通信が伝えた。AFPはこれより先、ロウハニ師が「古傷の洗浄が必要だ」と発言したと報じていたが、「その部分は国営メディアの引用ミスだった」とし、撤回した。時事通信が伝えた。

ロウハニ次期大統領は1948年、テヘラン東方のセムナーン州生まれ。イスラム教シーア派の聖地コムで教育を受けた聖職者。保守穏健派の重鎮、アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ師(78)の側近。改革派モハマンド・ハタミ大統領(69)の下で2003~05年、核交渉責任者である最高安全保障委員会事務局長を務めた。

6月14日に行われたイラン大統領選挙では、保守強硬派が有力とされた事前の予想を覆し、ロウハニ師が予想外の地滑り的勝利を収め、決選投票を待たずに当選を決めた。穏健派として外国との関係改善と、より自由な社会の実現を公約に掲げ、圧倒的な支持を集めたことが要因とされる。選挙戦終盤にラフサンジャニ元大統領やハタミ前大統領ら穏健保守・改革派の重鎮の支持を取り付けたことで、優勢とみられていたガリバフ氏やジャリリ氏ら最高指導者ハメネイ師に近い強硬保守派候補を猛追。都市部の浮動票取り込みにも成功したとみられる

産経新聞によると、3日に大統領に就任するイランのロウハニ最高安全保障委員会元事務局長は2日、イランと敵対関係にあるイスラエルについて、「何年にもわたりイスラム教徒の体に巣くう古傷で、取り除く必要がある」と述べた。

イスラエルのネタニヤフ首相はロウハニ師の「本性が考えていたより早く露見した」と指摘。大統領が代わっても「イスラエルを脅かすために核兵器を獲得するという(イランの)目標は変わらない」と批判した。

ただ、イラン学生通信はその後、ロウハニ師の発言内容を訂正。「パレスチナやエルサレムが(イスラエルの)占領下にあることは、イスラム世界の古傷である」と述べたと伝え、情報が錯綜している。

■アフマディネジャド大統領任期最後の演説「イスラエルは消え去るだろう」

イランでは、イスラム教の断食月ラマダンの最後の金曜日を「エルサレムの日」と定めており、パレスチナの占領を続けるイスラエルや、イスラエルを支援するアメリカを非難するデモが2日、各地で行われた。

このうち、首都テヘランの中心部には、イスラム体制に忠実な民兵組織バシジを中心に数万人が集まり、「イスラエルとアメリカに死を」と叫びながら町なかを行進した。

このあとの金曜礼拝では、この日が任期最後となるアフマディネジャド大統領が演説し、「欧米諸国は中東でさまざまな陰謀を画策してきたが、それが大きな嵐を呼び起こし、イスラエル自身が消え去ることになるだろう」と述べ、最後まで対決姿勢を示した。

イランは強硬保守派のアフマディネジャド大統領の2期8年で外交的な孤立を深めただけでなく、経済的にも極度に疲弊、内政では改革派の取り締まりが進み国民の分断が強まった

2005年の就任直後には、イスラエルに対して「地図上から消し去る」といった趣旨の発言をしたと取りざたされ、さらに第二次世界大戦中に起きたユダヤ人の大量虐殺ホロコーストをイスラエルによるねつ造だとした発言も国際社会の強い反発を呼んだ

また、ニューヨークの国連総会の演説では、同時多発テロはアメリカが中東地域を支配するためにたくらんだ自作自演の可能性があると述べ、欧米側の外交団が議場から一斉に退席して抗議の意思を示す場面も見られた。

ハメネイ師が任命した聖職者らで作る護憲評議会は、アフマディネジャド氏が公的立場を悪用し特定候補を支援した疑いがあるとみており、訴追を受ける可能性も浮上している

■ 用語

イラン大統領

1979年の革命後、イスラム共和国となったイランでは、司法、国防、外交などの最終決定権は大統領ではなく、イスラム教シーア派高位聖職者の最高指導者(現在はハメネイ師)が掌握する。最高指導者は司法府代表を任命し、軍の最高司令官を兼務する。18歳以上の国民の直接投票で選ばれる大統領は行政府の長で、副大統領や閣僚を任免し、予算などに責任を持つ。大統領の任期は4年で、連続3選は禁止されている。

(西日本新聞「WORD BOX イラン大統領」より)

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